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読む・考える・書く

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「寅さん在日説」への違和感

ふたたび「池田香代子ブログ」からの話題。*1

「国民的人気者」の寅さんが(映画では明かされていないが)実は在日だった、という話は、いい話、深い設定、といった文脈で語られることが多いように思う。しかし、私はこれには違和感を感じる。それは、ほかならぬ在日の辛淑玉さんが次のような指摘をしているからだ。

  • 男はつらいよ』の舞台である葛飾柴又には在日朝鮮人の集住地域があって、たくさんの在日が暮らしていた。また、寅さんの仕事である「テキ屋」というのは、多くの在日がしていた仕事だ。普通の会社に就職できなかった在日は、自分で商売を営むか、それだけの金もなければテキ屋のような不安定な仕事をしながら各地を転々としていた。寅さんの生き方は在日の生き方そのものだった。
  • 出ていた役者にも在日は多くいた。寅さんの恋の相手役のマドンナにも、何人も在日がいた。
  • にもかかわらず、寅さん映画では、その舞台にたくさんいたはずの在日がきれいに消去されている。長く続いた『男はつらいよ』シリーズで在日が出てきたのは、一度朝鮮人の子どもたちが映ったのと、最終作で、大震災後の神戸・長田の街でチマチョゴリを着た女の人たちがお祭りをするシーンがあるくらい。
  • 作り手にも描かれる側にも在日がたくさんいたはずの『男はつらいよ』から在日の存在が消されているのは、お正月に日本人が楽しく見る映画に朝鮮人が出てきたら興ざめだから。それは、興行する側も、山田洋次監督もわかっていたはずだ。

辛さんがあるとき語っていたように、もしあの最終作の最後のシーンで、寅さんが『アリラン』を歌いながら帰っていったなら、あの映画はそれまでとはまったく違う、国際的な広がりを持った輝く映画になっていただろう。

男はつらいよ』は、結局最後まで、「いい人はすべて日本人」の「国民的」映画でしかなかった。

*1:決して池田さんを批判しているわけではないのですが、なぜか読んでいて気になる話題が多いのです。