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山下俊一氏の主張はやっぱりおかしい

たかしさんの原発御用学者リストにも挙げられている山下俊一氏だが、週刊朝日4月22日号に、この人と鎌田實氏の対談が載っている。

私は放射線医療の専門家ではないので、低線量被曝の危険度に関する専門的な判断はできない。しかし、「被曝医療の第一人者」として紹介されている山下氏の言っていることは、医学的というよりそもそも論理的につじつまが合っていないように思えてならない。

たとえば、こんな会話がなされている。

 

鎌田 …低線量被ばくについては、意見がいろいろ分かれていて、まあその質問を先生には一回電話でしつこく聞きましたが、たとえば100ミリシーベルトの被ばくを受けると、0.5%ぐらいがんになる率が高くなるという研究論文も出てます。

 

山下 いま議論していることは、少ない量を1年間飲み続けたり、食べ続けたり、そこに住むと、自然界の数倍、あるいは10ミリシーベルトを超える。だからいまは障害は起こらないけれども、将来はわからないという表現をしているわけです。僕はそれにあえて「大丈夫だ」と言うわけですよ。理由は、1回、100ミリシーベルト浴びると、細胞に傷が100個できます。1ミリシーベルト受けると細胞の傷が1個できます。1個の傷は体はすぐ治します。100個の傷はときどきエラーが起こる。遺伝子は傷がついても治るんだということが大前提です。

 

鎌田 1ミリシーベルトと100ミリシーベルトでは、100ミリシーベルトはもしかしたら何か起きるかもしれないというのを、先生も認めていて、1ミリシーベルトだったら、先生はまず問題がないと思われるんですね。

 

遺伝子が傷ついて、それが修復される際にエラーが起こるかどうかというのは、確率的な問題だ。

100ミリシーベルトを1人が浴びて細胞に傷が100個できるのなら、1ミリシーベルトを100人が浴びても同じく100個の傷ができる。100個の傷で「ときどき」エラーが起こるというなら、100ミリシーベルトを浴びた人に「ときどき」エラーが起こるのと同様に、1ミリシーベルトを浴びた100人の誰かにも「ときどき」エラーが起こるはずだ。

だから、たとえ低線量の被曝でも、被曝した人の数が多ければそのうち何人かはガンなどの晩発性障害の被害を受けることになる。実際、10万人がそれぞれ1ミリシーベルト被曝すると放射線によるガン死(発ガンではないことに注意)が1人から37人の割合で発生すると推定されており、国際放射線防護委員会(ICRP)では10万人あたり5人という数字を採用している。(「よくわかる原子力低線量放射線による障害

それを「大丈夫」と言ってはばからないこの「被曝医療の第一人者」とは何者なのか。

そもそも、福島第一原発周辺地域での被曝量は1ミリシーベルトなどというレベルではないのだから、この対談のような議論はまったく意味がない。飯舘村役場での空間放射線積算量は事故からわずか1ヶ月あまりで既に6.4ミリシーベルトに達している。ここに2年もいれば山下氏ですら危険性を認めざるを得ない100ミリシーベルトを大きく超えるのだ。しかもこれは空間放射線による外部被曝だけの数字で、より危険な内部被曝分は含まれていない。

こんな人物が福島県のアドバイザーだとは、まったく開いた口がふさがらない。

 

【追記】2011.4.23

京都大学原子炉実験所の今中哲二助教らの調査(3月28日と29日にかけて飯舘村周辺において実施した放射線サーベイ活動の暫定報告)によって、飯舘村での空間放射線量は一部地域では2年どころか3ヶ月で積算100ミリシーベルト近くに達してしまうレベルだったことが判明した。

図5に基づくと、3月15 日の沈着から90 日間の積算被曝量は、曲田で95mSv、村役場で30mSvと予想される。この値は、あくまで牧草地などの土壌の上に常時滞在する場合であり、車中で2/3程度、木造でも家の中では1/2 程度、コンクリート製の建物中では1/10 に軽減されるものと考えられる。

なお、原子力安全員会の『原子力施設の防災対策について』に定める『屋内退避及び避難等に関する指標』においては、外部被曝による予測線量(放射性物質又は放射線の放出期間中、屋外に居続け、なんらの措置も講じなければ受ける線量)が10〜50mSv のときは『自宅等の屋内へ退避すること』、50mSv 以上のときは『コンクリート建屋の屋内に退避するか、又は避難すること』と提案されている。飯舘村放射能汚染状況が深刻なものであることは言をまたないものであることは確かである。

 

その飯舘村在住の「パンダP。」さんのツイートによると、山下氏は飯舘村現地で講演してこんなことを言っている。

@024442 パンダP。(4/2)

山下俊一長崎大大学院教授が飯舘村で「全く心配無い」と講演。食品経由の放射性I摂取のみ警戒すべきで、マスク不要、外遊びOK、セシウム摂取も全く問題なしと。でも乳幼児、妊婦の健康リスクは注視すべきと。言葉に自己矛盾ある。せめて『大人に限れば』と前置きするのが学者のモラルでは?

山下氏の一連の発言は、トンデモというより、もっと悪質な役割を担ったものと見るべきだろう。「パンダP。」さんの指摘は鋭い。

@024442 パンダP。(4/2)

昨夜NHKに出演した山下俊一長崎大大学院教授は『チェルノブイリでの教訓が活きようとしている』と飯舘村が自分の研究の実証の場であるかのような主張をした。厳格な健康管理下でのみ言える『多少の安全』を農業=土いじりの村で『全く心配ない』と断言するとは。村民はモルモットではない!

@024442 パンダP。(4/2)

飯舘村民は疲弊している。もう安心安全を主張する学者の偏った言葉にしか耳を傾けない村民が増えてきている。村民は弱い。その弱さにつけ込んで一方的に安心を押しうる国や県の誘導に心地よさを求めている。真実に依らない安心の代償は大きい。様々な公害訴訟の歴史が雄弁に物語っている。 #iaea