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オスプレイの危険性を簡単に整理

岩国市議会議員田村順玄氏による説明[1]が分かりやすかったのでメモ。

 MV-22オスプレイは、30年前からボーイング社が多額の研究費をつぎ込んで延々と開発をしてきた飛行機です。垂直に離陸することができるので滑走路がいりません。空中へ上がればプロペラを上部から前のほうへ傾けて、かなりのスピードで飛行できるのです。ヘリコプターでもあり輸送機でもある、便利な飛行機です。しかし、30年間に何度も墜落事故を起こして36人もの人が亡くなっていますので、「未亡人製造機」という異名をとっているのです。

 MV-22オスプレイは、沖縄に配備されているCH-46というヘリコプターが老朽化したために転換が進められているのです。航続距離も2倍ほどになり、いいことずくめのようですが、実際にはそうではありません。CH-46の重量は175トンですが、オスプレイは4715トンで非常に重いのです。両翼についたプロペラはCH-46に比べるとはるかに小さく、4715トンの重量を支えるにしては無理があるのです。

 ヘリコプターは図体の真上にローターがついていて、そこに重心があるので、簡単に言えば竹トンボと同じです。それを両翼の先のプロペラで飛ばそうとするので、重心が取りにくくたいへん不安定なので、よく墜落するのです。プロペラは直径11メートルくらいですが、機体の座高はそれよりも低いため、地上に着陸したときに回すと土を引っ掻いてしまうのです。正面を向けてプロペラを回せないので、地上を滑走するときには若干斜めに空に向かった形で飛びますが、揚力が小さいので重量のある荷物を載せられません。この飛行機が最も危険なのは、両脇にあるエンジン2つが同時に止まったときです。2004年、沖縄国際大学に米軍の大型輸送ヘリコプターCH-53Dが墜落しましたが、それは1キロくらい飛んでから大学の壁に当たって落ちたのです。1キロ飛ぶことができたのは、オートローテーションという装置によって、エンジンが止まってもプロペラが回転すれば風を受けて若干の揚力を保ったままゆっくり地上に落下させていくことができたからです。

 しかし、CH-46と比べても小さなプロペラしかないMV-22オスプレイは、オートローテーション機能で地上まで降りようと思っても、落ちるスピードのほうが速いのです。MV-22オスプレイが飛行機モードでグライダーの機能を使えば何とか地上に着陸することができるのですが、ヘリコプターの機能で空に向かって飛ぶ間にエンジンが止まった場合、すぐグライダーに切り替えようとしても12秒かかります。その間に、地上に墜落してしまうのです。

要するに、オスプレイはもともと構造的に無理があり、不安定だということ。

プロペラを大きくして余裕を持たせようとしても、飛行機モードにしたとき胴体とぶつかってしまうため大きくできない。

そもそもヘリコプターにはない翼がある上、モード変換を行うためのモーターや機構でさらに重量が重くなる。

 ボーイング社は、オスプレイの開発段階からオートローテーションは使えないことを明らかにしていました。しかし米軍は、それを認めながらも選定しました。この開発をやめてしまえば、軍需企業やその下請けの会社など、食いはぐれてしまう多数の人が出てしまうからです。族議員なども圧力をかけ、最終的に運用を容認したのです。

金をかけすぎてしまったからもう止められない。

なんだかどこかで聞いたような話だ。日本の核燃料サイクルもまったく同じ。

 (略)この飛行機の様々な機能はすべてコンピューターで制御されていますが、不具合の多くは、プロペラが前から上へと旋回方向を変えるときに起きています。モロッコの事故もフロリダの事故も、民間空港に不時着した事故も、コンピューターで機能を変換するときでした。1週間前の琉球新報には、「オスプレイが整備中に突然離陸し墜落して大破した」というトップ記事が出ていました。およそ700万ドルの損失です。アメリカでは、被害額200万ドル以上の大きな航空機事故は統計に入れるのですが、人を載せていなかったため、この事故は計数には入らなかったのです。フロリダで墜落したのはCV-22というオスプレイで空軍が所持していたものですが、これも海軍仕様の統計には入っていません。

小さなプロペラで重い機体を動かそうとするから無理が生じるし、モード変換途中の状態が不安定になるのはどうしようもない。こういう本質的な不安定性はコンピュータ制御で解決できるものではない。

 昨夜、沖縄の辺野古で3000日を越える座り込みを続けている安次富浩さんを招き、広島で学習会が開かれました。安次富さんたちは、オスブレイかそんなに安全というのなら「配備される12機のうち1機を総理の専用機にしたらいいじゃないか」「防衛省の中庭で離着陸をやってみなさい」と言っていました。

まったくそのとおりだ。

オスプレイが公園に着陸しようとして樹木をなぎ倒し、10人の負傷者を出したときの映像がYouTubeにあがっているが、こんなものを市街地の真ん中にある普天間に配備するなど狂気の沙汰だ。どうしても動かしたいならそれこそ首相官邸か防衛省で離着陸させればいいのだ。

[1] 田村順玄 『オスプレイ陸揚げ 岩国での闘い』 月刊マスコミ市民 2012年9月号

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