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繰り返される鳩山叩きの愚

 

関連記事:尖閣「棚上げ合意」は事実。日本政府はいい加減に詭弁を弄するのをやめよ。

 

野中広務官房長官に続いて、今度は鳩山由紀夫元首相が(またもや)激しいバッシングにさらされている。

騒ぎの発端は、鳩山氏が尖閣諸島の領有権問題について、中国側の主張に一定の理解を示す発言をしたことだ。

 

MSN産経ニュース(6/25):

 鳩山由紀夫元首相が香港のフェニックステレビの取材に対し、沖縄県尖閣諸島の領有権を主張する中国政府に理解を示す発言をしていたことが25日、分かった。尖閣をめぐる歴史的経緯に言及し、「中国側から『日本が盗んだ』と思われても仕方がない」と述べた。発言は同日午前、中国内外に向けて報道された。

 中国は日本の尖閣領有について、第2次大戦中のカイロ宣言にある「日本が盗み取った中国東北地方や台湾などの島しょを中国に返還する」との規定に違反すると主張している。これに鳩山氏は「カイロ宣言の中に尖閣が入るという解釈は中国から見れば十分に成り立つ話だ」と明言した。

時事通信(6/27)

 【北京時事】鳩山由紀夫元首相は27日、北京市内で開かれた清華大学主催のフォーラムに出席し、沖縄県尖閣諸島について「ポツダム宣言の中で日本が守ることを約束したカイロ宣言は『盗んだものは返さなければならない』としており、中国側が(返還すべき領土の中に尖閣諸島が)入ると考えるのも当然だ」と述べた。

 1943年のカイロ宣言は「満州、台湾、澎湖諸島のように日本が清国から窃取した一切の地域を中華民国に返還する」としており、中国はその中に尖閣諸島が含まれると主張。鳩山氏は「カイロ宣言の中には(返還されるべき領土として)台湾、澎湖諸島以外の島もあると中国側が考えるのは当然だ」と指摘。

 さらに「(日清戦争終了直後の1895年の)下関条約ができる3カ月ほど前に(尖閣諸島は)日本領として閣議決定した事実がある。中国側として中華民国に返せという中に当然入るのではないかという理解は成り立ち、それを否定するものではない」と語った。

 

鳩山氏が述べていることはまったく当たり前のことで、中国側から見たらそういう理解になるのは当然なのである。そもそも交渉事において、お互いの立場と主張を理解した上で議論をするのはイロハのイだろう。現に領土問題でもめているのに、「領土問題は存在しない」などと、主張とすら言えない空疎なタテマエを繰り返しているだけでは話にならないのだ。

せっかく日中交渉のきっかけ作りをしてくれている鳩山氏を叩くのがどれほど愚かなことかは、今年1月の鳩山訪中時のバッシングを題材に、藤原敏史氏が見事に喝破してくれている

 

集団的強迫観念の虚言癖状態になったマスコミが日本を滅ぼす

鳩山氏はあくまで元首相であり私人として訪中したわけで、個人の認識であれば尖閣諸島問題が領土問題であることを日中双方が認識するのが当然という、まあ政府の公式見解を離れれば誰でも分かっていることを表明すると、あろうことか日本の現職閣僚が「国賊」などと言い出した。

するとマスコミは、また揃って、金太郎飴状態で、鳩山叩きを始める。

鳩山氏が「前首相」という立場で中国側のメンツを立てると同時に、その見解はあくまで政権となんの関係もない私人であるから、日本政府は鳩山氏の発言には拘束されない、という立場の二重性を巧妙に利用して、硬直した日中関係打破のきっかけを作る大活躍をしていたのに、である。

だいたい、これこそ日本マスコミの集団的虚言癖状態の最たるものなのだが、2010年から昨年まで、尖閣諸島が日中間の問題になったのは、常に日本側が仕掛けた話に他ならないことが、国民にはまったく伝えられていない。

公式見解のタテマエはともかく、たとえば領土問題がないのならなぜ日本政府がこの無人島をわざわざ購入するのか、筋がまったく通らないではないか。中国でなくたって、日本以外は世界中の誰も納得できない話だ。

 

今回の鳩山発言を聞いて、菅義偉官房長官は「絶句した。開いた口がふさがらない」と言ったそうだが、鳩山氏の行動の意味も理解できないほど無能なら、政治家などとっとと辞めて、一生ぽかんと口でも開けていればいいのだ。

 

ちなみに、なぜ日本政府(というより日本社会全体)が尖閣問題で無駄に強硬な姿勢しか取れないのかについて、鳩山氏は次のように述べている。実に的確な分析である。

時事通信(7/3)

2日の中国中央テレビによると、鳩山由紀夫元首相は1日、同テレビの取材に応じ、日本政府が尖閣諸島の領有権などで強硬な姿勢を取るのは、社会が自信を失っていることを反映しているとの考えを示した。鳩山氏は「20年くらい経済がデフレで十分発達せず、国民が自信を喪失してきている。そういう時に強い言葉を言う政治家が好まれてしまっている」と述べた。