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バイデン発言が憲法「押し付け」の証拠になると思い込む残念な人たち

憲法


アメリカのバイデン副大統領は、8月15日に行ったヒラリー・クリントン候補への応援演説で、共和党トランプ候補を非難する一連の流れの中で「アメリカが日本の憲法を書いた」という趣旨の発言を行った[1]。

"Does he not realise we wrote the Japanese constitution so they could not own a nuclear weapon? Where was he in school?" Mr Biden asked. "Someone who lacks this judgement cannot be trusted."

直訳すると、こんな感じだろう。

「彼(トランプ)は、我々が日本の憲法を書き、(その結果)彼らは核兵器を持てないということを理解していないのか? 彼は学校で習わなかったのか? このように判断力に欠ける者(トランプ)は信用できない。」

この発言が報道されると、これで「押し付け憲法」説の証拠が出てきたと噴き上がる人たちがぞろぞろと湧いてきた。今年に入って、憲法9条戦争放棄)の発案者が幣原喜重郎であることを裏付ける史料の発見再評価が続いているのに対して、これで「反撃」できると思っているのだろう。

このバイデン発言は憲法「押し付け」説を強化する何らかの根拠になるものなのか? もちろん、なるわけがない。

バイデンは1942年生まれ。日本国憲法制定当時はまだ5歳の子どもであり、当然制定過程に関わってはいない。また、彼は憲法学者でも歴史学者でもなく、この分野についての専門知識など持ってはいない。

要するに、アメリカの副大統領といっても、この件に関してバイデンは一素人に過ぎない。そんな人物がたまたま発言しただけのことが、当事者による書簡や発言記録といった史料を否定する根拠になるなどと考えるのは、はっきり言ってどうかしている。

ちなみに、バイデンは「失言製造機」と揶揄される[2]ほど失言の多い政治家として知られている。恐らく彼は、少年時代に学校で習ったことを自己流に解釈してそのまま口に出してしまったのだろう。「アメリカがナチス・ドイツを倒してヨーロッパを解放した」とか、「原爆投下が戦争を早期に終わらせて多くの人命を救った」とかいうのと同じ、過度に単純化されたアメリカ中心主義史観の現れである。

[1] Joe Biden: Donald Trump can’t be trusted with America's nuclear codes, Independent
[2] 『ギャフ・マシン(失言製造機)のバイデン副大統領が急浮上 長男の死で潮目変わる ヒラリー氏の独走止められるか?』 産経新聞 2015.9.1

日本国憲法:誰が誰に「押し付けた」のか←【前記事】
【次記事】→憲法9条を生んだ幣原喜重郎の平和思想

 

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