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小林よしのり徹底批判(3)ガンディーには見抜かれていた

歴史認識

小林よしのりは、欧米帝国主義諸国によって奴隷状態に置かれ、白人支配者への抵抗など夢想もできなかったアジア諸民族に、日本軍がアジア人でも白人に勝てることを見せて希望を与えたと主張し、これを旧大日本帝国正当化の主要な論拠としている。そしてこのロジックを補強するために、当時のアジア諸民族の指導者たちは緒戦での日本の勝利を歓迎し、非常に「親日的」だったと述べている。[1]

日本が白人を追い散らした時

インドのガンジーも チャンドラ・ボース

インドネシアスカルノ

ビルマのアウン・サンも

みんな大喜びしたのだ

アジア人が白人と戦って勝てるのだと!

侵入してきた日本軍に対してスカルノやアウンサンがどのような対応をしたかは前回記事に書いたとおり。

インドに関して言えば、確かにチャンドラ・ボースは日本軍の快進撃を対英独立の好機ととらえ、インド国民軍を率いてインパール作戦に参加するほどだったが、ガンディーはそんなに甘くはなかった。(ちなみにチャンドラ・ボースは、日本の敗北が決定的になると、次はソ連に頼ろうとした。)

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小林は欄外コラムでこんなことを書いているが、この1942年4月の(全インド会議派委員会の)決議草案全文を、片山さんという翻訳家の方がサイト「ガンジーの言葉の窓」に掲載されている。

全インド会議派委員会決議草案
   (書かれたのは1942年4月24日以前、4月27日の委員会に提出された)

(略)

 当委員会は、日本政府と日本国民に対して保証したいと思いますが、インドは日本に対しても、他のどの国に対しても、敵意を持っていません。インドはあらゆる外国の支配から自由になることだけを望んでいます。しかし、自由を得る闘いにおいて、インドは世界が共感してくださることは歓迎しますが、外国の軍事的支援は必要としていません。インドは、非暴力の力で自由を勝ち取り、同様にしてその自由を保持します。ですから、当委員会は、日本がインドに対してどのような下心も抱かないことを希望します。しかし、もし日本がインドを攻撃し、英国がインドの主張にどんな反応も示さないならば、当委員会は、会議派の指南を求めるすべての人が、日本軍に対して完全な非暴力非協力を示して、どんな支援も提供しないことを期待します。攻撃された者が、攻撃してきた者に対して支援を提供する義務は全くありません。完全な非協力を貫くのが、彼らの義務となります。

 非暴力非協力の単純な原則を理解するのは、困難なことではありません。

 1.侵略者に膝を屈することもしませんし、彼らのどんな命令にも従いません。

 2.侵略者の歓心を買おうとしませんし、賄賂に心が動かされることもありません。しかし、侵略者に対してはどんな敵意も抱かず、その人の不幸を願うこともしません。

 3.侵略者が我々から土地を奪おうとするなら、我々は抵抗する過程で死なねばならないとしても、それを手放すことを拒否します。

 4.侵略者が病気に倒れたり、のどが渇いて死にそうになって、我々の助けを求めるのであれば、それを拒むことはしません。

 5.英軍と日本軍が戦闘状態にあるような場では、我々の非協力も実を結びませんし、無駄なことです。目下の所、我々の英国政府に対する非協力は、限定的なものになっています。日英が実際に戦闘状態にあるときに、英国に対して完全な非協力を貫くなら、インドをわざわざ日本の手中に差し出すも同然のことになってしまうでしょう。ですから、英軍の進路にどのような障害物も置かないことにします。日本に対する我々の非協力を示すには、まずこれ以外に方法はないでしょう。だからといって、我々は積極的に英国を支援するわけではありません。(略)

ガンディーは日本による「軍事的支援」を拒絶し、もし日本がインドに侵入しイギリスと戦うことになったら、完全な非暴力不服従の姿勢で侵略者に抵抗すると言っている。これをどう読めば「非常に親日的」と評価できるのだろうか。

また、ガンディーはこの草案と同じ頃(4月26日)、インドの新聞『ハリジャン』で次のように語っている。(「ガンジーの言葉の窓」より引用

Q: もし、日本の言うことが本当にその通りであり、英国のくびきからインドを自由にするのを助けたいと、日本が思っているのであれば、その申し出を喜んで受けたらよいのではありませんか?。

A: 侵略者が恩人になってくれることがありうると思い込むのは、愚かなことです。日本は、インドを英国のくびきから自由にしてくれるかもしれません。しかし、代わりに日本のくびきを負わせるだけのことです。インドを英国のくびきから自由にするのに、他者のどんな勢力の助けも求めてはならないと、私はいつも主張してきました。そのようなことは非暴力のやり方ではありません。英国に対抗するのに、外国の助けを借りることにするなら、高い授業料を払わねばならないでしょう。非暴力の行動によって、我々は目標を達成するのに、あと一歩の所まで来ています。私が非暴力を信じる気持ちに揺らぎはありません。私は日本にどんな敵意も持っていません。しかし、日本がインドに下心を持っていることを、平然と静観することはできません。自由人としての我々が、日本と敵対していないことを、どうして彼らは理解しないのでしょうか。日本にはインドをそっとしておいてもらいたいものです。もし、日本が善意でというのであれば、日本が中国にもたらした惨状に価する一体何を、中国がしたというのでしょうか。

さらにガンディーは同年7月、「すべての日本人に」と題した論説で、次のように述べた[2]。

 最初にわたしは……あなたがたが中国に加えている攻撃を極度にきらっていることをはっきり申し上げておかなければなりません。あなたがたは、崇高な高みから帝国主義的な野望にまで堕してしまわれたのです。あなたがたはその野心の実現に失敗し、ただアジア解体の張本人になり果てるかもしれません。      

ガンディーとともに独立運動を指導し、後にインドの初代首相となったネルーも日本を厳しく批判し、既に日中戦争期から中国を支援していた[3]。

 中国を侵略する日本を厳しく批判する点では、ネルーも同じであった。会議派は、38年9月、抗日戦を戦う中国に医療援助をするために、インド医療使節団を派遣した。これは、アグネス・スメドレー(略)と朱徳(中国革命の指導者。八路軍総司令、中国人民解放軍総司令などを歴任)から働きかけを受けてネルーが決断し、全インドから募金を募って実現させたものである。5名の医師からなる使節団にできることは限られていたが、彼らは印中連帯のシンボルであり、中国で大歓迎を受けた

日本が中国で何をやっているかを見れば、これから日本が東南アジアやインドで何をやり出すかは明白だったのだ。いくら美辞麗句を弄しても、日本の帝国主義的野望はガンディーやネルーには見抜かれていた。

[1] 小林よしのり 『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』 幻冬舎 1998年 P.31
[2] 中里成章 『パル判事』 岩波新書 2011年 P.135
[3] 同 P.136

 

脱ゴーマニズム宣言―小林よしのりの「慰安婦」問題

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パル判事――インド・ナショナリズムと東京裁判 (岩波新書)

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