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対北朝鮮「ミサイル避難訓練」は権力への土下座訓練

北朝鮮のミサイル発射に備えると称して全国各地でやらされている恥ずかしい訓練の様子が、ロイターでも報道されてしまった。

私のこのツイートは、珍しく多数のリツイートと“いいね”を頂いたのだが、中には次のような反応もある。

そこで、なぜこの避難訓練もどきが何の意味もない土下座訓練に過ぎないのかを、あらためて整理してみることにする。

■ そもそも間に合わない

北朝鮮はいま、グアムやハワイ、さらにはアメリカ本土にまで届く大陸間弾道弾の開発を「アメリカに向けて」アピールするためにミサイルの発射実験を繰り返している。しかし、これらの米国領土と違って日本は北朝鮮の隣国である。北朝鮮が本当に日本を狙ってミサイルを射った場合、発射からわずか5分(西日本)~10分(北海道)で着弾するので、Jアラートは間に合わないのだ。

ちなみに、8/29や9/15の例では発射から4分程度でアラートが出せているが、これは北朝鮮がわざわざ監視しやすい場所にミサイルを引き出していてくれたからに過ぎない[1]。実戦では避難ができるタイミングでアラートなど出せはしない。

 8月29日は、発射が5時58分、警報は4分後の6時2分に出たから、初めて北朝鮮の予告なしでも警報が出たわけだ。安倍首相は「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握していた」と得意気に記者団に語った。

 だが、首相は前夜から公邸に泊まって待機していたことが後に分かった。北朝鮮は発射を誇示するために偵察衛星が撮影しやすい平壌郊外の順安飛行場に、ミサイルを引き出していたから、予告があったのと同然だった。

■ アラートが出ている=日本には着弾しない

要するに、Jアラートが出ているということはミサイルが日本には着弾しないことを意味している。にもかかわらず大音量の警報で寝ている人々を叩き起こし、電車を止め、とっくにミサイルが通過した後まで延々とテレビで騒ぎ続けるのは、北朝鮮への恐怖を煽ることで有害無益な軍拡路線を突っ走る政権への支持率を上げようという狙いがあるからだ。

ちなみに、北海道から長野までという広範囲にアラートを出しながら首都圏だけすっぽり抜けているのは、首都圏で朝から電車を止めたら大混乱になりかねず、ましてパニックで死傷者が出たりしたら責任追求が始まって嘘が暴かれる危険性があるからだ。

また、北朝鮮がミサイルの発射に失敗して、本来上を飛び越すはずのものが途中で日本に落ちてくることを心配している人もいるようだが、その可能性はない。

ミサイルが軌道に乗ってから壊れた場合も、慣性の法則により破片も秒速10キロで本来の軌道を飛んでいくので、やはり日本には落ちてこない。

というわけで、Jアラートの警報が鳴ってから避難したり頭を抱えたりという訓練には何の意味もない。こんな無意味な訓練に参加させられたり、今回のアラートに振り回された人々は、自分たちが安倍政権の権力維持のための道具として利用されたことを認識するべきだ。だいたい、本当に北朝鮮のミサイルが脅威なら、恰好のターゲットとなる原発を再稼働させたり、あえてこの時期に政治的空白を生む解散総選挙などするはずがないだろう。

■ インフラの無駄使い

Jアラートというインフラは、狙った地域に即時に効果的な警報を出せるのだから、本来災害等に対しても活用できるはずである。例えば先日の台風18号でも、大雨の降る地域や時間帯は分かっていたのだから、これを使えば良かったはずだ。

だが、こうした実際に役に立つケースではアラートを使わず、役に立たない北朝鮮のミサイル発射に対してだけ使う。なぜあえてそのような使い方をするのか、その意味は明白だろう。

[1] 田岡俊次 「北朝鮮の核保有国化に日本の持つ対抗手段が無力な理由」 ダイヤモンド・オンライン 2017/9/7

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