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紀元前の中国農民ですら喝破していた血統の無意味さを理解できない日本人

マスコミが煽る「令和」「令和」の奉祝ムードに流されて、何一つ解決していないこの社会の問題をあっさりスルーする「普通の日本人」たち。実際、世界的に見ても、支配層にとってこれほど「ちょろい」民族は珍しいだろう。

■ 皇室が最古の王朝だから日本はすごい?w

そんな彼らが「日本は特別ですごい国(だから日本人のオレもそれだけですごい)」と考える根拠は、世界一長く続く《とされる》天皇家の血統であるらしい。

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皇室は、現存する最古の王朝であり、
現存する唯一の皇帝であり、
現存するただ一つの神話をバックボーンに持つ血統です。

神話によると2675年前に
初代の神武天皇が即位され、
現在でなんと125代目になります。

さらに、男系で継承されており、
家系図で父親を辿っていくと
初代神武天皇に行き当たります。

これほど長く1つの系譜で続いている
王朝というのは世界のどこにもありません。

世界で最も歴史の古い王家の血脈を今に伝える
文化的にも価値の高い存在なのです。

まあ、そもそもこれ自体が嘘なのだが。

「万世一系」とか言うが、天皇家に限らずいま生きている人間は、誰でも太古の昔から親から子へと連綿と命をつないで生きてきたではないか。そのどこに違いがあるというのか。

■ 王侯将相いずくんぞ種あらんや

こんなことは、人権や平等の概念を学んだ現代人だけでなく、古代の中国農民ですら理解していた。

秦末の農民反乱である「陳勝・呉広の乱」(紀元前209-208年)で、貧農出身の反乱軍リーダー陳勝は「王侯将相いずくんぞ種あらんや」という言葉を残している。これは「国王や諸侯、将軍や丞相などといっても、そのような人種が最初からいたわけではない」という意味であり、身分や血統を否定して人間の平等を主張したものだ[1]。実際、陳勝自身は反乱に失敗したが、次の漢帝国を樹立した劉邦も村役人レベルの庶民の出身だった。

それ以前に、中国古代の伝説的帝王である堯ぎょうしゅん三代には血縁関係はなく、禅譲により帝位が受け継がれたとされている。堯舜禹が実在したかどうかは不明だが、重要なのは、統治者の地位は血統ではなく、最も徳の高い(人格・能力の優れた)人物に受け継がれるべきだというその思想だ。このような徳治思想を含む堯舜禹の伝説は、既に春秋時代末(前5世紀頃)には成立していたと考えられている。

日本の「愛国者」様たちは、古代からこのような思想を持っていた中国を引き合いに出して、「万世一系」の天皇陛下がいる我が国はすごいとかイキっているのだから、もう笑うしかない。

■ 天皇陛下にさゝぐる言葉

中国人の思想など認め(たく)ない、と言うのなら、こちらはどうか。敗戦から2年半ほど後に作家・坂口安吾が書いた「天皇陛下にさゝぐる言葉」だ。[2]

 人間の値打というものは、実質的なものだ。天皇という虚名によって、人間そのものゝ真実の尊敬をうけることはできないもので、天皇陛下が生物学者として真に偉大であるならば、生物学者として偉大なのであり、天皇ということゝは関係がない。況いわんや、生物学者としてさのみではないが、天皇の素人芸としては、というような意味の過大評価は、哀れ、まずしい話である。
 天皇というものに、実際の尊厳のあるべきイワレはないのである。日本に残る一番古い家柄、そして過去に日本を支配した名門である、ということの外に意味はなく、古い家柄といっても系譜的に辿りうるというだけで、人間誰しも、たゞ系図をもたないだけで、類人猿からこのかた、みんな同じだけ古い家柄であることは論をまたない。
 名門の子供には優秀な人物が現れ易い、というのは嘘で、過去の日本が、名門の子供を優秀にした、つまり、近衛とか木戸という子供は、すぐ貴族院議員となり、日本の枢機にたずさわり、やがて総理大臣にもなるような仕組みで、それが日本の今日の貧困をまねいた原因であった。つまり、実質なきものが自然に枢機を握る仕組みであったのだ。

日本人は、敗戦という実物教育で学んだこの当然の理を、もうすっかり忘れたのだろうか。

[1] 世界史の窓 「陳勝・呉広の乱
[2] 坂口安吾 「天皇陛下にさゝぐる言葉」 青空文庫