山岸凉子さんの原発告発マンガ『パエトーン』が、著者自身の好意により、無料でWeb公開されている。
チェルノブイリ原発事故を受けて描かれたものだが、まるで今日の事態を予見したかのような、必見の内容となっている。
もちろん山岸さんは科学技術の専門家ではないが、専門家などでなくてもマトモな感性を持っていれば、原発のように本質的に不安定なシステム、しかもいったん暴走を始めれば破滅的被害をもたらしうる巨大システムを「制御」できるなどと考えることがいかに愚かな思い上がりか、直感的に分かるはずなのだ。「想定外」の連続に右往左往する東電や保安院の姿は、太陽の馬車の手綱も握れずに震えているパエトーンと少しも変わらない。
山岸さんのマンガといえば、『日出処の天子』『スピンクス』『天人唐草』(いずれも傑作)くらいしか読んだことがなく、『パエトーン』はその存在も知らなかった。お恥ずかしい限りだ。
この『パエトーン』でも紹介されている、物理学者武谷三男氏の『原子力発電』。これも必読の書と言える。初版は1976年。武谷氏は、チェルノブイリの10年も前に、原発による重大事故の危険を警告していたのだ。
この書の書き出しは実に示唆的である。
原子力利用の長い道のりは、目前の目的のためにあせればあせるほど、ますます遠い見果てぬ夢となっていく。原子力はまだ人類の味方でなく、恐ろしい敵なのである。日本の諸所方々に建設され、さらに計画されている大型の原子力発電所が何をもたらすだろうか。さらに世界の原子力発電所が人類に何をもたらすだろうか。われわれは無関心でいるわけにはいかないのである。
何十年も前から、分かる人には分かっていた。繰り返し警告もされていた。だが、目の前の利益に目が眩んだ政治家や官僚、財界人たちは、一切聞く耳を持たなかったのだ。
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