値上げの理由について、電力会社は原発停止により火力の燃料費がかさんでいるためだと言い、マスコミは例によって何の検証もなくその言い分をそのまま垂れ流している。それどころか、原発の再稼働ができなければもっと値上げすることになるぞと、電力会社の言いたいことを先取りして消費者を恫喝する始末だ。
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当社は、東日本大震災以降、停止中の原子力プラントの再稼動時期が見通せない中、電力の安全・安定供給のために、火力発電の焚き増しや、長期計画停止しておりました海南発電所2号機の再稼動、姫路第一発電所におけるガスタービンの設置など、最大限の供給力確保に取り組んでまいりました。その結果、火力燃料費等の負担が大幅に増加しましたことから、当社はこれまで、徹底した経営効率化と、内部留保の取り崩しにより、火力燃料費等のコスト増を可能な限り吸収してまいりました。
しかしながら、火力燃料費が、震災前の平成22年度と比較して、平成25〜27年度の3カ年平均で、5,689億円増加するなど、大幅な費用の増加が見込まれることから、現行の電気料金水準では、これらをまかなうことは極めて困難であり、今後、財務基盤がさらに悪化し、最大の使命である電力の安全・安定供給に支障をきたしかねません。
そのため、お客さまには大変なご迷惑をおかけすることとなり、誠に申し訳ございませんが、人件費や広告費の削減等、さらなる徹底した経営効率化を前提とした上で、苦渋の決断としまして、電気料金の値上げをお願いさせていただく次第でございます。
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関電値上げ:火力発電の燃料費が経営を圧迫
関西電力は全国の電力会社で最も原発比率が高く、火力発電の燃料費の負担増が経営の屋台骨を揺るがしてきた。14年3月期にも債務超過に陥る可能性があるとの政府試算もあり、料金値上げやコスト削減を早急に進めなければ、経営不安が現実味を帯びる。社債発行や借り入れに支障が出れば、電気の安定供給が脅かされるため、値上げは不可避の状態だ。
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ただ値上げで問題が解消するわけではない。稼働中の大飯原発2基に加え、高浜原発3、4号機の再稼働による燃料費の軽減を料金算定の前提としているが、実際には再稼働の見通しは立っていない。稼働中の大飯原発も破砕帯(断層)問題を抱え、運転停止のリスクがある。
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関西電力は、原発全11基を停止した場合、収入不足は7091億円に膨らみ、電気料金の値上げ幅は申請の2倍に拡大するとの試算をまとめた。関電は来年4月に家庭向け電気料金について平均11.88%、企業向けで平均19.23%の値上げを目指している。その前提条件が大飯原発2基(福井県おおい町)の稼働継続と高浜原発3、4号機(同高浜町)の再稼働だが、大飯原発は断層問題を抱え、高浜原発は稼働見通しも立っておらず、早くも再値上げを懸念する声が出始めている。
これは本当なのか?本当に火力発電の燃料費はそんなに高いのか?
これを検証するための簡単なサンプルがある。沖縄電力である。
沖縄電力は、日本で唯一、原発を持っていない電力会社だ。電源構成比を見ればわかるとおり、発電量のほとんどを火力が占めている。ちょっとの間原発を止めただけでたちまち値上げしなければならないほど火力の燃料費が高いのなら、設立以来ほぼ火力だけでやってきた沖縄電力の料金はさぞバカ高いことだろう。
実際はどうか。原発ゼロの沖縄電力と、原発依存度が最大の関西電力で比べてみることにしよう。
以下は、一般的な家庭用の従量料金を比較してみたものだ。(料金の単位は円)
単位 | 関西電力 | ||||
最低料金 | 最初の10(15)kwh まで | 1契約 | 383.69 | 325.13 | 339.15 |
電力量料金 | 10(15)kwhを越え 120kwhまで | 1kwh | 21.86 | 19.38 | 20.59 |
120kwhを越え 300kwhまで | 1kwh | 27.15 | 24.54 | 27.08 | |
300kwhを越える 部分 | 1kwh | 29.04 | 25.88 | 30.62 |
値上げ前の関西電力の料金と比べれば沖縄電力は確かに多少高いが、供給範囲が沖縄県内のみと小規模で、しかも離島が多くて各地に小さな発電所を分散させなければならない沖縄電力の事情を考えれば、決して高額とは言えない料金だ。何より、値上げ後の関西電力の料金を見ると、電力消費量に比例して徴収する第3段料金が沖縄電力のそれを超えてしまっている。しかも関西電力は、高浜3、4号機を再稼働できなければもっと上げると言っているのだ。
火力発電の燃料費が高いから値上げしなければならないなどというのは大嘘。本当は、停止させていても莫大な維持費と減価償却費を食い続ける原発のせいなのだ。