防衛省が米海兵隊オスプレイの沖縄配備を正当化するために作成、公開している文書の一つに、『MV-22オスプレイ オートローテーションについて』というプレゼン資料[1]がある。改めて見てみると、この中で行われている安全神話作りは相当にひどい。
エンジン1基の故障確率を掛け合わせて複数基の同時故障確率とすることが許されるのは、その「故障」が偶発的で、エンジンごとの独立事象として扱える場合だけである。今年5月17日にハワイで起きた事故のように、巻き上げた砂埃や天候などの外部要因による故障の場合、当然このような前提は成立しない。もちろん、両エンジンをたかだか20mやそこら離したところで、まったく意味がない。
様々な故障確率を掛け合わせて、「格納容器が破損するような事故はせいぜい一億年に一度」などと言っていた原発安全神話と同じ、典型的な詭弁である。
ハワイでのオスプレイ事故を報じた米Breaking Defence誌記事[2]が指摘しているように、オスプレイがエンジン1基でも(ヘリモードで)飛べるのは、搭載荷重が可能な限り軽く、かつ理想的な条件下で、飛行高度が低い場合だけである。訓練にせよ実戦にせよ、通常の運用ではこのような条件は成立しない。
オスプレイがヘリモードで飛ぶのは離着陸時であり、当然飛行高度は低い。固定翼モードへの移行を行っている間に墜落してしまう。このような主張は絵空事に過ぎない。
これでは大学工学部の学生レポートでも落第だろう。こんな薄弱な根拠でオスプレイの安全性を宣伝する防衛省は恥を知るべきである。
[1] 防衛省 『MV-22オスプレイ オートローテーションについて』 2012/9/19
[2] Richard Whittle “Fatal Crash Prompts Marines To Change Osprey Flight Rules” Breaking Defence, 2015/7/16
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