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野党は「絶望がもたらす希望」の受け皿を提供しなければならない

 

今日の東京新聞に載っていた浜矩子氏の論考[1]が必読の内容なのでメモ。

 アメリカの大統領選に向けて、民主・共和両党の候補者選びが佳境に入りつつある。

 泡沫、本命を追い詰める。両陣営とも、足並みをそろえてこの展開になっている。

(略)

 この構図をどう読むか。主流派に対するアメリカ人たちの拒絶反応。ここまでは、いたってスンナリ話が進む。問題はこの先だ。

 ややこしいことに、どうも、民主党側でサンダース氏を支持している人々と、共和党側でトランプ人気を盛り上げている人々が、かなり似通っているらしい。いずれの候補も、弱者たちの人気を博しているようなのである。(略)

 謎を解くキーワードは、どうも、「絶望」ではないかと思う。「絶望がもたらす希望」と「絶望がもたらす幻想」が人々を二分している。これが今のアメリカなのではないか。絶望がもたらす希望が、サンダース氏に託されている。絶望がもたらす幻想が、人々をトランプ氏に引き寄せている。

 1%の金持ちどものおかげで、我々は99%の貧困層と化すことを強いられている。この絶望的な怒りが、サンダース氏の格差解消のメッセージの中に、希望の灯を見いだした。自分の将来について、絶望せざるを得ない若者たちが、サンダース氏が掲げる分配と優しさの経済学に希望を委ねる。

 対するトランプ氏は、成長と強さの経済学を押し出している。このイメージが、絶望がもたらす幻想の苗床となる

 アメリカをもう一度最強にする。アメリカン・ドリーム再び。この威勢のいい掛け声が、人々を甘い香りの幻想へと誘う。(略)

 こう考えて来たところで、日本で安倍政権の支持率がさほど落ちない理由も、見えてきたような気がする。安倍総理大臣はいう。「強い日本を取り戻す」。トランプ氏はいう。「再びアメリカを最強にする」。全く同じだ。(略)

 絶望がもたらす希望と、絶望がもたらす幻想の、どちらに軍配が上がるのか。それが問われる。これが今のアメリカの政治状況だ。そして、日本の政治状況でもある。ただ、日本の場合、絶望がもたらす希望の明確な受け皿がみえない。野党共闘の主導者たちに、ここを熟慮してもらいたい。

 

次の参院選に向けて、改憲や戦争法、原発再稼働への反対も重要ではあるが、それだけでは野党は勝てない。アベノミクスの失敗をいくら訴えても勝てない。希望が見えなければ人は動かないからだ。

最低賃金を引き上げ、非正規雇用の正規化を進めて富の労働分配率を上げ、消費税率を下げて低所得者層の負担を軽減すれば、需要不足から消費不況に陥っている国内経済は確実に回復する。税収確保には法人税と所得税の税率を適正化し、金融所得の分離課税をやめればよい。1980年頃の税制に戻せばいいだけだから簡単なことだ。いま野党に最も必要なのは、こうした希望の見えるポジティブな経済政策を、サンダースのように信念を持って訴え続けることだ。

 

[1] 浜矩子 『時代を読む 希望か幻想か、米国の選択』 東京新聞 2016.2.28

 

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