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最悪のヘイトクライム:相模原障がい者大量殺傷事件

今回の事件で無念にも殺害された方々のご冥福と、負傷された方々の一日も早い回復をお祈りいたします。またご遺族の方々には心からお悔やみを申し上げます。

■弱者をターゲットにしたヘイトクライム

死者数で戦後最悪の大量殺人となった今回の事件だが、これが障がい者への差別・憎悪に基づくヘイトクライムであることは、容疑者が2月15日に衆議院議長公邸に持参した手紙の内容が明白に示している。

衆議院議長大森理森様

この手紙を手にとって頂き本当にありがとうございます。

私は障害者総勢470名を抹殺することができます。

常軌を逸する発言であることは重々理解しております。しかし、保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳、日本国と世界の為と思い、居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であります。

理由は世界経済の活性化、本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐことができるかもしれないと考えたからです。

障害者は人間としてではなく、動物として生活を過ごしております。 車イスに一生縛られている気の毒な利用者も多く存在し、 保護者が絶縁状態にあることも珍しくありません。

私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。

重複障害者に対する命のあり方は未だに答えが見つかっていない所だと考えました。障害者は不幸を作ることしかできません。

(略)戦争で未来のある人間が殺されることはとても悲しく、多くの悲しみを生みますが、 障害者を殺すことは不幸を最大まで抑えることができます。今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛い決断をする時だと考えます。日本国が大きな第一歩を踏み出すのです。

世界を担う大島理森様のお力で世界をより良い方向に進めて頂けないでしょうか。是非、安倍晋三様のお耳に伝えて頂ければと思います。

私が人類の為にできることを真剣に考えた答えでございます。

衆議院議長大島理森様、どうか愛する日本国、全人類の為にお力添え頂けないでしょうか。何卒よろしくお願い致します。

この容疑者は、障がい者は「人間としてではなく動物として」生きている、「不幸を作ること」しかできない存在だと断定し、障がい者の殺戮を正当化している。さらに、障がい者家族や施設職員の疲弊はこの国の福祉政策の貧困が原因であるにもかかわらず、その責任を障がい者に転嫁している。まさに、7万から20万人とも言われる障がい者を抹殺したナチスのT4作戦と同じ発想だ。

■容疑者は安倍晋三に褒めてもらえると思っていた

今回の事件が特異なのは、最悪のヘイトクライムであることに加えて、この容疑者が、国家意思を代行する執行者として自分を位置づけていたという点だ。薬物中毒等による錯乱から犯行に及ぶ通り魔事件とも、「死刑になりたくて」行われる自暴自棄の殺人とも、もちろんテロとも違う。それは手紙の次の部分からも読み取れる。

作戦内容

(略)

作戦を実行するに私からはいくつかのご要望がございます。

逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は自由な人生を送らせて下さい。心神喪失による無罪。

新しい名前(伊黒崇)本籍、運転免許証等の生活に必要な書類。

美容整形による一般社会への擬態。

金銭的支援5億円。

これらを確約して頂ければと考えております。

ご決断頂ければ、いつでも作戦を実行致します。

日本国と世界平和の為に、何卒よろしくお願い致します。

想像を絶する激務の中大変恐縮ではございますが、安倍晋三様にご相談頂けることを切に願っております

正体を隠すための新しい名前と顔、そして一生楽に暮らせるだけの金。この容疑者は、「よくやった」と安倍晋三から褒めてもらえると思っていたのだ。手紙の時点では「指令」が出てから実行するつもりだったが、待ちきれずに「見切り発車」してしまった、といったところだろう。

こんなことをしておいて褒めてもらえると考えるなんてこの男は頭がおかしいのか? そうではない。障がい者、高齢者、生活保護受給者など、自力で生きていけない者は税金使わずにさっさと死ね、というのが、安倍自公政権と官僚機構が一貫して示してきた意思だからだ。

日本経済新聞(2015/12/12)

精神障害者ら7.9万人、受給減額・停止も 年金新指針で
医師団体推計

 国の障害年金の支給・不支給判定に大きな地域差があるのを是正するため、厚生労働省が来年から導入予定の新しい判定指針について、全国の精神科医でつくる団体が「障害基礎年金を受け取っている精神・知的・発達障害者のうち、1割に当たる約7万9千人が支給停止や支給減額になる恐れがある」との推計を12日までにまとめた。

 日本精神神経学会など7団体でつくる「精神科七者懇談会」で、同会は「年金を受給できなくなると障害者は大きく動揺し、症状の悪化や意欲の低下につながる」と指摘。厚労省に柔軟な対応を申し入れた。

 障害年金では、日本年金機構の判定にばらつきがあるため、不支給とされる人の割合に都道府県間で最大約6倍の差がある。これを受け厚労省は、最重度の1級から3級まである等級を判定する際の指針を作成。精神障害者らの日常生活能力を数値化し、等級と数値の対応表を判定の目安としてつくった。

 2009年時点で障害基礎年金を受け取る精神障害者らは約79万人おり、団体側は対応表に当てはめた場合、等級が下がる人が何人出るかを推計。その結果、1級の受給者約5万6千人が2級への変更が予想され、支給が減額される。2級の約2万3千人は3級となる可能性が高い。障害基礎年金は3級では対象外のため支給停止となる。

厚労省地域格差是正のためとか言っているが、それなら低い方に合わせて支給を切るのはおかしいわけで、もちろんこれは嘘である。本音は、弱者のための金など削れるだけ削って、自分たちの「天下り」「渡り」先に回したい、ということだ。

■弱者切り捨て政策支持者たちの絶望的想像力欠如

情けないことに、この国の多数派は、着々と弱者切り捨て政策を進める安倍政権を喜々として支持してきた。それどころか、ネットには今回の事件の容疑者を擁護する主張さえ横行している。

リテラ(2016/7/30)

(略)報道によれば植松聖容疑者は「障害者は死んだ方がいい」「何人殺せば税金が浮く」などと主張していたとされるが、いま、ツイッター上ではその主張に同調する声が広がっている。

〈そうやってみんなすぐ植松容疑者が異常だと言い張るけど行動がよくなかっただけで言ってることは正論だと思う〉

〈植松の言ってることはこれからの日本を考えるとあながち間違ってはいない〉

〈穀潰しして連中に使われる予定だった税金を節約して、国の役にたったよ彼は。弱いものって誰? 精神障害者はどんなに暴力や暴言はいても罪に問われない無敵の強者だよ?〉

 しかも、これは複数のアカウントによる発言だが、彼らは〈自民と公明が勝ってるのみるとマジでせいせいする〉〈安倍総理を応援してる自分がいる〉〈【拡散】安倍晋三に総理大臣を辞めて欲しくないと思う人はRT〉などともツイートしている。こうした障がい者ヘイトを垂れ流している連中の多くが自民党支持者、あるいは安倍政権が醸成させている空気を身にまとっていることは、もはや疑う余地がない事実なのだ。

こうした安倍自民党支持者たちの想像力欠如は、絶望的としか言いようがない。

人間は誰だって精神障害にも身体障害にも難病患者にもなりうる。いつ事故で半身不随になるかもしれないし、脳に重大な障害を負うかもしれない。企業で働いていれば、メンタルを病んで辞めていく同僚を一人くらいは見ているはずである。たとえ何もなくても、年を取れば必然的に身体は不自由になるし、認知症にだってなるかもしれない。ガンなど、生涯ならずに済む者のほうが少数だろう。要するに彼らには、自分もいつか公的支援を必要とする弱者になるかもしれないという、当たり前の想像力が欠落しているのだ。

今回の容疑者は、あれだけ計画的に大量殺人を行っている以上、現在の法制度上ではまず間違いなく死刑になるだろう。褒めてもらえると思っていた彼は、そのときになって「話が違う!」と叫ぶのだろうか。富裕層でもないのに自分で自分の首を絞めている安倍自民党支持者たちは、困難に直面して初めて、あらゆる公的支援制度が(自分たちが支持してきた政権によって)破壊されていることに気がついて「話が違う!」と叫ぶのだろうか。

 

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