否定し難い虐殺の事実を突きつけたNNNドキュメント
2015年10月4日に放送されたNNNドキュメント「南京事件 兵士たちの遺言」。小野賢二氏が長年収集してきた従軍兵士たちの陣中日記や現場に居合わせた元兵士たちの証言、さらには各種の公的記録を突き合わせ、南京を占領した日本軍が揚子江岸で行った大量虐殺の事実を否定し難い形で立証した、優れたドキュメンタリーだ。放送批評懇談会のギャラクシー賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞など、数々の賞を受賞している。
早稲田ジャーナリズム大賞受賞時の日テレ報道局清水潔氏のコメントがとても良い。
公共奉仕部門 大賞
受賞者名
日本テレビ報道局取材班 代表 清水 潔(日本テレビ 報道局 特別報道班)
受賞作品名
NNNドキュメント’15「南京事件 兵士たちの遺言」
(略)
受賞者コメント
何も足さない。何も引かない。ただ事実と信ずるものだけを淡々と伝える。そんな気持ちで制作しました。77年前の事件を直接見聞することは不可能。だからこそ「一次史料」と現場にいた人の「証言」にこだわりました。事実を伝え、残すこと。それこそがジャーナリズムの根幹と信じて。ご評価御礼申し上げます。
南京事件 兵士たちの遺言 投稿者 tvpickup
「ウインザー通信」さんによる文字起こし:(その1)(その2)
「字体」で番組内容の否定を試みるウヨブログ
当然右派にとってこの番組は痛撃だったわけで、産経をはじめ、なんとか否定しようと無い知恵を絞っている。
そんな中、この番組内容を「検証」すると称して否定を試みているウヨブログがあったのだが、昔から虐殺否定論者たちが繰り返している使い古されたネタに加えて、一つ面白い観点を提示していたので取り上げてみる。
NNNドキュメント 「南京大虐殺 兵士たちの記録 陣中日記」を検証してみた。(南京事件 兵士たちの遺言)時々更新します:
重要な事なので、ここに緊急に追記します。
実は調べると上の動画の中で表紙に「支那事変日記帳」と書かれていますがこれがおかしいのです。
当時使われている漢字では「支那事變日記帳」と書かれないとおかしいのです。
使われている漢字が 「変」は新字体で旧字体なら「變」が正解です。
そこで日記に使われている漢字を色々と調べると新字体や旧字体がまざっています。
捕虜の「虜」の字も旧字体なら「虜」で男の部分の田の部分が毌でなければなりません。
当時の日本の漢字と今の日本の漢字では当然旧字体の方が正しい漢字なので今とは使い方が違います。
(略)
漢字は今まで何度も変更されています。
そこで当時「支那事変」で使われていた漢字を調べると「支那事變」の漢字が使われています。
「支那事変」画像検索結果
読み方が右から左で今と逆ですがやはり「支那事變」の漢字が使われています。
当時の新聞でも「支那事變」と書かれています。
他にも使い方がおかしな漢字がないか現在検証中です。
調べればすぐ見つかる反証
番組に出てきた従軍日記に「支那事変」と新字体で書いてあるのはおかしい、これが当時書かれた本物なら「支那事變」と書くはずだ!と言いたいようだが、果たしてそうだろうか。
はい、反証。↓
これは南京攻略戦当時のグラフ雑誌の表紙だが、堂々と「支那事変」と書かれている。当時は「變」も「変」も、両方普通に使われていたのである。実際、戦時中の1942年に国語審議会が定めた「標準漢字表」でも、「変」は「一般に使用せらるべき」簡易字体として明示されている。
上記のブログ記事の続編では、さらに従軍日記に出てくる他の多くの字についても「追求」し、
特に「来・発・残・剣・変」はどう調べても当時にはまだ無い漢字だと思われますが絶対では有りません。
現在調べている最中です。
(略)
「略字表」で検索して当時使われていた略字を見ると確かに「発・残・変」等は当時から使われています。
ただ「剣」は???の状態です。
他の文字も検索して後で更新します。
などと書いているが、「剣」だって江戸時代から使われている。
どうもこの人、「旧字体」「新字体」という言葉の印象から、今使われている字体は敗戦前にはほとんど使われていなかったはず、的な思い込みがあるようだが、そんなことはない。当時学校で教えられていた煩雑で書きにくい字の代わりによく使われていて馴染みがあったからこそ、戦後の当用漢字に採用されたのである。まして、戦闘や行軍の合間に書かれる従軍日記に略字が多用されるのは当たり前のことだ。
それにしても、番組名で検索するとこんなウヨブログがトップに出てきてしまう困った現状を何とかして欲しいものだ。>Google先生
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南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち―第十三師団山田支隊兵士の陣中日記
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