■ 産経がようやく記事を取り消し
「日本人を救助して轢かれた米兵」美談をでっち上げて琉球新報・沖縄タイムスを誹謗中傷した産経が、ようやく誤りを認めて問題の記事を取り消した。
沖縄米兵の救出報道 おわびと削除
12月9日に配信した「危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー」の記事中にある「日本人を救助した」は確認できませんでした。現在、米海兵隊は「目撃者によると、事故に巻き込まれた人のために何ができるか確認しようとして車にはねられた。実際に救出活動を行ったかは確認できなかった」と説明しています。
記事は取材が不十分であり削除します。記事中、琉球新報、沖縄タイムスの報道姿勢に対する批判に行き過ぎた表現がありました。両社と読者の皆さまにおわびします。
◆検証 「危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー」報道
本紙は、昨年12月1日に沖縄県沖縄市で発生した車6台の多重事故に関する自社報道の内容を検証した。事故ではねられて一時意識不明の重体となった在沖米海兵隊のヘクター・トルヒーヨ曹長について「横転した車両から50代の日本人男性を脱出させた」と報じたが、再取材の結果、トルヒーヨ氏が日本人男性を直接救助した事実は確認されなかった。
(経緯)
昨年12月1日午前4時50分ごろ、沖縄市の沖縄自動車道の北向け車線で、車6台がからむ多重事故が発生した。
本紙那覇支局長は「トルヒーヨ氏の勇敢な行動がネット上で称賛されている」との情報を入手。救助を伝えるトルヒーヨ夫人のフェイスブックや米NBCテレビの報道を確認した上で米海兵隊に取材した。この際、沖縄県警には取材しなかった。
米海兵隊第3海兵遠征軍からは12月6日に「別の運転手が助けを必要としているときに救ったトルヒーヨ曹長の行動は、われわれ海兵隊の価値を体現したものだ」との回答を得た。
これを受けて、12月9日配信のインターネットサイト「産経ニュース」や同月12日付朝刊で、トルヒーヨ氏が横転した車両から日本人男性を救助した後、後続車両にはねられ重体に陥ったと報じ、あわせて、「琉球新報」と「沖縄タイムス」の地元2紙がトルヒーヨ氏の行動を報じていないと批判した。
(略)
◆乾正人産経新聞社執行役員東京編集局長
昨年12月1日に沖縄県沖縄市で発生した車6台の多重事故をめぐる本紙とインターネットサイト「産経ニュース」の報道を検証した結果、米海兵隊への取材は行ったものの沖縄県警への取材を怠るなど事実関係の確認作業が不十分であったことが判明しました。さらに、記事中に琉球新報、沖縄タイムスに対する行き過ぎた表現があったにもかかわらず、社内で十分なチェックを受けずに産経ニュースに配信、掲載されました。
こうした事態を真摯(しんし)に受け止め、再発防止のため記者教育をさらに徹底するとともに、出稿体制を見直し、記事の信頼性向上に努めていく所存です。
事故にあわれた関係者、琉球新報、沖縄タイムス、読者のみなさまに深くおわびします。
■ 「おわび」はしても反省はなし
一応、記事内容が誤りだったことを認めて「おわび」した形になってはいるが、果たしてこれが謝罪だろうか? 問題の記事で、産経は単なる交通事故より元米兵による強姦殺人という重大事件の判決を大きく伝えた沖縄2紙の当然の報道に「米軍差別」だと難癖をつけ、「メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」とまで書いているのだ[1]。
翻って沖縄県のメディアはなぜ、こうも薄情なのだろうか。それでも事故後、この「報道されない真実」がネット上でも日増しに拡散されている。「続報」として伝えることは十分可能だが、目をつぶり続けているのである。
折しもトルヒーヨさんが事故に見舞われた12月1日には、沖縄県うるま市で昨年4月、女性会社員=当時(20)=を暴行、殺害したとして殺人罪などに問われた、元米海兵隊員で軍属だったケネス・シンザト被告(33)の裁判員裁判判決公判が那覇地裁であり、柴田寿宏裁判長は無期懲役の判決(求刑無期懲役)を言い渡した。
琉球新報、沖縄タイムスともにこれを1面トップで報じ、社会面でも見開きで大きく展開した。(略)
かくして今回のトルヒーヨさんの美談も、シンザト被告の無期懲役判決報道にかき消され、完全に素通りされてしまった。わけても「差別」に敏感な2紙は昨今、「沖縄差別」なる造語を多用しているが、それこそ「米軍差別」ではないか。
(略)
「反米軍」一色に染まる沖縄メディアも右にならえだ。翁長県政ともども、日本とその周辺地域の安全と安定のために日夜命がけで任務にあたる米軍への「敬意」を持ち得ないスタンスは、トルヒーヨさんへの無慈悲な対応でも浮かび上がる。
遅ればせながらここで初めて伝えている記者自身も決して大きなことは言えないが、トルヒーヨさんの勇気ある行動は沖縄で報道に携わる人間なら決して看過できない事実である。
「報道しない自由」を盾にこれからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ。とまれ、トルヒーヨさんの一日も早い生還を祈りたい。(那覇支局長 高木桂一)
これが「行き過ぎた表現」に過ぎないというのなら、この手のバッシングを産経は少しも問題とは思っていないのだろう。つまり、「おわび」は形だけで、反省などしていない(行動を改めるつもりはない)ということだ。
産経新聞(ニュース)の元記事では、沖縄タイムスと琉球新報に対して「メディア、報道機関を名乗る資格は無い。日本人として恥だ」とまで非難していた。自己の間違いで、他社をここまで罵倒しておいて、この程度のお詫びで済むのが日本人なのだろうか? https://t.co/7swCL0B8TY
— 清水 潔 (@NOSUKE0607) 2018年2月8日
沖縄2紙への批判に「行き過ぎた点があった」としている。つまり、ちょっと書き過ぎたけど、批判自体は正しいと言いたいわけだ。さすがの産経クオリティ。元祖フェィクニュースの座は安泰だ。 https://t.co/Ra0PSORZzq
— 安田清人 (@sanzarutaishou) 2018年2月7日
■ フェイクニュースを紙面に載せた経緯も検証されていない
また、問題の記事を掲載した経緯について、
本紙那覇支局長は「トルヒーヨ氏の勇敢な行動がネット上で称賛されている」との情報を入手。救助を伝えるトルヒーヨ夫人のフェイスブックや米NBCテレビの報道を確認した上で米海兵隊に取材した。この際、沖縄県警には取材しなかった。
産経はこう書いているが、これは正確ではない。下記「オスプレイ不安クラブ」さんが詳細に検証されているように、産経の那覇支局長はあの「ニュース女子」にも関係しているネトウヨから情報をもらい、その指示どおりに記事を書いている。海兵隊への「取材」というのも、書きたいストーリーを先に決めた上で、それに合った「コメント」を取っているだけだ。
だいたい、交通事故の記事を警察にも取材せずに書くなどということがなぜ起こるのか。下手にまともな取材などしたら、不都合な事実が出てきて書きたい記事が書けなくなるからだろう。
産経新聞は、「取材をしない」、一つには赤字で取材費がないと聞きます。もう一つは、取材すると「自分たちに都合のいい記事」が書けないからです。「自分たちに都合のいい記事を書く」ためには事実は邪魔なのですわ。 https://t.co/0BRp4gyzZZ
— aoi sora (@4023Sora) 2018年2月8日
■ 曹長の妻のFacebook投稿は伝聞
問題の記事では、事故の翌日に海兵隊曹長の妻がFacebookに投稿した記事が、英雄的行為の決定的証拠であるかのように扱われている。
産経記事[1]:
妻のマリアさんは3日、自身のフェイスブックにこう投稿した。
「最愛の夫は28年間、私のヒーローです。夫は美しい心の持ち主で、常に助けを必要としている状況や人に直面したとき、率先して行動する人です。
早朝、部下とともに訓練があるため、金曜日の午前5時高速道を走行中に事故を目撃した。関わりのない事故だと、見て見ぬ振りして職場への道を急ぐこともできました。
でも主人は自分の信念を貫き、躊躇(ちゅうちょ)せず事故で横転した車内の日本人負傷者を車外に助け出し、路肩へと避難させました。そして私の夫は後ろから来た車にひかれてしまいました。
彼のとった無我無欲で即応能力のある行動こそが真の勇敢さの表れです。私の心は今にも張り裂けそうです。主人はサンディエゴ州の海軍病院に搬送されました。みなさんにお願います。どうか私の主人のためにお祈り下さい」
トルヒーヨさんは3人の子どもの父である。マリアさんの夫への「思い」は世界中で反響を呼び、トルヒーヨさんの勇気ある行動を称えるとともに、回復を祈るメッセージが続々と寄せられている。日本国内でもネット上に沖縄県内外を問わず同様の声が巻き上がっている。
しかし、マリアさんは車に同乗しておらず、曹長本人は意識不明の状態なのだから、当然ここに書かれていることは伝聞である。では、誰がこの話をマリアさんに語ったのか。
事故発生当時、現場には曹長本人以外にも少なくとも二人の海兵隊員がいた。一人は曹長が現場で無事を確認した隊員、もう一人は後方から追い越し車線を走ってきて曹長をはねてしまった隊員だ。
これは推測だが、この二人のどちらかが、夫が意識不明の重体と聞いて動揺するマリアさんを勇気づけるために、「事故車から運転手を救助した結果轢かれた」という話にしてしまったのではないか。この海兵隊員が後に証言を訂正した結果、
米海兵隊第3海兵兵站(たん)群の英語ホームページ記事によると、曹長は接触事故後に現場にいた別の隊員に近づき無事を確認した後「自分の車を動かすよ」と言って離れた直後にはねられたという。
在日米海兵隊のツイッターでは12月、曹長へ回復を祈るメッセージを送る県民の運動について発信する際に「多重事故で横転した車から県民を救出した直後に車にひかれ」と、救助したと断定した書き方をしていた。その後、このツイートは「多重事故で車にひかれ意識不明の重体になった」と訂正された。
海兵隊は取材に対し「事故に関わった人から誤った情報が寄せられた結果(誤りが)起こった」と説明している。
ということになったのだろう[2]。
■ デマは拡散され続けている
たとえ「おわび」が掲載され記事が削除されても、一度放たれたデマは拡散され続け、社会を毒していく。
産経ごとき、ボギーてどこんごとき無視しておけばいいのでは?という方へ。
— やんばるぐらし@辺野古新基地反対☆高江をまもれ (@yanbarugurashi) 2018年2月8日
フェイク・デマは手を変え品を変え繰り返し拡散されることで受け手の認知を歪め、民主主義の根幹である選挙にさえ少なからず影響を与えるのです。#名護市長選挙#渡具知武豊 pic.twitter.com/xZGLqNJgLI
八重山日報や産経が存在しない関係者やネットの噂を報じ、正論文化人が「新聞て報じられた」と言い、普通の日本人がそれを事実として拡散するという手続きですね。
— 天野譲二@『幻の未発売ゲームを追え!』発売中 (@TOKYOMEGAFORCE) 2018年2月10日
まともに反省していない以上、産経はこれからもまた同じようなことをやるだろう。産経はもう謝罪などしなくていいからさっさと廃刊すべきだ。
産経がお詫び掲載とは、世にも珍しいことがあるものだ。明日、天変地異等何か悪いことが起きねば良いが・・・まぁお詫びなんかしなくてもいいから、明日すぐに廃刊にしてくれればいいですよ、産経殿。
— 本間 龍 ryu.homma (@desler) 2018年2月8日
沖縄米兵の救出報道 おわびと削除 - 産経ニュース https://t.co/HPlcMAj9EC
[1] 『危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー』 産経ニュース 2017/12/9(削除済み)
[2] 『産経報道「米兵が救助」米軍が否定 昨年12月沖縄自動車道多重事故』 琉球新報 2018/1/30
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