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三浦瑠麗の「潜伏テロリスト」発言は一発アウトの大衆扇動。こんな人物を学者扱いしてはならない。

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荒唐無稽なデマを拡散

2月11日のフジテレビ系「ワイドナショー」での三浦瑠麗発言。まさかと思って録画を確認したのだが、本当に北朝鮮のテロリストが国内に潜伏しており、それが金正恩政権崩壊と同時に動き出してテロ活動をすると発言している。しかも、何の留保もない断言である。

三浦 今回、核体制の見直し、NPRと呼ばれるものが更新されて、その中で、小型の核をたくさん作って、そして戦略核と呼ばれる、ソ連との間でやりとりしてたような大規模な核を減らしますという方針が出されたんですね。

三浦 そうすると、核兵器をより使える方向に舵を切ったんですけど、で、考えてみましょう。もしアメリカが北朝鮮に核を使ったら、アメリカ大丈夫でも我々けっこう反撃されそうじゃないですか。で、実際に戦争がはじまったら、テロリストが、仮に金正恩さんが殺されても、スリーパー・セルと言われて、もう指導者が死んだってわかったら、もう一切外部との連絡を絶って都市で動きはじめる、スリーパー・セルというのが活動するって言われてるんです

東野 普段眠ってる、暗殺部隊みたいな?

三浦 テロリスト分子がいるわけですよ。それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今けっこう大阪やばいって言われていて。

松本 潜んでるってこと?

三浦 潜んでます。というのは、いざと言うときに最後のバックアッププランですよ。

三浦 そうしたら、首都攻撃するよりかは、正直、他の大都市が狙われる可能性もあるので、東京じゃないからっていうふうに安心はできない、というのがあるので、正直われわれとしては核だろうがなんだろうが、とにかく戦争してほしくないんですよ。アメリカに。

学者・有識者という位置付けでテレビに出演し、公共の電波を通じてこういう発言をするというのは、直球ど真ん中の差別扇動である。ドイツのようなまともな国なら民衆扇動罪で刑事罰対象だろう。

この三浦発言の荒唐無稽さは、金正恩政権の立場に立って考えてみれば容易に分かる。なぜわざわざ膨大な時間と金をかけて育成した優秀な工作員を、自分たちが滅びた後でテロ活動をさせるために「敵国」に潜伏などさせるのだろうか。そんな貴重な人材や資金があるなら、すべて自分たちが生き延びるためにこそ使うだろう。

三浦の「根拠」はすべてガセネタ

そもそも、仮に北朝鮮の工作員がどこかに潜入しているとして、一般人がその偽装を見破ることなど不可能である。となれば、「スリーパー・セルがいるぞ!」と煽られた「普通の日本人」たちの猜疑の目は、朝鮮半島にルーツを持つ人々全体に向けられる結果にしかならない。(もっとも、潜入工作員がそんな疑われやすい立場の人間を装っているはずもないのだが。)

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番組放送後、当然ながら三浦のこの発言には批判が殺到した。これに対して三浦は自分のブログで次のように反論している[1]。

同様に、スリーパー・セルが日本に存在することとも、向き合わないといけないのです。テロリストがいると思えば、当然テロ捜査をしなければいけないわけで、その過程を通じて、テロリストがいない社会よりも人権保護に関する懸念が生じうることは確かでしょう。(略)人権保護と緊張関係があるからと言って、国家の安全にとって重要なリスクを国民に見える形で議論することを躊躇すべきとは思いません。

(略)「専守防衛」の内実や、「集団的自衛権」と「個別的自衛権」の差分を云々していても、日本は1ミリも安全にはなりません。今の日本にとって不可欠なのは、安全保障の世界から誤魔化しと建前の議論を放逐することではないでしょうか。

三浦の言う「議論」とは、裏取りもできない公安情報?などを根拠に、北朝鮮の潜伏工作員がテロを起こすとか、「(在日コリアンの集住地域として知られている)大阪がやばい」とかいう、検証も対処もしようのない疑惑・不安をマスメディアを通じて流布することらしい。事件報道で安易に流される「犯人は外国人風」といった具体性を欠いた情報が真犯人逮捕には何の役にも立たず、外国籍住民への排外感情を煽る効果しかないのと同様、三浦の言うような「議論」をいくら繰り返しても日本は1ミリも安全にはならず、差別と排外主義が蔓延するだけである。

なお、批判を受けて三浦が持ち出した「根拠」がすべてガセネタ、デマの類いであることは既にあちこちで指摘されているので、ここでは繰り返さない。下記サイト等を参照して欲しい。

『デビルマン』の悪魔狩り扇動を想起させる手法

この三浦発言を聞いて、永井豪のマンガ『デビルマン』を連想したという人が何人かいたが、卓見だと思う。

『デビルマン』は、人類の手から地球の支配権を取り戻そうとする先住種族デーモン族と、デーモンと合体して悪魔のような姿になりながらその超能力を駆使してデーモンから人類を守ろうとするデビルマンとの凄絶な戦いを描いたSFマンガの傑作だが、この中に、テレビで「あなたの隣人の中にもデーモンが潜んでいる」と語って「悪魔狩り」をそそのかす人物が登場する。

その結果、恐怖に駆られた暴徒がデーモンやその協力者と見なした人々を襲撃し、殺戮していく。

これは「マンガだから」と言って済ませられるような話ではない。実際、関東大震災時には「不逞鮮人」が暴動(=テロ)を起こしているとの流言に扇動された自警団が、『デビルマン』で描かれた場面【閲覧注意】そっくりの虐殺を繰り広げている[2]。

 少女時代に震災を経験した在日のお婆さんについての記事を読んだことがあります。彼女は大家さんにかくまわれていたのですが、建物の外が騒然としていたとき、お父さんの友人が「ちゃんと話せば大丈夫だ」と外に出ていった。その後、外から「わー」と叫ぶ声が聞こえ、窓から覗くと、その人の首を竹槍の先に突き刺して、自警団が歩き去るのを見てしまったのです。娘さんの言葉として書いてあったのは、彼女は年をとってから夜中に「地震が来る」と言って起き出したりしていたそうです。また、「日本人を怒らせると殺される」とも言っていたとも。

この国では、いまや朝鮮人虐殺事件の存在自体を否定する歴史修正主義言説が公然と流通している。事実を直視できず反省できない者は、また同じ過ちを繰り返すだろう。

マスメディアを使った大衆扇動を許してはならない

三浦が行ったのは、まぎれもなく在日コリアンをターゲットとしたヘイトクライムを誘発しかねない大衆扇動である。また、三浦の発言を制止も撮り直しもせず、それどころかわざわざテロップまで出して強調したフジテレビの責任も重大だ。どちらも絶対に許してはならない。


[1] 『朝鮮半島をめぐるグレート・ゲーム』 山猫日記 2018/2/12
[2] 『「残響」を背負って生きる人々』 人権情報ネットワークふらっと 2015/1/29


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