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小林よしのりは「反権威」?

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前回記事では論点が発散しないよう省略したポイントを少々補足。

倉橋耕平氏をエセ学者呼ばわりしたブログ記事で、小林は蔵書自慢・読書量自慢とともに、自分の「反権威」姿勢をも誇示している。

『ゴーマニズム宣言』は最初から「権威よ死ね」であり、形骸化した権威と、主観的な知識人を批判するために始めた作品であり、西部邁氏がわしを意識した理由は、知識人批判に共感してくれたからである。

若手で今も変わらず、権威主義的で、漫画家に偏見を持つ馬鹿が現れるのだから、わしの使命はまだまだ終わらない。

ところが小林は、2000年6月の「論文」のほうでは、日本軍性奴隷制度被害者(いわゆる「従軍慰安婦」)問題の専門家吉見義明氏を攻撃するためにこんなことを書いている。[1]

 実はこのような「史料批判」こそが歴史を叙述する基本のトレイニングであることを、わしは「新しい歴史教科書をつくる会」で東京大学名誉教授・政策研究大学院大学教授の伊藤隆氏から教示された。従軍慰安婦問題、南京問題に関して半ば無意識にやっていたことでもあったのだが、ある時、伊藤氏が過分に褒めて下さる時があった。「吉見義明氏にも“史料批判”は教えておいたはずなのになあ。小林さんに史料批判で突っ込まれるようになっちゃあ、歴史学者としてはおしまいだなあ」
 なんと、慰安婦問題で日本軍の責任を追及する側に立っている歴史学者の中央大教授・吉見義明氏は、かつて伊藤隆氏の教え子だったのである。

伊藤隆氏といえば、「日本近代史の第一人者」と評されることもある、その道の大権威である。その伊藤氏に自分は褒められた、一方吉見氏は師の伊藤氏からダメ出しされているではないか、というこの文章のどこが「権威よ死ね」なのか。

もっとも、その伊藤隆氏も最近ではこのありさまである。

半世紀以上も日本の近代史を研究してきた歴史学者のたどり着いた結論が「歴史から学ぶ必要はない」だとは、なんとも無残なものだ。歴史修正主義に加担するようになった学者の末路など、こんなものなのだろう。

[1] 小林よしのり 『歴史を歪めるのは誰か 学者・知識人へのわが一撃!』 正論 2000年6月号 P.60-61

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