自称「神祇官代」の妙なツイート
先日、TLに妙なツイートが流れてきた。「神祇官代」と称する、今年2月に登録されたばかりのアカウントによるものだ。
【確認事項】
— 神祇官代(神社・神道の総合案内) (@jingikandai) 2019年5月2日
「平成天皇」や「令和天皇」とお呼びするのはご遠慮下さい
これは諡(おくりな)と言い、崩御された後、我々臣下が捧げるお名前です
学校で習わない事なので、知らないのも当然ですが、ご配慮をお願いします
天皇や貴人等のお名前をみだりに唱えないようする我が国の文化の一つです
こんなツイートに17万も「いいね」がついている。それだけ、自発的に天皇の「臣下」になりたい者たちがいるということだ。しかも、天皇だけでなく「貴人」の名前も「みだりに唱え」てはならないのだという。まさに中世ジャップランドに生きているのだろう。情けない話だ。
ちなみに「神祇官」とは、古代天皇制国家の律令制で定められた官庁の一つで、その職掌は神祇の祭祀、祝部はふりべ・神戸かんべの名籍の管理、大嘗祭・鎮魂祭、御巫みかんなぎ・卜兆ぼくちょう、官事の「惣判」(決裁)だった[1]が、次第に衰亡し、応仁の乱で官舎が焼失した後は再建されることなく、「神道家元」の吉田家が明治維新までその代理(神祇官代)とされた[2]。(その後、明治初期に一時的に復興。)
されば年中の祭式は如何にして行はれしかといふに、内野の神祇官跡に仮屋を設けて、その内にて式を行い居りしかど、いつまでもかくてあるべきにあらねば、遂に吉田社を以て、神祇官代とし、奉幣使等はここより、発遣することとなり、以て明治維新に至れり、
もちろん、現代には「神祇官」も「神祇官代」も存在しない。
言うまでもないことだが、天皇や皇族を何と呼ぶかなど個人の勝手。こんな「臣下」代表ワナビーに指図されるいわれなどない。
天皇制がなぜダメか、神祇官代を騙る垢の「臣下はデンデン」ツイが明らかにしたよね。天皇の権威を利用して、人の内心や行動の自由を奪おうとする輩に簡単に利用されてしまう。当の天皇は政治的なことはできないことにされとるから、結果権力のやりたい放題な訳ですよ。こんな悪質なシステムないぜ。 https://t.co/xrc2oS96ye
— 思想犯スネゲマン@マンゴー研修 (@sunegebohbohman) 2019年5月4日
裕仁は存命中から「昭和天皇」
ちなみに、裕仁は存命中から普通に「昭和天皇」と呼ばれていた。ちょっと調べただけでも、いくらでも事例が出てくる。
- 宮崎市編 『宮崎市行幸記念誌 昭和十年 陸軍特別大演習 昭和天皇』 1936年
- 樋口清之, 草柳文恵 『日本史の中の昭和天皇(天皇陛下御在位50年特集)』 月刊自由民主 1976年10月号
- 別冊一億人の昭和史 『昭和天皇史 近代日本とともに80年』 毎日新聞社 1980年12月
- 天皇皇后両陛下御大婚六十年記念 『第一二四代昭和天皇陛下』 日本叙勲出版協会 1984年
- 小堀桂一郎 『昭和天皇論』 日本教文社 1986年
実際には昭和にはけっこう右も左も在位中から「昭和天皇」呼びやってた。検索すると自民党機関紙の記事名で70年代に出てきたり。だんだん窮屈なこと言うようになった。みんな呼びたいように呼べ。 https://t.co/mo9Jc7B5Oa
— まんりき (@manriki) 2019年5月2日
自民党や叙勲出版協会も不敬だったのか?w
[1] 安丸良夫 『神々の明治維新』 岩波新書 1979年 P.49
[2] 佐伯有義編 『神祇官考証』 梁川保嘉発行 1900年 P.33