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「空母いぶき」で佐藤浩市の演じる総理が安倍なら、揶揄どころか美化だろうw

24日から公開の映画「空母いぶき」で首相役を演じている佐藤浩市の、ある発言が大炎上するという「事件」があった。

火元は阿比留瑠比(産経新聞記者)のFacebook投稿だという。

lite-ra.com

 きっかけは産経新聞の御用記者・阿比留瑠比がFacebookで5月10日夜にこんな書き込みをしたことだ。

観に行こうかと考えていた映画『空母いぶき』に関心を失った件について。『ビッグコミック』誌のインタビューに、首相役の俳優、佐藤浩市氏がこう述べているのが掲載されていたのを読んでしらけたからです。
「最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね」
「彼(首相)はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます」
 ……はあ。あえてアレコレ言う気もおきません。次は三田村某さんに続いて菅直人元首相の役でもやるといいですね。どうでもいいや。

これに極右作家の百田尚樹や極右経営者の見城剛(幻冬舎社長)が派手に燃料を投下し、ネトウヨが群がって大炎上、というわけだ。

つまり、「空母いぶき」に出てくる首相は安倍晋三であり、「思想的にかぶれた」佐藤はそれが嫌で「下痢する弱い首相」として描くように脚本を変えさせた、しかもそれは安倍が患っているという難病(潰瘍性大腸炎)を揶揄する卑怯なやり方だ、というわけだ。

本当にそうなのか? まずは問題の発言を確認する必要があるだろう。以下が『ビッグコミック』に掲載された佐藤浩市インタビューの全文である。

datsuaikokukarutonosusume.blog.jp

――総理大臣役は初めてですね。

佐藤 最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね。でも、監督やプロデューサーと「僕がやるんだったらこの垂水総理をどういう風にアレンジできるか」という話し合いをしながら引き受けました。そしてこの映画での少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても、国にとっても、民にとっても、何が正解なのかを彼の中で導き出せるような総理にしたいと思ったんです。

――総理は漢方ドリンクの入った水筒を持ち歩いていますね。

佐藤 彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます。

――劇中では名実ともに「総理」になっていく過程が描かれます。

佐藤 これはある政治家の人からきいたのですが、どんな人でも総理になると決まった瞬間に人が変わるっていうんです。それぐらい背負っていくものに対する責任を感じる、人間というのはそういうものなんですね。

――この映画からどのようなものを受け取ってもらいたいですか。

佐藤 僕はいつも言うんだけど、日本は常に「戦後」でなければいけないんです。戦争を起こしたという間違いは取り返しがつかない。だけど戦後であることは絶対に守っていかなきゃいけない。それに近いニュアンスのことを劇中でも言わせてもらっていますが、そういうことだと僕は思うんです。専守防衛とはいったいどういうものなのか、日本という島国が、これから先も明確な意思を提示しながらどうやって生きていかなきゃいけないのかを、ひとりひとりに考えていただきたいなと思います。

全然違うではないか。

むしろ、「クジ運」が悪くて国家的危機の中で重大な決断を迫られる立場に立たされ、「何が正解なのか」苦悩した首相と言われて連想するのは、東日本大震災と福島第一原発事故に直面した菅直人だろう。あのとき、菅が東電本店に怒鳴り込んで福一からの撤退を阻止しなければ東日本は壊滅していたのだ。さらに菅直人はこの危機から「脱原発」というビジョンを確立し、30年以内に大地震が起きる確率が87%という危険地域で稼働中だった浜岡原発を止めた。

一方、震災で福一が全電源を喪失する原因を作った張本人であるにもかかわらず、当時「菅首相が海水注入を止めさせた」というデマを流すなど、その足を引っ張ることばかりしていたのが安倍晋三だ。「空母いぶき」で描かれている首相とは真逆の卑劣漢である。

「空母いぶき」で佐藤浩市の演じる首相が安倍だとしたら、それは揶揄どころか美化だろうw


ちなみに、そもそも「空母いぶき」ってこういう映画だし、

原作からしてこういうマンガなので、

私も観に行くつもりはない。

それはそれ、これはこれである。

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