読む・考える・書く

マスコミやネットにあふれる偏向情報に流されないためのオルタナティブな情報を届けます。

新型肺炎パニックを改憲に利用しようとする政治屋たち

野党の求める新型肺炎対策を放置しながら野党に責任転嫁する政府与党(ついでに維新)

新型コロナウイルス肺炎問題を口実に、「こういう事態に備えて緊急事態条項が必要なのだ」と言い出すやつがきっと現れると思っていたら、やっぱり出てきた。

画像出典:テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』(1/31放映)

しかし、「活発な議論」も何も、新型肺炎対策を議論するための厚生労働委員会の開催から逃げ回っているのは政府与党の側ではないか。

buzzap.jp

「野党は新型肺炎の質問をしない」と攻撃する与党、対策のための「厚生労働委員会」開催要請を放置していた

(略)

◆野党の新型肺炎対策のための「厚生労働委員会」開催要求、与党に無視される

春節を前にした1月24日、共産党の宮本徹衆議院議員(厚生労働委員会所属)は自身のツイッターアカウントで医療・公衆衛生を所管とする衆議院厚生労働委員会の理事会を開くよう、与党側に提案していることを明かしていました。

しかし衆議院の委員会開催日程を見てみると1月29日現在まで厚生労働委員会は開催されずに放置されたまま。これに対して立憲民主党と共産党は1月28日の時点で独自に新型肺炎に対する対策本部を立ち上げています。

なお、政府は本日衆院予算委員会で30日に対策本部を設置することを表明。

1月24日時点で呼びかけに応じて議論を進めていれば、もっと有用な対策を講じることができたのでは……という気がしてなりません。

◆「野党は新型肺炎の質問をしない」と与党が攻撃する不条理

そうした中で、公明党の伊佐進一衆議院議員(上記の宮本徹議員と同じ厚生労働委員会所属)は1月28日に「昨日はコロナウイルスに関する野党の質問は一問も有りませんでした」と発言。

世耕経産相は本日「このシチュエーションで感染症について質問をしない感覚に驚いています」と野党を攻撃しています。

邦人救出のためにチャーター機が派遣されるという過去半世紀に例のない事態の中、与党は厚生労働委員会の理事会を開催し、挙国一致の体制で感染拡大防止に全力を挙げなければいけないはず。

ですがその開催を(週末をはさんだとはいえ)5日間も放置しながら、逆に新型肺炎を材料に野党議員を叩くという極めて不条理な状況となっています。

改憲しないと検査や入院の強制ができないというウソ

www.tokyo-np.co.jp

 自民党の伊吹文明元衆院議長は三十日の二階派会合で、新型コロナウイルスの感染拡大について「緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と話した。自民党がまとめた改憲四項目の一つである緊急事態条項の導入を念頭に置いた発言。同条項は、大規模災害時に内閣に権限を集中させ、国民の権利の制限を認める内容。

 政府は二十八日に新型肺炎を感染症法上の「指定感染症」とする政令を閣議決定したが、施行日の二月七日までは感染者の強制入院などの措置は行えない。

 伊吹氏はすぐ強制措置が取れることが望ましいとし「周知期間を置かなくてもいいことにするためには、憲法を変えてもらわないとできない」と語った。

自民党の伊吹文明衆院議員(こんなのが衆院議長だったのだ)は、改憲して緊急事態条項を導入しないと感染疑いのある人への検査や入院の強制ができないなどと言っているが、大嘘である。

しかも、2月7日までできないはずの「指定感染症」対応措置の実施を1日からに前倒しすることによって、これがウソだったことを安倍政権自身が証明している

mainichi.jp

 世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言を受け、安倍晋三首相は31日午前の衆院予算委員会で、2月7日施行予定だった新型肺炎を感染症法の「指定感染症」にする政令を「1日から施行する」と表明した。安倍首相は「これにより、入国しようとする者が感染しているなら入国拒否する」と述べた。

そもそも、「周知期間」が迅速な対応を妨げるというなら、それを置かなくてもいいように感染症法を改正すればいいだけであって、こんな些末なことに憲法を持ち出す余地などもともとないのだ。

こんなに恐ろしい「緊急事態条項」

このようなウソを重ねてまで政府与党が緊急事態条項を導入しようとするのは、これがあれば事実上憲法を停止して半永久的な与党独裁が可能になるからだ。

この緊急事態条項がどれほど恐ろしいものかについては、弁護士ほりさんが大変分かりやすい解説を書かれているのでぜひ一読して頂きたい。

note.com

全体の要点

自民党が憲法改正について(2012年の草案とは別に)2018年に公表した、憲法改正に関する「たたき台素案」によれば

①内閣が一存で、国会の審議抜きで、法律と同じ効力を持つ政令を定めることができ、これによって、例えば官庁組織を自由に設立したり、刑罰を定めることもできる。条文上は、有効な歯止めは存在しない。

②国会議員の任期を無限に延長することができ、内閣総理大臣も終身在任とすることができる。

いったん緊急事態を宣言すれば選挙もなしに半永久的に与党でいられるし、自分たちだけで好き勝手な政令(事実上の法律)を作って強制的に従わせることができる。さらに、デモなど抗議行動もすべて禁止できマスコミからネット・SNSまで情報はすべて統制できるのだから(そういう政令を作ればいいだけ)、一般市民は何もできないばかりか、一方的に政府広報を聞かされるだけでどこで何が起っているのか知ることすらできなくなるだろう。

まさに、民主的なワイマール憲法下でナチスの独裁を可能にした全権委任法と同様な代物だ。麻生が言う「ナチスの手口に学べ」とは、こういうことなのだ。

しかも、まだ国内で一人の死者も出ていない新型コロナウイルス肺炎問題でこれが持ち出されていることからも分かるように、いったん緊急事態条項が憲法に追加されてしまえば、ちょっとした「事件」を口実に簡単に「緊急事態」が宣言されてしまうだろう。

こんな致命的凶器を、絶対に政治屋共に与えてはならない。

【関連記事】

 

自民党という病 (平凡社新書)

自民党という病 (平凡社新書)

 
民主主義の敵は安倍晋三

民主主義の敵は安倍晋三

  • 作者:佐高 信
  • 出版社/メーカー: 七つ森書館
  • 発売日: 2014/08/05
  • メディア: 単行本