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敗戦の日の天皇の仕事は、テキトーな「反省のふり」をして見せて一切反省しない政府を免責すること。

76年前の8月15日は、原爆投下とソ連の参戦で、これ以上やったら自分の身も危ないと考えた天皇裕仁が連合国への降伏を決め、お前たち臣民も黙って従えとラジオで放送させた日である。

その裕仁の孫である徳仁は昨日、全国戦没者追悼式に出席し、次のような「お言葉」を述べた。[1]

 本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。

 終戦以来76年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。

 私たちは今、新型コロナウイルス感染症の厳しい感染状況による新たな試練に直面していますが、私たち皆がなお一層心を一つにし、力を合わせてこの困難を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。

 ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

一応、戦争への反省らしきことを述べてはいるが、

  • そもそも何をどう反省しているのか不明
  • その戦争がなぜ起こったのか(誰が何のために起こしたのか)への言及がない
    → だからどうすれば「戦争の惨禍」を繰り返さずに済むかも分からず、ただ「願う」だけ
  • 追悼の対象は日本人の戦死・戦没者のみ
    (最大の被害者である、日本軍に殺されたアジア2千万の人々は無視)
  • 自分の祖父であり、そのおかげで自分が今の地位についている裕仁が、その戦争でどんな役割を果たしたかにも言及なし

という、まったく不十分な「反省したふり」でしかない。

しかし、こんな欺瞞的な発言にも、それをする理由はある。それは、同じ式典で菅スガが述べた「式辞」[2]と比べてみれば分かる。

天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、戦没者のご遺族、各界代表のご列席を得て、全国戦没者追悼式を、ここに挙行いたします。

先の大戦では、300万余の同胞の命が失われました。

祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦場にたおれた方々。戦後、遠い異郷の地で亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、各都市での爆撃、沖縄における地上戦など、戦乱の渦に巻き込まれ犠牲となられた方々。今、すべてのみ霊の御前にあって、み霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。

今日、私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆さまの尊い命と、苦難の歴史の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念をささげます。

いまだ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも、決して忘れません。一日も早くふるさとにお迎えできるよう、国の責務として全力を尽くしてまいります。

わが国は、戦後一貫して、平和を重んじる国として歩んでまいりました。世界の誰もが、平和で、心豊かに暮らせる世の中を実現するため、力の限りを尽くしてまいりました。

戦争の惨禍を、二度と繰り返さない、この信念をこれからも貫いてまいります。わが国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と力を合わせながら、世界が直面するさまざまな課題の解決に、全力で取り組んでまいります。今なお、感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症を克服し、一日も早く安心とにぎわいのある日常を取り戻し、そして、この国の未来を切り開いてまいります。

終わりに、いま一度、戦没者のみ霊に平安を、ご遺族の皆さまにはご多幸を、心よりお祈りし、式辞といたします。

こちらには表面的な「反省」さえ一切ない。「帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも、決して忘れません」に至っては、お前は沖縄戦戦没者の遺骨が混じった土砂を米軍基地建設のための埋め立てに使おうとしているくせに何を白々しい、としか言いようがない。


しかし、こんな恥知らずな為政者の態度も、天皇が代わりに反省っぽい仕草をしてみせることでなんとなく中和され、見過ごされてしまう。何の法的権限もない天皇が何を言ったところでそれが政策として実行されることなどないのだが、「国民統合の象徴」である天皇が反省を口にすることで、「国」が反省し態度を改めるかのように見せられるからだ。先代の明仁が盛んにやっていた「慰霊の旅」とかも同じことである。

こういう便利な使いみちがあるから、この国の権力者は決して天皇制を手放そうとしないのだ。

戦前の絶対主義的天皇制と同じく、戦後の象徴天皇制もまたクソでしかない。

[1] 『天皇陛下「再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願う」…お言葉全文 』 読売新聞オンライン 2021/8/15
[2] 『菅首相の式辞全文 全国戦没者追悼式』 日本経済新聞 2021/8/15

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