8月6日の東京新聞への読者投稿から。
読者投稿といっても、今回の投稿者は『憲兵だった父の残したもの』『永い影』などの著作のある、作家の倉橋綾子さんだ。
戦時中、中国東北部(旧満州)で憲兵をしていた父親が残した、「中国人民に対しなしたる行為は申し訳なくひたすらお詫び申し上げます」という言葉をきっかけに戦争責任問題を問い続けてきた倉橋さんだけに、さすがにその指摘は鋭い。
かつての戦争も、他国から資源や食料を奪う以外に生き残る手段はないと思い込んだ愚かな軍事官僚たちと、責任を放棄した政治家、侵略に伴う利権によって労せずして儲けることしか頭になかった無能な財界によって引き起こされ、際限なく拡大されていった。
日中戦争の泥沼化やノモンハン事件によってその無理が明らかになっても、「無敵皇軍」だの「満州は日本の生命線」といった、自分たち自身が作り出した神話に自ら取り憑かれた彼らに、進路変更はもはやできなかった。
福島第一の過酷事故を目の前にして、まだ原発推進に執着し続ける官僚・政治家・財界は、戦前戦中から一歩も進歩していない。
原発賠償は国民負担か
福島原発の未曽有の事故により、心の休まる時がなくなった。空気、海、水、大地、そして食物までも、生きていくのに必要な最低限のものが汚染されては、いかに科学技術を誇っても、むなしいばかりだ。
緑の故郷を追われた人々、漁に出られない漁師、校庭で運動できない生徒たち、安全な牛肉を出荷できなくなった農家、放射線量を毎日測る母親、どこを向いても苦悩する人だらけだ。この五カ月で積もりに積もった怒りはすさまじい。
それに比べ原発を推進してきた東電や大株主の銀行やら、官僚、原子力村の面々は、この期に及んでも甘い汁を吸い続けようとしている。彼らには、温かい人としての資質はもはやないと思われる。あればまず、自分たちの財産をなげうっって土下座するだろう。
今国会で成立した原子力損害賠償機構法は、結局のところ、国民に負担を押し付けるものだという。そんなばかなことがあるだろうか。まず、会社更生法を適用して、東電自身が責任を負い続けるようにすべきだ。国民から選ばれた国会議員は、東電ではなく苦しんでいる国民の側に立たねば、税金泥棒に等しい。
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