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ガレキ問題の真相(3) 石巻市の例から見る

震災

前回から読む】

 

全部で2300万トンのガレキというが、自治体別に見るとどこにどのくらいあるのか。具体的に見てみよう。

 

社会実情データ図録に、「東日本大震災被災地のがれき量」がグラフ化されて載っている。

 

一見して分かるように、宮城県石巻市の抱えるガレキ量が圧倒的に多い。ここだけで616万トンもある。実に3県合計の3割に迫る量だ。

では、石巻市の抱える膨大なガレキを処理するには、広域処理にすがるしかないのだろうか?

それがどうも違うのである。

 

日経BP「ケンプラッツ」(2011/9/14)

石巻がれき処理は1923億円、1250人の雇用を創出

2011/09/14

 宮城県は9月15日、同県石巻地区の災害廃棄物処理業務の執行案を県議会の定例会に提出する。委託金額は1923億6000万円。議決を受けてから鹿島を代表とする9社のJV(共同企業体)と契約を締結し、同JVは契約の翌日から2014年3月25日まで、地元の住民を雇用しながらがれきなどを最終処分する予定だ。

 

 石巻地区の災害廃棄物処理業務は、石巻市東松島市、女川町の合計685万4000tのがれきと合計200万m3の土砂を最終処分するもの。石巻港雲雀野(ひばりの)地区の約68haの敷地に二次仮置き場を設置。一次仮置き場からがれきなどを搬入して選別し、破砕や焼却などの中間処理を施したうえで最終処分する。

 

 中間処理に用いる焼却炉は、1日当たり300tを処理できるものを雲雀野地区に合計5基、設置。3交代の勤務体制で1日24時間、焼却を続ける計画だ。がれきなどのうち、選別して再利用できるものはリサイクルする。一方、一部は広域処理のために船で県外に搬出する。

 

 業務を進めるに当たっては、地元の住民を1日当たり1250人雇用する。さらに、業務で用いる重機やダンプトラックなどを地元で調達し、従業員に向けて設置する食堂では地元で調達した食材を使う。

 



石巻港雲雀野地区に設ける二次仮置き場の予定地。赤い網を伏せた部分で面積は約68ha。二次仮置き場には5基の焼却炉を設置する(資料:宮城県

 

これは県による石巻市東松島市、女川町まとめての処理事業だが、ガレキの大半は石巻地区内で処理できるようなのだ。それに、この記事にもあるとおり、現地で処理すれば地元業者に仕事も落ちるし、雇用も創出できる。

 

その一方、マスコミでは、広域処理が進まないせいでガレキが減らず、反対運動が復興を妨げているという報道が盛んに繰り返されている。石巻市に関して言えば、次の記事などが典型だろう。

 

河北新報(3/4)

焦点−大震災から1年/見えぬ「出口」復興阻む/がれき広域処理進まず

 

 東日本大震災で発生した災害廃棄物の処理が進まない。処理作業の前提となる、県外の自治体に廃棄物処理の一部を引き受けてもらう広域処理が進まないためだ。国が掲げる完了目標は2014年3月。既に4〜5カ月の遅れが出ており、達成は極めて厳しい状況だ。津波がもたらした未曽有のがれきは復興の歩みに重くのしかかる。

 各地の2次仮置き場も深刻な状況だ。被災自治体で最大の616万トンのがれきを抱える石巻市。市内24カ所の1次仮置き場からがれきを受け入れる同市の2次仮置き場は、本格稼働を前にして既にがれきでいっぱいだ。

 昨年中に約40万トンを県外の処理業者に委ね、空いた敷地に選別・破砕施設を造る予定だったが、全国に広がる放射能不安で計画は早々に頓挫。敷地内で9万袋の土のうにがれきを詰めて移動させ、施設用のスペースをつくる作業が続く。

<まだ5都県>

 岩手、宮城両県で広域処理が必要ながれき量は380万トン(岩手57万トン、宮城323万トン)に上る。受け入れが始まったのは青森、秋田、山形、福島、東京の5都県のみ。宮城県震災廃棄物対策課は「がれき置き場の多くは市町の復興計画で区画整理事業の対象になる。処理が遅れれば復興そのものが進まない。早期の県外搬出が必要だ」と危機感を募らせる。

 村井嘉浩宮城県知事は定例記者会見などで「ただただ、お願いするしかない」と頭を下げつつ「誤解に基づく反対運動が活発で、どの自治体も難しい判断を迫られている。これも風評(被害)と言えるかと思う」と口惜しそうに話した。

2012年03月04日日曜日

 

一見もっともらしいが、616万トンものガレキを抱える石巻市で、そのわずか15分の1でしかない40万トンの県外搬出ができないせいでガレキ処理が進まないというのは、話の辻褄が合わない。処理が進まない原因は別のところにあると見るのが妥当だろう。

実際、「昨年中に約40万トンを県外の処理業者に委ね、空いた敷地に選別・破砕施設を造る予定だったが、全国に広がる放射能不安で計画は早々に頓挫。敷地内で9万袋の土のうにがれきを詰めて移動させ、施設用のスペースをつくる作業が続く」というこの記事の説明は明らかにおかしい。

先ほどの日経BP「ケンプラッツ」記事の写真にあるとおり、2次仮置き場用地はもともと空っぽだったのだ。選別・破砕施設をその中に造る予定だったのなら、最初からその部分を避けてガレキを搬入すればいいだけの話。施設予定地にまでガレキを積み上げてしまった後で搬出だの移動だのというのがそもそも間違っている。

 

さらに、村井宮城県知事も、わずか数日後には違うことを言っている。こちらのほうが本音なのではないか。

時事通信(3/7)

急ぐべきは住居と仕事=村井嘉浩宮城県知事インタビュー−震災・1年

 −1年を振り返り、達成できたこととできなかったことは。

 財源を確保し、規制緩和をしなければ復興できないということを政府の復興会議で繰り返し申し上げた。水産業復興特区をはじめとする規制緩和も認めてもらい、復興への道筋が見えてきた。

 できなかったことを挙げれば切りがないが、急ぐべきは住居と仕事。集団移転や災害公営住宅は動きだしたが、仕事は十分なめどがたっていない。震災が影響で失業、休業した人はピーク時の計11万2000人から5万2000人に減ったが、いまだ吸収しきれていない。

 

 −がれきの広域処理が停滞している。

 県外への受け入れ要請は引き続きやっていくが、予想以上に県内の処理が進んできたため、沿岸部同士でも分散して受け入れる。県外に運ぶよりも経費を抑制でき、放射能汚染を懸念する声も少ないと思う。

(2012/03/07-14:57)

 

そしてこんな記事も。

読売新聞(3/16)

「がれき協力」案可決

酒田市議会 市長、受け入れに前向き

 

 東日本大震災で大量に発生したがれきなどの災害廃棄物処理に関して、酒田市議会は15日、被災地からの受け入れ処理に協力するよう同市と酒田地区広域行政組合に求める決議案を全会一致で可決した。閉会後、阿部寿一市長は報道陣の取材に応じ、「もともと協力する意向は持っていた。今回の決議は、議会から後押しを頂いたものと思っている」と、受け入れに前向きな姿勢を示した。

 決議案の提案に先立って行われた一般質問では、佐藤丈晴市議が、震災で発生したがれき処理について質問。阿部市長はこれまで、親交のある宮城県石巻市多賀城市岩沼市南三陸町に受け入れを非公式に打診したが、直接の要望がなかったことを明らかにしたうえで、「もし、(処理を)お願いしますということであれば、やぶさかではない」などと答えた。

(2012年3月16日  読売新聞)

 

どう見ても広域処理を求めて切羽詰っている状況ではない。

 

マスコミを総動員して繰り広げられている広域処理キャンペーンだが、その中身は矛盾だらけで、調べれば調べるほどボロが次々と出てくる。この広域処理は、被災地の真の必要などではなく、別の意図をもって推進されていると見るのが妥当だ。

 

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