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小林よしのり徹底批判(14)【番外編】なぜ小林を許してはならないか

小林よしのりがリベラル化?

最近、小林はしばしばリベラルっぽい発言を行うようになってきており、この変化を評価する人々もいるようだ。

例えば4月25日の衆院法務委員会でも、共謀罪について参考人(民進党推薦)としてこんなことを述べている[1]。

 わしは権力のない一市民だが、物を言う市民だ。ほとんどは、物を言わない市民。切羽詰まって、何かをしなければという感覚になるとは思っていないから、たとえ監視されても、安全なほうがいいと思っているだろう。だが物を言わない市民が、あるとき、物を言う市民に変わることがある。子どもが被害に遭うとか、切羽詰まれば、物を言わざるを得なくなる。

 物を言う市民をどう守るかは、民主主義の要諦。そういう人たちの言論を萎縮させることがあると、非常に困る。健全ではない。共謀罪の危険なところは、物を言う市民が萎縮して民主主義が健全に成り立たなくなるのではないかということだ。わしは監視されないか危倶している。

確かに、これを見る限り小林の言っていることはまともだ。また、こうした姿勢のせいで、最近ネトウヨからは小林自身が「反日」「サヨク」扱いされているらしい。

しかし、だからといって小林のしてきたことを許すことはできないし、まして共闘などありえない。

小林を許してはならない理由

理由1 小林にはネトウヨの製造物責任がある

その理由はまず第一に、このシリーズ記事の第1回でも述べたとおり、小林にはネトウヨや在特会のような悪質な反動層を生み出した製造物責任があるからだ。

しかも、小林は過去の自分の言動について一切反省していない。たとえばSEALDsの奥田愛基氏との対談でもこんなことを言っている[2]。

――牛田くんが書くところの〝こんなクソみたいな社会〟の根源に、『戦争論』があるのではないかと。ネトウヨだけでなく、安倍総理だったり武藤議員だったりも〝『戦争論』チルドレン〟と言えるのではないかと。それに対して明確に謝罪して欲しいと彼は言っているわけです。

小林 そこまで言い始めたら全体主義になるよ。誰にでも表現の自由や思想の自由はあるんだから。わしは今も『戦争論』の中で描いたことは何ひとつ間違っていないと思っている。それは、全部ひとつずつはっきりと言える。その上で、『戦争論』を描いたことを謝罪するんだとしたら、あの本を絶版回収にしないといけないよ。もう誰も読めないようにしないといけない。そういうことを求めるのが、自分を正義だと信じている人間の恐ろしさだよ。スターリンもそうだし、ポルポトもそう。自分が正義だと信じている人間は、表現の自由を許さなくなるのよ。自分と違う思想の人間を許せない。つまり、百田尚樹や今の安倍政権と一緒なの。

(略)

奥田 いや、僕が代弁するのもおかしいんですけど、牛田が、小林さんの本をいろいろと読んで感じたのは、「『戦争論』を絶版にしろ」とかっていうことよりも、〝愛国〟という言葉が、たとえば武藤議員が主張するような「戦争に行きたくないと言うのは利己的である」みたいな形に定義されてしまった要因が、「ああ、ここから来ているのか」っていうことなんだと思うんですよね。

――『戦争論』を始めとした小林さんの諸作こそが、SEALDsが対峙している現状をつくったテキストだと。

小林 いや、だから……『戦争論』1冊が安倍晋三からネトウヨからありとあらゆるやつらを洗脳してしまったんだって言うのならば、そこまで影響力を持っているということは、わしにとってはある意味で誇らしいことだよ(笑)。ただ、わしがあの本で肯定しているのは自主防衛と自衛戦争だから。そこは変わっていない。

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この指摘が当たっているかどうかは分からないが、どうやら小林には責任を取ろうとする意志はもちろん、反省する能力すらなさそうだ。

理由2 小林は差別者

第二の理由は、小林は差別者であるということ。

最近の例で言えば、昨年末の新千歳空港での騒動に絡めて、あからさまな中国人差別発言を行っている。

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他にも、アイヌ民族の存在否定など、いくらでも出てくる。

とりわけ悪質なのは、貧困層の高齢者を安楽死させろという信じがたい暴言だ[3]。

日本は他国に比べてホームレスが少ない、失業率が低い、それなのに貧困に落ちて、希望なく長生きする高齢者がこれから急激に増えていく。
しかも家族も地域共同体も崩壊しているから、知人に介護してもらえることもなく、孤独に引き籠って、孤独死を待つしかないのだ。

構造改革・規制緩和と延々と言っているが、真っ先に規制緩和すべきは安楽死だろう。
国民としての役割を果たし終えて、若者の迷惑にしかならない老人は安楽死するのが一番いい

しかも小林は、自分自身は決して「安楽死させられる側」にはならないと確信しているからこそこういうことを言うのだ[2]。この冷酷さはいったい何なのか。

小林 (略)とにかく、今は格差がどんどん開いているから。もうわしなんか歳だから、本当のことを言うとこのまま逃げ切れるのね。

奥田 うらやましいです。

小林 裕福に逃げ切れるんですよ、わしは。だけど、若い人が心配なわけですよ。とにかく、若い人が社会問題に関心を持ったほうがいい。いま起こっていることは、全部、自分たちの問題になってくるんだから。もちろん、きみたちのように既に社会問題に目覚めつつある若者もいる。そういう人たちをわしは大人として応援してあげたい。まあ、はっきり言って強者の余裕ですよ。

何度でも言うが、差別者とは絶対に手を組めないし、また組んではならない。

小林が共謀罪に反対するというなら、好きにさせればよい

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小林が共謀罪に反対するというのなら好きにさせればいいし、小林の影響力が利用できる場面があれば利用すればいい。しかし、同調したり信用したりするのは禁物。でないと、小泉純一郎の脱原発発言に引きずられてやったような失敗を繰り返すことになる。
 
[1] 『「共謀罪」法案 参考人5人の意見陳述』 東京新聞 2017.4.26
[2] 『小林よしのり × 奥田愛基 対話』 OHTABOOKS.COM 2015.8.8
[3] 小林よしのり 『下流老人の解決方法』 BLOGOS 2016.5.15

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