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ロシア軍の民間人虐殺は非難し日本軍のそれは擁護する小林よしのりのご都合主義

ロシア・ウクライナ戦争に関して、小林よしのりがまたしょーもないことを書いている。[1]

ロシア軍の非道・残虐さはものすごい。

武器を持たない民間人に、容赦なく発砲しているし、都市が廃墟と化している。

どれだけの人数が虐殺されたか分からない。

(略)

ウクライナ人はすでに1000万人が国外に脱出した。

女子供が大半のようだ。

ロシア兵は侵略した地で、何をやっているか分かったもんじゃない。

ロシア軍の残虐行為は戦争犯罪そのものだし、そもそもウクライナに軍事侵攻したロシアが行っているのは違法な侵略戦争である。

民間人の殺戮など許されないのは当然のことだが、では小林は同じことをしていた中国の日本軍について『戦争論』で何を言っていたか。[2][3]

ともかく民間人と思って油断してたら…

実は兵隊で急襲してくる
という輩に取り囲まれている状況である

あなただったら殺すべき者と殺す必要のない者を的確に見分けながら生き残れますか?

よく「女子供の死体まであった」とかいう証言があるが
女子供が便衣兵なら殺されたって仕方がない

(略)

当時、中国の排日・抗日教育は徹底しており、婦人や子供までが、夜間信号筒をあげて日本軍の所在を知らせたり、老婆が買い物籠の中に手榴弾を秘匿して運搬したり、百姓姿の便衣兵に夜襲されたり…
このため日本軍は思わぬ犠牲を強いられた。

兵と兵が戦うという近代戦の常識が通用しない

戦争を始めてみたら女・子供も戦闘する所だった

これじゃかわいそうだからとやめられるものでもない

(略)

兵は国民の義務を果たすために戦うしかない
ゲリラは殺すしかない

周知のとおり、ウクライナでは民間人に大量の銃器を渡してロシア軍と戦わせているし、女性たちも手製の火炎瓶などを作って戦闘に参加している。農民がトラクターでロシア軍の装甲車を運び去ってしまうなどという、冗談のような場面もあった。

ウクライナで戦う民間人たちは、小林の言う「便衣兵」そのものだ。そして彼らのせいでロシア軍はまさに「思わぬ犠牲を強いられ」ている。

『戦争論』のロジックに従うなら、ロシア軍が結果的に武器を持たない民間人を殺してしまったとしてもそれは自衛のためのやむを得ざる措置で、悪いのは民間人まで戦わせているウクライナのほうだ、という結論になるはずだ。

なぜそう言わないのか。

歴史修正主義者は、こうやって相手によって善悪の基準を平気で変える。こういう者たちを信用してはならない。

[1] 小林よしのり 『『現代戦争論』と「ファクターM」を描かねば!』 ゴー宣ネット道場 2022/3/22
[2] 小林よしのり 『ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』 幻冬舎 1998年 P.121
[3] 同 P.128