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東大卒の市長を「人の税金で」と攻撃する麻生太郎は誰の金で学校に行ったのか

麻生太郎財務相がまたひどい暴言を吐いている。

産経新聞(11/18)

 麻生太郎副総理兼財務相は17日、福岡市長選の応援のために訪れた同市内で街頭演説し、東大卒の北橋健治北九州市長を「人の税金を使って学校に行った」と批判した。(略)

 北橋氏は元民主党衆院議員で、前回2015年の市長選で自民党の推薦を受けて3選したが、麻生氏は対抗馬を模索した経緯がある。(略)

(略)麻生氏は、市の人口が増加しているなどと指摘した上で「一番元気が良くて、住みたくなる町だ」と実績を評価した。さらに「北九州と比べると分かりやすい。人の税金を使って学校に行った。東京大学出たんだろ」と北橋氏を批判。(略)

いつものことだが、今回のこれも、どこから突っ込めばいいか分からないほど支離滅裂な発言だ。

まず、国が教育に税金を使うのは将来への投資であって当たり前の話。むしろ日本の場合、それが少なすぎるのが問題なのだ。そんなことすら分かっていない麻生が財務相などというポストにいること自体、災害みたいなものだ。

しかも、麻生の娘も攻撃対象の北橋氏と同じ東大卒だというのだから、どの口がそれを言うのかと言わざるを得ない。

さらに、安倍政権は消費税増税による増収分を教育無償化にあてるとか言っていたはずだが、果たしてどちらが本音なのか。

いや、そもそも、麻生自身が議員として年間何千万も得ている歳費自体、税金だろうが。


指摘していけばキリがないが、麻生自身の感覚としては、オレは小学校(麻生塾小学校)から大学(学習院大学政経学部)まで一貫して私立に通い、教育を受けるのに税金など使っていない、と言いたいのかもしれない。

だが、(親が)自費で高い教育費を払ったというのなら、その金はどうやって得たのか。

麻生太郎の父親、麻生太賀吉たかきちは九州・筑豊で多数の炭鉱を所有する「麻生鉱業」の経営者だった。戦前戦中の麻生鉱業の労働環境は劣悪で、特に強制連行された朝鮮人坑夫たちにはロクな食事も与えないまま危険かつ過酷な労働を強いた。

当時麻生鉱業赤坂炭鉱で働き、戦後も現地に居住する在日朝鮮人の証言。[1]

 逃亡したりサボって入坑しない者は、一番と二番の交代の時に繰込場の前に正座させられて労務から叩かれた。
 「お母さん、痛いよ」
 と、若い坑夫が叩かれながら叫んどった。
 腕立て伏せさせられて両手で支えているが、途中で疲れてぐったりして腹這いになる。
 「体を上げんか、貴様!」といわれるが、どうしても立てない。すると青竹を割ったものを持って、それを振り下ろすと先端が広がって肉に喰い込んだ。
 木刀で力いっぱい叩くと、骨が折れることもあったが、お前が悪いからだと一方的に片づけられた。ベルトで叩かれると、皮膚が水ぶくれして内出血する。すると医者が来て、注射器で吸い取る。気絶すると水をかけ、納屋に放り込んだよ。(略)
(略)
 わしが働いた赤坂炭鉱で、どれだけ多くの同胞が殺されたのか、三十数年経っても残念ながら実態が掴めない。事故で死んだといわれても、誰が信用するものですか。殺されたと、ぴーんと分かったからね。
 第一、問題なのは、検死に立ち合うのは炭鉱の請願巡査とか坑内係。死亡診断書を書くのは、炭鉱医となれば、そこで何が行なわれるか想像がつきましょうが。
 炭鉱上げての戦時増産体制の中で、保安など問題にされないですよ。鉱山監督局の役人は炭鉱のいうがままで、よほどの大事故でないとやって来ません。法律上は立入検査を義務づけられとりますが、彼らは現場など見たことはないですよ。
(略)
 帰りには炭鉱のクラブか町の料亭で、女つきでご馳走をして、土産まで持たせるからね。四者がグルになると、どんな悪辣なことも出来ました。
 炭鉱では死ぬような重傷者でも、朝鮮人に限って公傷にならないことがあった。本人の不注意だといって、炭鉱側の責任をわしたちに転嫁した。リンチで死んだのと、落盤やその他の事故で死んだのは、遺体を見ただけで一目で分かりますよ。朝鮮から遺族が来ても、火葬にするか土葬にしてしまうと、証拠は完全に消されてしまう。
 その場合、リンチして殺した事実は伏せて、坑内で採炭中に事故死したと説明するんですよ。わしらが知ったら大問題になるから知らせないで、炭鉱の職員に箝口令を布いて秘密にしたからね。
 死亡した現場を見ていないから、さっぱり分からん。不審な点を追及すると、「お前は労務に文句があるのか、ケチをつける気か!」と怒って、殴る蹴るの暴行をした。坑内で即死するのと、昇坑後の死亡者は金額が違いましてね。即死してもわざと数日後に坑外で死んだと始末して、炭鉱は死後までも金をケチりました。

「勤労報国隊」として、麻生下三緒炭鉱で朝鮮人たちと一緒に働いた日本人僧侶の証言。[2]

 昭和十九年になると、朝鮮人でさえあれば誰でも無差別に強制連行して来た。老人であろうと少年であろうと、栄養失調でずい分倒れて死んだものだ。水ばっかり飲んでいるから、体全体がむくれて腫れ上がっていた。(略)

(2) 問答無用

 朝鮮人寮は厳重な監視つきで、寮を出るとそのまま坑内へ追い込まれた。体力があっても脱走することも出来ない。あそこまで圧制されると、脱走をあきらめざるをえなくなるだろう。
(略)
 事故のない日が不思議だった。炭層の高さが一メートルもないところでは、人間が立って採炭することは出来ない。中腰のまま寝掘りすると、三十分もしないうちに腰がしびれてしまう。女工哀史どころではなく、人間の極限状態の労働で、ほんとに炭鉱というところは残酷極りない職場でした。
 朝鮮は日本の植民地だから、どう酷き使って殺そうと問答無用で、炭鉱経営者の意のままだった。(略)炭鉱は、納屋制度時代は納屋頭領の意志一つで坑夫は殺され、戦時中の朝鮮人坑夫は労務係や坑内係の意志一つで殺される。それが別に不思議とは思わない、当り前だとの雰囲気があったからね。
 朝鮮人は強制連行される時、炭鉱とはどんな職場か知らない。全く自分の意志というものが通用しない時代だった。困ったことに彼らは、言葉が通じないことが原因で、暴力的な労務係や坑内係指導員から殴り殺された。
 一日一円二十六銭、これが日給だった。大体、麻生系炭鉱の低賃金は評判で、その上に立って戦時利益を上げた。日本人は自分の国のために戦争をしているし、戦争に勝つためにはどんなことも我慢しなければならないという自覚があるが、朝鮮人は自分の国でない日本のために犠牲になって、生命を賭けてまで働く理由は全くないわけだ。ところが日本人はそこをごっちゃにして、働かないとは何ごとだと圧制した。
(略)
 炭鉱の寮の飯の量は極端に少ない。脱脂大豆を入れるが、それを大量に入れると米の量は少なくてすむ。脱脂大豆を食べるとお腹をこわして、坑内では下痢が散って衛生的には最底だった。血便さえ出ていたので、天井からしたたり落ちる水で坑底は血の海だった。
 三日続けて働くと、お茶碗一杯程度の飯が増杯となる。その一杯を羨ましそうに眺める、朝鮮人の目を忘れることが出来ない。体の弱い者、病気の者、その人たちはその一杯にどうしてもありつけないからだ。(略)二口三口食べると、もう終わってしまう。それも一つの技術だろうが、人数が四、五百人になると毎日大変な量を浮かしたことになる。その分だけ舎監や労務がピンはねして、横流して闇に売って自腹を肥やしたからね。残った飯を彼らはたらふく食って、弁当箱に詰めて家に持って帰るから始末が悪い。それを自慢して人に話すから情けなかった。それを知っていた朝鮮人たちは、どれほど悲しい思いをしたことであろうか。
(略)
 炭鉱資本は戦争になると、笑いが止まらないほど儲けるものだ。勤労奉仕はただ同然、朝鮮人は安い労働賃金、たとえ坑内事故で死んでも四、五百円の僅かな弔慰金を渡すだけだった。人間一人の生命の値段ではない。
 私は二カ月間の坑内経験だが、人生の半分にも相当するものを経験した。
 朝鮮人たちは、日本人から鞭をもらいながら、暗闇の労働に追い込まれ死んで行った。彼らは炭鉱の中で、一番危険な場所で働かされたのだ。
 採炭という慣れない仕事、言葉が分からないことから来る坑内係とのトラブル、殴られて殺されてもその実態さえ掴めない。寮と寮が分断されているので、何人殺されたかも分からない。(略)寮の中で突然姿を消すので、事故死したのかそれとも逃亡したのか、おたがいに話すことも禁止された奴隷工場と同じだった。
 ノルマが達成出来ないと、どうかしたら三日間昇坑させないことがあった。昇坑して来ると、みんなはもう人間の姿をしてなかった。一組六人のチームで採炭している時、病人が二人いると能率はぐっと落ちる。すべて全体の責任となるからどうしようもない。
 病気と疲労でどんどん死んで行っても、一人死ねば一人朝鮮から強制連行してくればいいと、彼らは戦時消耗品に過ぎなかった。

敗戦時点で5歳だった麻生太郎の教育費は、絞り取られた朝鮮人坑夫たちの血と脂で賄われたと言ってもいい。

麻生鉱業の朝鮮人坑夫たち(画像出典:[3])


韓国では、現在約70社の日本企業を対象とした15件の徴用工訴訟が起こされており、被告企業には麻生鉱業の後身にあたる麻生セメントも含まれているという。これは当然だろう。

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戦後の「財閥解体」が中途半端だったことが諸悪の根源となっている。麻生のような戦争成金・財閥企業は徹底的に潰しておくべきだったのだ。そうしていれば、麻生太郎という傲慢なだけの無能が首相や閣僚となって現代のこの国に害悪を撒き散らすこともなかったはずだ。


[1] 林えいだい 『消された朝鮮人強制連行の記録』 明石書店 1989年 P.381-383
[2] 同 P.421-423
[3] 同 口絵

 

 

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

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消された朝鮮人強制連行の記録―関釜連絡船と火床の坑夫たち

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