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自ら『主戦場』を宣伝してくれる右派出演者たち

■ 映画『主戦場』の衝撃

日本軍性奴隷(いわゆる「従軍慰安婦」)問題を扱ったミキ・デザキ監督の『主戦場』が、ドキュメンタリー映画としては異例の大ヒットとなっている。

何も知らない日系米国人の若造など丸め込むのは簡単だと見くびった右派の「論客」たちが嬉々として言いたい放題しゃべりまくり、ついで彼らの主張が何の根拠もないデタラメであることが一つひとつ暴かれていくのだから何とも衝撃的だ。

いま、日本の中学教科書には、右派から集中攻撃を受けた学び舎のものを除いて、日本軍性奴隷問題は一切書かれていない。このため若い人たちの大半はこの問題自体を知らないか、知っていてもマスコミやネットからの影響で間違った認識を持っている。

しかしこの映画は、監督自身が対立する両派の主張を聞きながら真相に近づいていくという構成をとることで、そうした人々の心にも届く力を持っている。それがこの映画の凄いところだ。

■ 提訴で始まる第二幕

映画が公開されて初めて自分たちが何をやらかしたか気付いた右派は、上映差し止めと損害賠償を求める訴訟を起こした。

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旧日本軍の慰安婦問題を取り上げたドキュメンタリー映画「主戦場」について、修士論文に使うためと言われ取材を受けた内容が、商業映画に使われたのは不当などとして、ケント・ギルバート氏(米国弁護士・タレント)ら5人が映画の上映差し止めと計1300万円の損害賠償を求める訴えを6月19日、東京地裁に起こした。

原告はほかにトニー・マラーノ氏(注:テキサス親父)、藤岡信勝氏、藤木俊一氏、山本優美子氏。これ以前に、抗議する共同声明に名を連ねていた加瀬英明氏と櫻井よしこ氏は原告にならなかった。

一方の被告は、同作の監督をつとめた日系アメリカ人のミキ・デザキ氏と配給会社。

●「極右」などレッテル貼られた

訴状によると、原告は、原告へのインタビューを学術研究と卒業制作のために使う旨の合意があったのに、デザキ氏はそれに違反し、商業映画として映画を一般公開したと指摘。承諾なしで配給されており、原告が有する著作権や肖像権を侵害しているなどと主張している。

そのうえで、映画の冒頭で、原告らは「歴史修正主義者」「極右」「性差別主義者」などのレッテルを貼られ、いわれなき誹謗中傷を受けたとし、「修復不可能なほどに名誉を毀損された。原告らは執筆・言論・教育活動などをしており、今後の活動への悪影響は計り知れない」とした。

しかし、この映画は彼らが言ってもいないことを捏造したり、発言内容を歪曲したりはしていない。十分な長さのインタビュー映像をそのまま使っているのだから、文脈を無視した発言の切り取りにも当たらない。これが誹謗中傷だと言うのなら、まともな倫理感を持った人に聞かれたら軽蔑されるような愚かな発言を彼らがしているというだけのことだろう。

また、映画の公開に関しても、デザキ氏は記者会見で出演者と交わした承諾書と合意書を示し、彼らが一般公開される可能性を知っていたと反論している。それどころか、ケント・ギルバートなど劇場公開前にツイッターで宣伝までしている。(このツイートについた数多くのリプライが笑える。)

どう考えても、この訴訟で原告に勝ち目はない。しかも、こうして訴訟になったことで『主戦場』はさらに話題を集め、ますます多くの人が観に行くことになるだろう。

では、どうして原告らはこんな訴訟を起こしたのか。多分、これだけのヘマをやらかした上、訴訟も起こさず「やられっぱなし」に甘んじていたら、「業界」に居場所がなくなってしまうからではないだろうか。あくまで自分たちの「顧客層」向けに、強がって見せるためだけの訴訟なのだ。

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