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必見のNHK「チェルノブイリ」ドキュメンタリー(その2)

 

NHKドキュメンタリーの第2弾は、チェルノブイリ事故から20年後の2006年に放映された『汚された大地で チェルノブイリ20年後の真実』

 

チェルノブイリ原発事故 終わりなき人体汚染』から10年後、事態はどのように変わったのか。

 

事故から20年という時間経過から当然予想されるとおり、リクビダートルとして働いた人々にはガンが多発している。ガンだけでなく、心臓病などで死ぬ人もいて、いまや彼らは続々と死んでいきつつある。

リクビダートルとその家族4万人が住んでいたある団地では、ここ数年のうちに住民が2万人にまで減ってしまった。 「みんな50歳までもたないんです」と住民は言う。

ウクライナでの調査によれば、リクビダートルのガンによる死亡率は、2000年時点で既に一般人の3倍に達していた。(資金不足のため調査は2000年で打ち切り。)調査を行ったウクライナ放射線医科学研究所では、ガンによる死亡率はその後さらに上昇している、と考えている。

 

長期間の低線量被曝の影響についても、恐るべき実態が明らかにされていく。

チェルノブイリから400kmも離れたベラルーシのブレスト州では、まず事故後の10年間で小児の甲状腺ガンがおよそ100倍にまで急増。こちらはその後減少し、現在(20年後)ではほとんど見られなくなった代わりに、数年前から大人の甲状腺ガンが増えている。

また、白血病も増えている。ゴメリ(チェルノブイリから130km)にある被曝者専門病院では、白血病患者用のベッド数を2倍に増やしたが、空きのない状態が続いている。事故当時16歳だったある男性は、比較的セシウム汚染度の低い地域(居住制限なし)で暮らしていたのに、昨年急性白血病と診断され、その後急速に悪化、今は危険な状態に陥っている。

これもまた予想されたとおり、遺伝的影響も現れ始めている。

ベラルーシの低線量被曝住民の血液細胞の染色体から、一部の染色体がちぎれて別の染色体にくっついている例が見つかっている。これが生殖細胞で起これば、子どもに先天的障害が生じる恐れがある。実際、汚染の続くゴメリでは、子どもに染色体異常の見つかる頻度は汚染のほどんどないミンスクの10倍に達している。ベラルーシ全体で、先天的な病気を持つ子どもの数は、事故後およそ2倍に増えた。

 

しかし、このドキュメンタリーを見ていて一番恐ろしいのは、こうした、ある意味予想されたとおりに進行しつつある被害実態そのものではない。その被害を隠蔽し、原発事故の危険度を矮小化しようとする陰湿な策謀のほうだ。

 

IAEA国際原子力機関)は、番組放映の前年(2005年)、チェルノブイリ事故の被害規模を極度に矮小化した報告書を公表した。

なんと、被曝によるリクビダートルの死者はたったの50名だという。

現場で当事者の状態を見ていれば到底考えられない数字である。

大人の甲状腺ガンの増加は、検査技術の向上で発見が増えているからだという。

バカじゃないのか。検査技術の向上は発見の時期を早めるだけだ。見つからずに放置されればガンは進行し、やがて発病する。発病してしまえばやはり甲状腺ガンとしてカウントされるのだから同じことだ。

白血病については「この程度の被曝白血病が増加している証拠を掴むのは到底無理」。遺伝的影響については、「発見と報告の制度が整備されたことで、先天的異常の子どもの登録数が増えた」のだという。

 

あまりにひどい内容に各国の専門家から抗議を受けたIAEAは、それでも小手先の僅かな修正しかしていない。「原子力産業への根深い不信」を憂慮するIAEAは、所詮業界の代弁者でしかないのだ。

 

同じように御用学者を使って事実を隠蔽し、事態をひたすら矮小化しようとする策謀は、いままさにこの国でも推し進められている。その結果誰が切り捨てられ、命や健康を奪われた上に補償すらされない状態に落とされるのかは、チェルノブイリのその後が教えてくれている。







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