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消費税増税の前にすべきこと?

 

1月20日の東京新聞夕刊に「消費税増税の前にすべきこと」と題した、松原隆一郎氏(東京大学教授・社会経済学)の文章が載っている。

全体としては、財源がない、民主党マニフェストはバラ撒きだから撤回せよ、というだけの内容で、

 財政の累積赤字の解消が国際公約となっていることもあるし、社会保障の改革が今後の日本にとって重要であることについては筆者も異論がない。消費税増税は景気への影響が大きいのでタイミングの問題があるが、それも置いておこう。

と、いわゆる「財政赤字」の実態への考察も、不況下での消費税増税がこの社会に何をもたらすかへの危機感もない空疎な論評なのだが、とりわけひどいのがバラ撒き批判の例の出し方である。

 筆者の知人に年収数億円で子ども手当を何万円かもらっている人がいるが、世界全体で金融危機が懸念されている現在、財政赤字を覚悟しながら所得制限もなく子ども手当を支給することの意味はどこにあるのだろうか。

厳しい所得制限でもつけた上で子ども手当を支給すればいいのか?

財政支出の無駄を削ったつもりになって気分良くなりたい人にとってはそれが望ましいのだろうが、世帯収入を精査して受給対象者を振り分けるためのシステムの構築と運営にどれだけのコストがかかるか、計算した上で言っているのだろうか。面倒なルールにすればするほど運営に要する組織は膨れ上がり、システムも複雑化し、ミスも増える。あの年金機構の二の舞になるのは目に見えているではないか。

喜ぶのは権限と天下り先が増える官僚だけである。

 

子ども手当の財源がないなら、氏の知人のように子ども手当などいらない高額所得者に財源を負担してもらえばいいのだ。これなら所得税の累進税率を見直すだけで済む。金融所得の分離課税をやめて全所得に対して課税するようにすればもっと良い。どうせ大部分が退蔵されるだけの大金持ちの所得に対して増税すれば、消費税増税とは反対に経済へのインパクトを最小化しつつ確実に税収を増やすことができる。

この程度のことさえ分からない人物でも勤まるのだから、東大教授というのはなんとも楽な仕事だ。