はすみ本の「私の帰化した理由」(P.20-21)には、さらりとすごいことが書いてある。
帰化一世でも国政に立候補
日本を内側から変えられる
祖国に貢献できる
(略)
これは安易に帰化することができ、帰化一世でも国政に参加できるシステムを持つ日本の危うさを指摘した作品である。敵国の工作員だって帰化さえすれば、国会議員になったり総理大臣になったりできるシステムは、世界中見渡してみても日本くらいなものだ。これを放置してきた政府の怠慢には慣りを感じるし、現与党には是非早急に改善して頂きたい事柄である。
なんと、日本以外の国では、たとえ国籍を取得しても、その当人には国政選挙に立候補する権利がない(立候補できるのは次の代から)というのだ。
本当ならば衝撃の事実だが、それでは、この人の存在はどう説明するのだろうか。
メイジー・ケイコ・ヒロノ(Mazie Keiko Hirono, 広野慶子)という日系アメリカ人女性がいる。この人は1947年に日本の福島県で生まれ、母親とともにハワイに移住、1959年にアメリカ市民権(国籍)を取得した「帰化」一世である。その後、ハワイ州下院議員、ハワイ州副知事、連邦下院議員を歴任し、2013年1月からは連邦上院議員となっている。アメリカ史上初のアジア系女性上院議員である。(彼女が上院議員に立候補したときの報道記事をここで読むことができる。)
アメリカでも、「帰化さえすれば」国会議員になれているではないか。
考えてみればこれは当たり前のことだ。ある国の国籍を取得したら、その日からその人はその国の国民となったのだから、もとからの国民と同等の権利(参政権も含め)を持つことになるのが当然だろう。この点に関して、日本は少しも特別な国ではないのである。
よくもまあこんなすぐバレる嘘を平気でつくものだ。
しかし、嘆かわしいことに、この嘘はネット上では広く流布しているらしい。どうやら、アメリカでは市民権を取得しても大統領にだけはなれない(アメリカ生まれであるか、または両親がアメリカ市民であることが必要)という事実から妄想を膨らませた結果のようだ。典型的な「ネットde真実」である。
ちなみに、「帰化」すれば総理大臣になることも可能な日本はアメリカより在日のような存在に甘いのかと言えば、そんなことはない。
アメリカは(他の多くの国も)国籍に関して生地主義をとっており、アメリカ国内で生まれた者は自動的に市民権を付与される。仮に在日コリアンが「在日」ではなく「在米」していたら、一世がやってきてから70年以上も経った今ごろは、ほぼ全員がアメリカ市民権を持っているはずである。「帰化」などするまでもなく、大統領にだってなれるわけだ。

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