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蓮舫の「台湾籍」にはそもそも何の問題もなかった

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前回記事と一部重複するが、新たな情報も入手できたので改めて整理し直してみる。

■ 重国籍者が国会議員になることには何の問題もない

公職選挙法上は、国会議員になるには日本国籍さえあればよく、他の国籍を持っているかどうかは関係ない。これは条文がそうだというだけでなく、国籍法が父系主義から父母両系主義に改正される際の国会審議において、重国籍者が国会議員や総理大臣になっても問題はないと、政府側から明確に説明されている。[1]

○飯田忠雄君 それでは、現在の我が国の国情から言いまして二重国籍者、これは前は外国人、まあ前は外国人じゃないとしても現在同時に外国人である、そういう人ですね。日本人であると同時に外国人であるという場合に、旧国籍法で心配されたようなことがないと言い得るかどうか、大変疑問が存在すると思いますが、この点についてはいかがお考えですか。これは法務省にお尋ねします。
○政府委員(枇杷田泰助君) (略)二重国籍がふえることになるであろうというふうな予想をしておりますこのたびの改正法におきましても、このような規定を設けることをしておらないわけでございます。それは旧国籍法のようなそういう危惧の念というものをこれは持つ必要はないだろう、殊に非常に民主主義というものが強く打ち出されました新憲法下におきましては、そのようなもし他国籍もあわせ持つ者とか、あるいはかつて外国人であった方であっても、これは要するに国民の意思、そういうようなものによって重要な国権の作用を果たす者が選ばれていくということでありますから、そういうところで実質的にチェックできるであろうというふうなことも考慮されているところだと思いますが、現在ではそういうような危惧を法律上とる必要はないという立場にあるものと考えております。
(略)
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かに国の重要な地位に立つということは、国の将来をも決めるようなそういう意思決定をする立場にあるわけでございますので、したがいまして、日本の国というものを考え、そして日本の国民全体が連帯意識を持つ、そういうような考え方の強い方が望ましいことは当然だろうと思います。それを二重国籍者であるからといって、当然にそういう考え方がないだろうというふうに一つのパターンを決めて法律上制限をするということまでは必要ないだろう、それは日本国籍を持っておられる方であっても、場合によっては今申し上げましたような点においては十分でないという方もおられるかもしれません。ですから、それは個々の方の問題であって、法律的に一つのパターンを決めて、そしてある資格を奪うというふうなことはいかがなものであろうかというのが現行法の考え方でございます。
○飯田忠雄君 二重国籍者は日本の国籍の選択宣言をすることになりますね。そういう選択宣言をしないで二重国籍のままでおるという場合、外国の国籍を離脱する手続をとらないような人、こういう人について今度の国籍法はどうなっておりますか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 御承知のとおり、今度の改正法におきましては選択の宣言をした人は外国の方の国籍の離脱に努めなければならないと規定いたしておりますが、しかし外国の国籍の方を離脱できるかどうかはこれは当該外国の国籍法の規定によって左右されるわけでございます。そういうことでございますので、離脱しなければそれによって直ちに日本の国籍の方を喪失させるとかというような効力を認めるということは適当ではございません。したがいまして、御本人の努力と、それから各国の法制とによってなるべく外国の国籍を早期に離脱するようにということを期待するということにとどめております。それ以上のことは酷なことにもなりますので、改正法におきましても要求はしておらないところでございます。
(略)
○説明員(浅野大三郎君) (略)一方で二重国籍の者を排除するという規定もございませんから、日本国籍のほか他の国の国籍を有する二重国籍者が国会議員となるということも現行法上可能ということになっております。
 お尋ねは、一体それで政治上障害が起こらないという合理的理由があるかどうかということでございますが、大変難しい問題でございます。ただ、私どもといたしましては、これまでのところそういう二重国籍者が選挙権を行使する、あるいは選挙によって選ばれる、公職についたことにょりまして何らかの障害が生じたという事例は承知しておらないところでございます。

ちなみに、このときの審議で盛んに重国籍者が国会議員となることを問題視している飯田忠雄参院議員(公明党)が自らの主張の根拠としてあげているのがゾルゲ事件なのだが、

○飯田忠雄君 これは戦前の話ですが、ゾルゲ事件というのが起こりました。このゾルゲという方は戦争が終わりましてからスターリンが国家の英雄と褒めたたえた人です。このゾルゲ、この人はドイツ国籍、これは裁判の判決文によりますとドイツ国籍を持っておったと書いてある。そしてこの人はドイツ大使に非常に取り入りまして、そしてドイツ大使館には自由に入ることができたといいますが、実際はコミンテルンのスパイであったわけですね。これは判決文に書いてある。(略)
 この方の任務は日本政府の方針が北進論であるか南進論であるかを見極めること、つまりソビエトを攻める意思があるかどうかを見極めること、それからもう一つは日本政府をして南に向かわせること、北進論を放棄して南進論をとらせること、こういう任務を持ってやっておられましたね。これも判決録に書いてある。そのために尾崎秀実という日本人の方ですが、これは満鉄の調査員だったと書いてありますが、この人が非常に頭がよくて立派なのでそれと仲よくいたしまして、その方を近衛総理の参与に推薦したんですね。近衛総理の参与になった。そして参与ですからこれは非常に内閣に信任があります。総理大臣も信任して何でもしゃべる、総理大臣が。それをゾルゲに伝え、ゾルゲは通信員にそれを与えてスターリンに伝える、こういうことをやっておったのですね。(略)

ゾルゲはドイツ国籍、尾崎秀実は日本国籍、どちらも重国籍者でもなければ国会議員でもない。この飯田議員の立論自体、国政から重国籍者を排除しようとする者たちの主張が、実は民族純血主義に基く排外的偏見に過ぎないことを暴露してしまっている。

戦後の現実を見ても、最大のスパイはアメリカと裏取引して戦犯裁判を逃れ、代価として日本ではなくアメリカの利益のために奉仕し続けた岸信介だろう。その岸はといえば、もちろん「真性純血の日本人」である。

■ 日本政府は「国籍唯一の原則」を事実上放棄している

国籍法が重国籍者に対して国籍選択と(日本国籍を選択した場合の)外国籍からの離脱を求めているのは事実だが、それが時代に合わない「国籍唯一の原則」への執着の結果に過ぎず、もはやそんな「原則」を維持し得ないことは、日本政府にも分かっているはずだ。その証拠に、国籍選択を行わない者に選択を求める「催告」を、法務省は蓮舫に対してはもちろん、誰に対しても一度も行っていない[2]。

奥田 本来、国籍選択は22歳までに行うことが定められており、その期間を過ぎた場合は国側が催告をすることが可能となっています。しかし、すでに国会で法務省民事局長が何度も答弁している通り、これまで法務省が二重国籍と疑われる人たちに対して正式な催告を行ったことは一度もないんです。それにもかかわらず、蓮舫氏に対してだけは、曖昧な行政指導という形で行った。これは不公平ですよね。

二重国籍と疑われる人は国内に大勢いらっしゃると思われますが、その一人一人に対して外国国籍の有無を証明しろと求めることはできません。あくまで国側が一人一人確認するしかないわけです。しかし、そんなことは不可能ですよね。できないからこそ催告していないわけですから、この制度にはもともと致命的な欠陥があると言えます。

※ 奥田安弘氏(中央大学法科大学院教授)

国籍法第14条とその関連条文はすでに死文化しており、運用できないことが明白である以上、本来とっくに改正されているべきものなのだ。

■ 説明責任があるのは蓮舫ではなく法務省

以上はあくまで蓮舫が台湾との重国籍者だった場合の話だが、この前提自体が怪しい、というか、ほぼ確実に間違っている。

まず、蓮舫のケースについて質問しに行った八幡氏に対して法務省は、「中国と台湾どちらの法律が適用されるかどうかということについては、法務省としては判断を下す立場ににない」などと答えた[3]そうだが、この説明は台湾人の子の国籍決定に中華人民共和国の国籍法を適用してきた事実[4]と矛盾する。

 蓮舫氏を犯罪者扱いする向きもあるが、小田川綾音弁護士は「国籍選択を怠ったとしても罪とはいえない」と指摘した上で、「そもそも蓮舫氏は二重国籍だったのか」と疑問を呈す。
 金田勝年法相は記者会見で、蓮舫氏が国籍法に違反していたかを問われ、一般論と前置きしながらも「国籍法上の義務に違反していた」との見解を示した。だが、小田川氏は「蓮舫氏ばかりが説明責任を問われているが、ぶれているのは法務省」と断じる。
 「日本政府は台湾を未承認政府と位置付け、中国を唯一の政府とする立場。そうであれば、蓮舫氏は中国籍となるはずで、日本国籍を取得した時点で中国の国籍法により、自動的に中国国籍は喪失する。台湾人女性から生まれた子どもの国籍決定に中国の国籍法を適用したと法務省職員が解説した事例が複数あり、法務省の説明はちぐはくだ」

実際、日本が中華人民共和国を唯一の正当な中国政府としている以上、蓮舫についてもそちらの国籍法を適用しない限り、どうやっても矛盾が生じるのだ。[2]

荻上 蓮舫氏は7月18日、戸籍自体を開示するのではなく、台湾籍を離脱していることの証明をすると言っていますが、これはどういった形での証明になると思われますか。

奥田 おそらく、台湾政府から出た「国籍喪失許可証」を見せるだけになるのでしょう。蓮舫氏は昨年9月、この国籍喪失許可証を獲得したと表明していますね。日本の戸籍法では、この証明書とともに「外国国籍喪失届」というものを日本の戸籍に届け出ることで、外国の国籍を離脱したことが戸籍に記載されることになっています。今回、蓮舫氏はこの外国国籍喪失届を法務省に提出しました。しかし、法務省はこれを「不受理」としているのです。
(略)
そこで、仮に二重国籍だったのであれば、「外国籍を失ったことを確認しました」という形で受理するはずです。それを不受理にしたということは、つまり日本政府の立場からして「台湾の国籍法による国籍喪失許可は認めないので、そもそも中国国籍を離脱したことにはならない」という意味になるはずです。不受理になったわけですから、当然、蓮舫氏の戸籍謄本には「中国の国籍を喪失した」というような記載がなされることはありません。

荻上 つまり、仮に蓮舫氏が中国の国籍を持っていたとしても、日本政府の公式な立場からすると「中華人民共和国の法律を適用するので、台湾の国籍なるものは認めていない。よって、二重国籍ではないので何も手続きは必要ないですよ」という意味で外国国籍喪失届を不受理とした、というのが本来あるべき対応である、と。

奥田 その通りです。ところが蓮舫氏によると、法務省は「日本国籍の『国籍選択届』を提出しろ」と行政指導をしたそうです。国籍選択届を求めるということは、蓮舫氏が「二重国籍である」と認めたことになり、政府の立場からして非常に矛盾しています。それも、書面による催告ではなく「行政指導」という非公式な形で求めています。
(略)
【以下、番組放送後の動向についての奥田氏による補足】
(略)
蓮舫氏の国籍会見

7月18日、蓮舫氏は「二重国籍」の状態を解消したことを証明するため、会見を開き、戸籍謄本の一部などの資料を公表しました。私は、当日会見に出席した知り合いの記者から資料をもらいました。とくに注目するのは、外国国籍喪失届の不受理証明書、国籍選択の宣言日が記載された戸籍、法務省の非公式文書の三点です。

この非公式文書は、「法務省民事局民事第一課」が作成し、蓮舫氏側からの質問に答えるという形をとっています。先に私は、重要案件については、法務省が専門誌に公表していると述べましたが、それとは大きく異なります。普通は、市町村から法務局を経由して、届け出の受理に関する照会があり、それに対し民事局第一課長名で日付を明記した「回答」がなされ、そのうち重要なものが公表されます。しかし、この文書は、課長名ではなく、日付もなく、法務局からの照会に対する回答ではありません。まさに「怪文書」と言うしかありません。

この文書によれば、まず台湾当局が発行した国籍喪失許可証は、戸籍法106条2項にいう「外国の国籍の喪失を証すべき書面」に該当しないから、外国国籍喪失届を受理しないというだけであり、その理由を述べていません。しかし、前述の記者が昨年秋に法務省を取材したところ、「台湾は未承認だから」というのがその理由だそうです。

つぎに、この非公式文書は、台湾出身者については、国籍法14条2項の国籍選択宣言の手続きにより日本国籍を選択することになると述べています。これも理由が書かれていません。ただ、記者に対する会見前の党幹部による事前説明では「法務省によれば、台湾籍を保持している人は、日本の法律上は中華人民共和国の国民として扱われると法務省から説明された」という話があった、とのことです。それなら、台湾人が中国国籍を有するかどうかは、中華人民共和国の国籍法によるべきであり、蓮舫氏は、1985年に届け出により日本国籍を取得した結果、中国国籍を失っているので、国籍法14条1項にいう「外国の国籍を有する日本国民」には該当しないはずです。つまり説明が矛盾しています。

さらに非公式文書によれば、台湾当局から国籍喪失許可証の発行を受けることは、国籍法16条1項の外国国籍離脱の努力義務の履行に当たるとも述べており、疑問は深まるばかりです。これは、国籍選択宣言に対する疑問と同じく、蓮舫氏が中国国籍を自動的に失っているからというだけでなく、努力義務について、具体的なアクションを求めているということでもあります。また、台湾当局の国籍喪失許可証を日本側では受け取れないと言っておきながら、それが日本の国籍法上の努力義務の履行に当たるというのも、法律論として疑問を感じます。

外国国籍喪失届の不受理証明書をみると、喪失した外国籍として「中国」と書かれた届け出を不受理にしたことになっています。台湾が未承認であるから、その国籍法による国籍喪失を認めないということですから、それなら中国国籍の有無は、どの政府の国籍法により判断したのでしょうか。

国籍選択の宣言日が記載された戸籍は、国籍選択届が受理されたことを示しています。しかし、日本が承認した中華人民共和国政府の国籍法によれば、蓮舫氏は、国籍法14条1項にいう「外国の国籍を有する日本国民」に該当しないので、国籍選択届は、本来「不受理」とすべきです。それを受理したということは、違法な行政処分の可能性があります。

いずれにせよ、台湾が未承認だからといって、外国国籍喪失届を不受理としておきながら、その未承認の台湾の国籍法を適用した場合にしか認められない国籍選択届を受理したことは、どのように説明がつくのか、それを明らかにする責任は法務省にあります。

蓮舫はそもそも重国籍などではなかったはずであり、最初から法務省がそう認めていれば何も問題はなかったのだ。それを、自身の法運用とも矛盾する曖昧な態度でごまかし続けた結果、こんな大騒動になった。この騒動の責任を負うべきは蓮舫ではなく法務省だ。

[1] 参議院法務委員会(1984/8/2)議事録
[2] 奥田安弘×萩上チキ 『蓮舫氏の「二重国籍」問題なし。説明責任は法務省にあり』 SYNODOS 2017/7/21
[3] 八幡和郎 『蓮舫二重国籍についての法務省見解はこうだ(増補あり)』 アゴラ 2016/9/15
[4] こちら特報部 『二重国籍 何が問題?「国益損なう事例見当たらぬ」』 東京新聞 2017/7/20

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