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蓮舫が戸籍の開示などしてはならないこれだけの理由

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蓮舫民進党代表の「二重国籍疑惑」が、また騒がれている。特に問題なのは、先日の東京都議選での敗北にからめて、問題解決のために戸籍を開示しろなどという要求が、民進党内部から出てきていることだ。

都議選での民進党の敗北に蓮舫はじめ党執行部の責任が大きいのは確かだが、それは自民党に対抗する明確な政策軸を示せず、反安倍票の受け皿となれなかったからで、「二重国籍疑惑」のせいなどではない。だいたい、国会議員としての蓮舫の資格に、何の問題があるというのか。

■ 法的には何の問題もない

まず、公職選挙法では、日本国籍を有し、かつ年齢条件を満たしている者には、犯罪による欠格条項に抵触していない限り、被選挙権がある。日本以外の国籍の有無など関係ない。

(被選挙権)
第十条 日本国民は、左の各号の区分に従い、それぞれ当該議員又は長の被選挙権を有する。
 一 衆議院議員については年齢満二十五年以上の者
 二 参議院議員については、年齢満三十年以上の者
(略)
2 前項各号の年齢は、選挙の期日により算定する。

(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第十一条 次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
 一 削除
 二 禁錮以上の刑に処せられその執行を終るまでの者
 三 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
 四 公職にある間に犯した刑法(略)又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(略)により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
 五 法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者
(略)

(被選挙権を有しない者)
第十一条の二 公職にある間に犯した前条第一項第四号に規定する罪により刑に処せられ、その執行を終わり又はその執行の免除を受けた者でその執行を終わり又はその執行の免除を受けた日から五年を経過したものは、当該五年を経過した日から五年間、被選挙権を有しない。

蓮舫は参議院議員選挙に立候補した時点で戸籍も含め選管による適格性審査を受けており、議員となることに法的問題がないことは既に明らかになっている。今さら戸籍を開示したところで何の意味もない。


では国籍法の方の問題か?

(国籍の選択)
第14条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が20歳に達する以前であるときは22歳に達するまでに、その時が20歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣誓(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

第15条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第1項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。
(略)
3 前2項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から1月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつてその期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合において、その選択をすることができるに至つた時から2週間以内にこれをしたときは、この限りでない。

第16条 選択の宣誓をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない
(略)

国籍法では、重国籍の日本国民には、外国の国籍からの離脱に努める義務があるとされている。しかしこれはあくまで努力義務であって、離脱できなければ違法という性質のものではない。考えてみればこれは当たり前の話で、ある国の国籍からの離脱を認めるかどうかは当該国の専権事項であって、日本側からどうこうできることではないからだ。離脱しなければ違法だというのなら、相手国が国籍離脱を認めない場合、日本国籍を選択したその国との重国籍者は全員違法となってしまう。

もともと、血統主義である上に重国籍を認めようとしない日本の国籍法が、グローバル化する世界情勢にも、人権上の要請にも合っていない時代遅れの代物なのだ。そのことはもはや日本側も認めざるを得なくなっている[1]。

(2)国籍唯一の原則の実効性

 国籍唯一の原則の実効性については、父母両系主義の採用により、事実上国籍唯一の原則を放棄せざるを得ない状況になっており、国籍選択制度を導入しても重国籍を完全に解消することはできないと有識者から次のように指摘されている 。
 個人に他国の国籍を離脱するよう強制しても、相手方の国籍法がそれを認めない場合は法律的に効果を持たず、事実上重国籍を放置せざるを得ない結果になる。
 国際法上、国籍唯一の原則が重要であるならば、国際立法や条約によって解決すべきであり、それが整っていない状況においては、1国家で解決できることは、重国籍者が自己の国籍を離脱したい場合には寛大に認め、そうでない場合には、重国籍を放置しておくしかないのが現状である。
(略)
 なお、重国籍の容認を求める内容の請願が、171回国会に参議院に出されている。
 まず、「成人の重国籍容認に関する請願」は、海外で暮らす日本人は年々増加しているが、滞在が長期になると、その国の国籍を取得せざるを得ない状況が生まれるが、外国籍を取得すると、現行国籍法の下では日本国籍を失ってしまうとし、1997年の「ヨーロッパ国籍条約」の採択を踏まえ、海外に暮らす成人の重国籍を認めることを求めている。
 また、「重国籍容認に関する請願」は、海外で生活する日本人、日本で生活する外国人、重国籍を持つ子どもは、日本が成人の重国籍を原則的に認めないことから、様々な問題に直面している。日本が準拠している国籍唯一の原則は、欧州において既に修正されているとし、国内に住む外国人への重国籍を容認すること、国外に住む日本人への重国籍を容認すること、重国籍を持つ子どもに成人後もそれを容認することを求めている。

■ そもそも蓮舫の「台湾籍」は「解決」しなければならないような問題なのか?

蓮舫は1967年、台湾人の父と日本人の母との間に東京で生まれたが、当時の国籍法が父系主義だったため母の日本国籍を継承できず、台湾籍となった。1985年、国籍法が父母両系主義に改正されると、改正法施行前に日本人の母から生まれた20歳未満の子は届け出によって日本国籍を取得できるという経過措置(3年間)がとられ、蓮舫はこのときに日本国籍を取得している。

当人はこの国籍取得時に台湾籍を放棄したつもりだったが、実は残っていた、と明かしたことから一連のごたごたが始まったわけだが、まず、当人がどう思っていようと、実はこの「台湾籍」が残っていたかどうか自体に疑問がある。

日本は1972年に中国(中華人民共和国)と国交を回復し、同時に台湾(中華民国)とは国交を断絶している。以後、日本は台湾を国として認めていないのだから、日本の国内法上、「台湾籍」は国籍としての意味を持たないはずである。

従って、日中国交回復から日本国籍取得までの間の蓮舫の国籍(日本の国内法上認められる国籍)は、中国に関して日本政府が認める唯一の国家である中華人民共和国の国籍であるか、あるいは無国籍だったはずだ。仮に中華人民共和国籍だったとしたら、同国国籍法の規定により日本国籍取得と同時に中国国籍を失うので重国籍にはならない。無国籍だった場合にも、もちろん重国籍状態は生じない。

この問題に関しては、「台湾の出身者には中国の法律を適用していない」とする法務省見解[2]などを根拠に「やはり台湾籍が残っていた」とする議論があるが、ではなぜわざわざ台湾当局から出してもらった国籍離脱証明書を日本政府は受理しないのか?[3]

民進・蓮舫代表 台湾籍離脱手続き「不受理」 日本国籍「選択宣言した」

 民進党の蓮舫代表は15日、日本国籍と台湾籍のいわゆる「二重国籍」問題について、都内の区役所に提出した台湾籍の離脱証明書が受理されなかったことを明らかにし、戸籍法に基づき「(日本国籍の)選択宣言をした」と述べた。都内で記者団の取材に答えた。

 蓮舫氏は記者団に「不受理なのでどうすればいいかと相談したら、強く(日本国籍の)選択の宣言をするよう行政指導されたので選択宣言をした」と述べた。

(略)

 日本政府は台湾を正式な政府として認めておらず、金田勝年法相は14日の記者会見で、一般論として「台湾当局が発行した外国国籍喪失届(国籍喪失許可証)は受理していない」と説明していた。

しかも、蓮舫のようなケースが違法なのかどうかも、どこの国を相手に手続きすればいいのかも、法務省は判断しないという。[4]

まず、蓮舫さんの場合、中国国籍法が適用されるという法務省見解は事実でないので、修正をお願いしたということだった。いわゆる二重国籍状態は、「法的義務に反した状態」だという。これを違法というのかといえば、法務省はそういう切り口ではものをいわないという。つまり、「違法だ」とも「違法でない」とも彼らは自分たちでは「いわない」というのだ。つまり、違法だというのは素人の議論での表現の問題の話で、法務省の人は使わないということらしい。だから、誰かが違法だといったら、そういう表現は一般には使われるが、正確でないというならそのとおりだし、違法ではないというは間違いということだろう。

中国と台湾どちらの法律が適用されるかどうかということについては、法務省としては判断を下す立場ににないということだ。つまり、たとえば、蓮舫さんのように日本国籍選択宣言をしたとして、他の国籍を解消することに「努め」ねばならない。努めねばならないという程度は、精神規定のようなものではまったくないが、一方で不可能でなければやらねばならないというほどには強くないという。よほど難しい事情があれば仕方ないということか?そういう意味では蓮舫さんのケースではそういうものはないわけだが。

それでは、蓮舫さんのような台湾籍の人が国籍選択宣言をした場合は、どうすればいいのか。それは、もうひとつの国とのあいだでやるべきことをすればよいのであって、その相手がどこか(中国か台湾かとかいうこと)とか、自動的に無効になっているかどうかとかいうのは、法務省の判断することではないというのである。それから、父母の国籍が違う場合に行うべき国籍選択を、①相手国からの国籍離をしたうえで日本に届け出するという形か、②日本政府への選択宣言でやるべきかは、二重国籍を認めてないという法律の趣旨からいっても①ですることが望ましいのは当然だが、②であってもだめだというわけではないということだ。

ふざけた話である。国籍法で重国籍の解消を義務付けておいて、ではどうすれば解消できるのかと聞いても答えない、どこの国を相手に手続きすればいいのかも答えない。当事者がいろいろ考えて相手国から国籍離脱証明書を出してもらったら、今度は受理しない。お前らいい加減にしろよ、と言うしかない態度だ。

そもそも、国籍法によれば、未成年で日本国籍を得た者が重国籍である場合、22歳までに国籍選択をしなければならず、しない者には法務大臣が国籍選択を催告する(第15条)ことになっている。しかし、蓮舫に対してそのような催告がなされた形跡はない。これはつまり、蓮舫はもともと重国籍ではなかったか、重国籍状態を法務省が把握していなかったか(届け出を行った移行措置による国籍取得者を把握していないはずはない)、あるいは中国と台湾という面倒な問題があるから放置していたかのどれかだろう。

要するに、蓮舫の「台湾籍」など、法務官僚のさじ加減ひとつで「ある」ことにも「ない」ことにもできる、あってもなくても実害のない、どうでもいいことなのだ。そんなどうでもいいことをネタに、ただ日本人の親から生まれただけで日本国籍を持っている排外主義者たちが、努力して国籍を取得した相手を寄ってたかっていじめている、というのがこの問題の真の構図である。

■ 戸籍の公開など百害あって一利なしの愚行

蓮舫に戸籍の公開を求める者たちは、そうすれば国籍選択の宣言をした日が分かるから、などと言っているが、そんな日付に意味などないことは以上の説明で明らかだろう。一方、プライバシーの塊である戸籍の開示には重大な弊害が伴う。

さらに、こんな理不尽が通ったら、この社会の差別性がますます悪化していく可能性が高い。

蓮舫は断じて戸籍を公開しろなどという卑劣な要求に屈してはならないし、政治家としての蓮舫を支持するかどうかなど関係なく、市民社会は断固として彼女を支えなければならない。


[1] 大山尚 『重国籍と国籍唯一の原則 -- 欧州の対応と我が国の状況』 立法と調査(295) 2009年8月 参議院事務局
[2] 『台湾出身者に中国法適用せず 蓮舫氏問題で法務省見解』 日本経済新聞 2016/9/14
[3] 『民進・蓮舫代表 台湾籍離脱手続き「不受理」 日本国籍「選択宣言した」』 産経新聞 2016/10/15
[4] 八幡和郎 『蓮舫二重国籍についての法務省見解はこうだ(増補あり)』 アゴラ 2016/9/15

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