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安倍がまたやるだろう7条解散は憲法違反

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「外交の安倍」とやらが、ゴルフ、大相撲、炉端焼きと、ちぎれるほど尻尾を振りまくって接待したトランプからどのような外交成果を得たのか。当のトランプ本人が次のようにツイートしている。

拙訳:日本との貿易交渉で偉大な進展があったぞ。特に農業と牛肉でだ。でかい数字を期待して彼らの7月の選挙後まで待つぜ。

長らく自民党の票田となってきた農家層に壊滅的打撃を与えるような譲歩をした上、その内容を7月の選挙後までバラさないようお願いしたわけだ。これでもまだ自民党に投票する農民がいたら、もう自業自得としか言いようがない。

ところで、次の選挙を安倍は衆参同日選にするつもりだと言われている。同日選に持ち込めば組織力でも資金力でも劣る野党には楽勝できるし、対米交渉で何をやらかしても先に衆院選を済ませてしまえばこっちのもの、と踏んでいるのだろう。しかし、参院選に合わせて衆院を解散する法的根拠は何なのか。

憲法には、衆院の解散に関係する条項は第7条と第69条の2つしかない。

第69条は、衆院で内閣不信任が決議(または信任決議が否決)された場合、内閣は衆院を解散するか総辞職しなければならないと定めたものだ。

第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

内閣が議会による信任を失ったら、内閣を入れ替えるか議員を選び直さなければならないとするもので、議院内閣制としては当然の規定だろう。

問題なのは、内閣による恣意的な解散の根拠とされている第7条のほうだ。

第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
1 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
2 国会を召集すること。
3 衆議院を解散すること。
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
6 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
7 栄典を授与すること。
8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9 外国の大使及び公使を接受すること。
10 儀式を行ふこと。

しかし、この条項は天皇の地位と職務を定めた第一章の一部であり、普通に読めば、天皇が行う儀礼的な国事行為の中に衆院の解散も含まれる、というだけのことだ。「内閣の助言と承認により」というのも、一切の政治的権能を持たない天皇は何をするにも内閣からの助言と承認を必要とすることを示しているだけで、この条項を根拠に内閣が勝手に衆院を解散できるなどとは到底言えないはずだ。

実際、日本国憲法の制定当初はそのように解釈されており、第69条に基づく解散の詔書も次のように書かれていた。[1]

  衆議院において、内閣不信任の決議案を可決した。よって内閣の助言と承認により、日本国憲法第六十九条及び第七条により、衆議院を解散する。
御名 御璽
  昭和二十三年十二月二十三日(官報号外五三)
            内閣総理大臣 吉田 茂

ところがその後、法務庁法制局(現在の内閣法制局に当たる)がこんなことを言い出す。[2]

 衆議院の解散要件については憲法第六十九条は内閣不信任決議案の可決または信任決議案の否決を掲げるが、これは内閣の衆議院に対する責任を明らかにし、その総辞職の要件との関係上特に規定したものであって、解散がこの場合だけに限定されるとの見解の根拠とするには足りない。内閣がどんな場合に解散を行うことができるかはその政治的責任で決すべきもので、憲法上はこれに関する制限はないと考うべきである。内閣は一たん成立すれば直接に国民を代表して行政権を行う機関であって、国会を通じてのみ国民を代表するその下部機関ではない。したがって、国権の最高機関である国会の一院をなす衆議院を、その下位機関である内閣が解散できることが論理上おかしいということはない。

いや、これは論理上明らかにおかしい。内閣は国会の下位機関ではないと言うが、それを言うなら国会もまた内閣の下位機関ではない。なのになぜ内閣が自分の下位機関でもない(それどころか国権の最高機関である)国会の一院を、憲法に明文規定もないのに勝手に解散できるのか。

さらにおかしいのは、行政府の一下位機関に過ぎない法制局が憲法の解釈を勝手に決めていることだろう。

にもかかわらず7条解散が慣例化しているのは、最高裁がいわゆる「統治行為論」により違憲審査をせずに逃げたからだ。[3]

ヘタレな最高裁がいくら違憲判断から逃げても、おかしいものはおかしい。ましてや、党利党略で衆参同日選にするために解散するなど、明白な憲法違反であり、許されることではない。

[1] 樋口陽一・大須賀明 『日本国憲法資料集(第3版)』 三省堂 1993年 P.146
[2] 同
[3] 郷原信郎 『衆院解散は憲法上重大な問題がある』 iRONNA

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