特攻隊を美化するバカウヨは珍しくもないが、先日、中学校の、それも道徳の授業でそれが行われているという話が流れてきたのには驚きかつ呆れた。
僕の学校で道徳の授業をしました!題名は「先人達の生き方に学ぶ」です内容は特攻隊についてです。始めに先生が説明をしワークシートに思った事を書き発表し合いました。クラスメイト「日本の未来の為に戦ってくれたと思います」先生「そうだね未来の私達や家族の為に戦ってくれたね」#特攻隊 #道徳 pic.twitter.com/aXziH4PrL7
— 政治家を目指す中学3年生 (@japan04379088) November 8, 2019
この授業では、「特攻の父」大西瀧治郎中将の言葉や特攻隊員の遺書などを題材に、特攻隊が犠牲となってくれたおかげで今の日本がある、といった類のありふれた詭弁が垂れ流されたようだ。
俺の感想
— 政治家を目指す中学3年生 (@japan04379088) November 8, 2019
字が汚くてごめんなさい pic.twitter.com/YI3zsDqDBV
ネタかと思ったのだが、この投稿者のTLを辿ってみると、とても大人が中学生を装って書いたとは思えない発言が並んでいるうえ、実は同じような授業が以前から行われていることを既に産経が報道していた。
それはともかく、「ホントだったら怖いな」という意味でしたが、↑授業ツイートhttps://t.co/jvecpKqC4kにもある植村特攻隊員遺書を使う道徳授業の報道が過去にあったんですね。
— 出目金 (@TR_727) November 12, 2019
授業内容は違っても人気がある特攻話は使われ易そうです。
産経新聞(IZA)2014/7/31 https://t.co/YsqVbM4WoY pic.twitter.com/W2Tf39zFrD
授業で使われている遺書もまったく同じものであり、もしかするとこの授業内容がテンプレ化されて流通しているのかもしれない。
このようなお涙頂戴の情動的教育、それも理不尽な作戦によって死を強制された被害者の思いを悪用するような教育にさらされ続けると、物事の原因と結果を正しく認識して論理的に考えることができなくなってしまう。実際、同じ投稿者の下記のツイートには頭を抱えてしまった。
その若者が戦ってくれたから、あなたが生まれたのでは?もし、あなたを産んでくれた親や親の親が戦争で死んだらもともこもないでしょ!特攻隊の若者は日本を守ろうと戦ってくれたのに
— 政治家を目指す中学3年生 (@japan04379088) November 11, 2019
無礼な人だな#売国奴 #反日 #左翼 pic.twitter.com/VavDeYqYJl
特攻によって米軍を撃退し戦争に勝ったとでもいうならともかく、現実には特攻では正規空母一隻すら沈めることができないまま敗戦に至ったのだから、特攻のおかげで生まれた日本人などいない。いるのは、親となるべき若者が特攻させられたせいで生まれることができなかった何千人者もの隊員の子どもたちと、親が特攻させられる前に敗戦を迎えたおかげで生まれることのできた子どもたちだけである。
私の父親は17歳で爆薬積んだベニヤの舟で自殺する訓練をさせられてるうちに敗戦を迎えた。以前にも貼った写真だが少年たちのダブダブの軍服に胸を衝かれる。また彼らは特攻隊員であるとともに植民地台湾への入植者でもあった。 pic.twitter.com/Rs8I6EkcDi
— SIVA (@sivaprod) August 18, 2019
特攻に関して「道徳の授業」で教えるべきことがあるとしたら、それは自殺攻撃させられた特攻隊員の遺書などではなく、こんな狂気の作戦を立案し推進した責任者たちが、その後どうしたかだろう。
フィリピンで海軍の特攻を始めた福留繁は、飛行兵には「後から行く」と言いながら戦局が不利になると、自分で自分の異動辞令を書いて台湾へ逃走した。敵前逃亡は本来銃殺だが戦後も80才まで生きて大往生。陸軍の特攻を指揮した菅原道大も「必ず後を追う」が95才まで長寿を全う。これが特攻美談の真実。 https://t.co/7kPwjUVO5V
— アジア記者クラブ(APC) (@2018_apc) August 19, 2019
富永恭次陸軍中将、フィリピンで陸軍の航空特攻を指揮
— 愛国心の足りないなまけ者 (@tacowasabi0141) August 18, 2019
日頃「諸君はすでに神である。君らだけを行かせはしない。最後の一戦で本官も特攻する」と言ってたが実際に
米軍が迫ってくると司令部の許可なしに側近と芸者とウィスキー瓶のみを載せて台湾に逃亡。
特に罰せられることもなく天寿を全うする。
追加
— 渡辺聖二(Sei2_Wata7be) (@re_enta) August 16, 2019
特攻兵器の生みの親
黒島亀人は戦藻録の己のページを削除し生き延び
大田正一、桜花の発案者は戦犯になることを恐れ戸籍抹消して生を永らえ
源田実、桜花の命名者は空爆長から参議院当選し栄華を極め
これが、特攻兵器を発案指導した者の姿 https://t.co/pcx5q1k0wY
ところで、徳島大学総合科学部の饗場和彦教授が、問題の道徳授業についても取りあげた講義用のスライドを公開してくれている。
特攻隊の遺書による授業にも、「火垂るの墓」の自業自得論にも、「それはそうだけど、なんかなあ…」と、違和感もった人いますか?
その違和感が重要です。
二つの例とも同じ特徴があります。
部分だけとらえて全体を見失った判断にとどまっている、という点です。
確かに特攻兵士がわが子を思う心情には感動しますが、なぜ兵士は愛する子をおいて死ななければならなかったのでしょうか。
確かに兄妹は親戚宅にいれば助かったかもしれませんが、なぜ兄妹は孤児になってしまったのでしょうか。つまり、戦争の実態について、文脈・大局が看過されているのです。
各部分にはそれぞれ一定の意味や合理性はありますが、そこだけ抽出して判断が止まると、ことの本質を見誤ります。
「木を見て森を見ざる」の不適切な判断。戦争と平和の問題について、こうした近視眼的・視野狭窄の見方が最近多い。
大学生向けなのでちょっと難しいかもしれないが、例の投稿者には、これでも読んで手遅れになる前に考え直して欲しいと願うばかりだ。
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