BC級戦犯裁判に関する2大デマと言うべき「ゴボウ」と「お灸」だが、日経新聞と日経BPが共同運営するサイト「NIKKEY STYLE」にこれが載っているのを見つけてしまった。『こまつ座「闇に咲く花」 戦争責任の矛盾突きつける井上ひさし作品』という演劇評記事だ。(2012/4/24掲載。執筆は内田洋一編集委員。)
戦前と戦後で価値観が転倒した日本。軍国主義から民主主義へ転換する中で、裁かれなければならなかった人たちがいた。戦争指導者の平和に対する罪を問うA級戦犯は公開の国際軍事法廷で裁かれたが、B級(通例の戦争犯罪)、C級(非人道的行為など)の戦犯は現地の法廷で非公開で裁かれた。BC級戦犯についてはずさんな裁きが多かったといわれ、中にはお灸(きゅう)をしたことが「火あぶり」になり、ごぼうを食べさせたことが「木の根を食わせる」虐待になった例もあったと報告されている。捕虜や現地民への虐待についても上官が不問に付され、命令に従った実行者のみが罪に問われることも少なくなかった。900人を超える人が死刑になったという。
確かに「闇に咲く花」はBC級戦犯問題を扱った作品ではあるが、この中にゴボウやお灸の話が出てくるわけではない。そんな、直接的には関係のない演劇についての批評の中に、さらっとこういうことを書く。
「報告されている」というが、そんなことを結論づけた報告などあるはずもなく、筆者はどこかで聞きかじってきただけだろう。そんなことを、あたかも検証済みの事実であるかのように書いている。
こういうふうに、問題自体に特に興味もない人々が読むようなものにさりげなくデマが書き込まれ、何の疑問もなく鵜呑みにされて、「常識」として広まっていくのが一番危ないのだ。
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