日本政府の「救出作戦」は大失敗
日本政府は8月23日、タリバンが実権を握ったアフガニスタンから日本人やアフガン人現地職員を退避させるため自衛隊機を派遣したが、ほとんど目的を達成できないまま、27日に作戦を事実上終了した。
結局救出できたのは日本人1人とアフガン人14人だけで、大使館やJICA、その他NGOなどの現地スタッフとその家族500人以上が取り残されたままだ。しかも、自衛隊機が運んだアフガン人14人は本来想定していた対象者ではなく、アメリカから輸送を要請された旧政権の政府関係者たちである。[1][2]
作戦は大失敗と言うほかない。
失敗の最大の原因は、タリバンによる検問にはばまれて対象者が空港までたどり着けなかったことだが、空港への移動が難しいのは当初から予想できたことだ。甘い見通しで対策を怠った政府の責任である。
一方、これとは対照的だったのが韓国だ。
韓国も同じように輸送機をアフガニスタンに派遣したが、見事に現地職員やその家族3百数十人の救出に成功した。日本とは違ってそもそも初動が早かった上、米軍の協力を得て安全に検問を通過できる手段を事前に用意していたからだ。[3]
これに対して、韓国は成功的に現地人を避難させたという評価を受けている。軍の輸送機を動員して緻密に計画を立て、米国の協力のおかげで韓国行き希望者を全員移送することに成功した。これまでアフガニスタンで韓国政府と協力してきた現地人職員と家族、未成年の子どもと両親ら378人がパキスタンのイスラマバードから同日午後、韓国の仁川(インチョン)国際空港に到着する。
韓国・外交部当局者は前日、テレビ電話形式のリモートブリーフィングで「希望する人は全員出国した」とし、国内残留や第3国行きを決定した人を除けば、当初政府が計画した全人員を移送したと明らかにした。
“ミラクル”という作戦名にふさわしく、成功的な移送という評価を受けている。米国のウェンディ・ルース・シャーマン国務副長官が22日の会議で解決策を提示した。米国が取引しているアフガニスタンのバス会社に協力者を乗せ、そのバスを米軍とタリバンが一緒に守っている検問所を通過させようというのだ。
タリバン基地を通過する際には必ず米軍の承認が必要だが、米軍はタリバンと撤収と関連して「米軍が承認する人員に対しては撤収してもいい」という約定を結んだ。この約定により、バス6台に分乗した韓国行きの協力者らは検問所を通過することができた。
協力者も大使館や病院、KOICA(韓国国際協力団)など自分の属する機関別に十分な連絡網を維持し、一糸乱れず動いたことが移送に役立った。米国・防総省合同参謀本部のハンク・テイラー少将は同日、国防総省とのブリーフィングで韓国政府がアフガニスタン事業再建に協力した助力者を国内に受け入れることにしたことに対し、感謝の意を表した。
韓国と同等以上にアメリカとは親密なはずの日本が、なぜ同じことをできなかったのか。そもそも、そうした手段を用意するという発想自体がなかったのではないか。
また、現地大使館の動きの違いも大きかった。[4]
退避後に戻った韓国の駐アフガン大使館員ら 現地連絡のカギに
韓国の駐アフガニスタン大使館の外交官らは、タリバンがカブールに侵入した直後、いったんカタールに撤収している。しかし、今回の現地職員らの移送支援のため、外交官ら4人が22日に再びカブールに戻った。現地職員らとの連絡やバスの手配など、韓国政府は彼らの早期投入が「何より重要だった」と評価している。
「必ず助ける」との約束通りカブールに戻り、同僚の現地職員と抱き合って涙するキム・イルウン公使参事官の姿は韓国メディアに大々的に伝えられた。キム公使参事官は帰国後のインタビューで「空港に行く途中でタリバンにバスを止められ、14~15時間、閉じ込められた」「全員を連れて帰ることができ、国家の品格と責任を示せた」などと振り返った。
一方で、現地の大使館員が国外退避した状態の日本のオペレーションが、より困難なものになったことは想像に難くない。
民間人や現地人スタッフを置き去りにして逃げた外交官らの姿に、入植者を見捨てて軍と満鉄関係者が真っ先に逃げた敗戦時の旧満州を連想した人も多いだろう。実際、戦後もこの官尊民卑の体質は変わっていないのではないか。
1945年8月の満洲を連想した。大使館の職員が本来やるべき仕事とは一体何なのか。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) August 26, 2021
半田滋「在アフガニスタン日本大使館の職員12人は英軍の輸送機に同乗して国外へ脱出済み。国際機関で働く日本人職員や大使館などで働いていた現地スタッフは取り残された」(現代ビジネス)https://t.co/6jbpIHTHbg
作戦が失敗したのは自衛隊の行動が制約されていたからではない
なお、今回の失態をネタに、法的に自衛隊の行動が制約されているせいだとか、果ては憲法9条のせいだとか言う者たちがいるが、そんな問題ではない。仮に自衛隊が自由に武器を使用できたら数百人の対象者を装甲車にでも乗せて空港に連れてこれたのか? そんなことはタリバンが認めないだろうし、では交戦して強行突破するのか?
できるわけがないし、韓国軍だって今回武器など使用してはいない。
韓国軍が行動したのではなく外交官が努力して救出した。日本では自衛隊が法律で縛られたから救出が出来なかったと考える人が多いが事実ではい。自国民より早く逃げた外交官と外交力が原因。本質的な問題は触れず政治的に利用される可能性が高い?? https://t.co/NQDy3bRtOy
— ??? (@Tsiberia) August 29, 2021
《派遣の根拠である自衛隊法に活動を制約され、自衛官は首都カブールの空港から一歩も外に出られなかった》
— 安田純平 (@YASUDAjumpei) August 29, 2021
《自衛官が市中に退避希望者を迎えに行き、警護して連れてくることはできなかった》
法的規制なければそれをタリバンが認めたとか、認めなくても実力行使できたと?https://t.co/j0OaR68P5C
アフガン人職員本人は退避させてもいいが家族は認めないという非情
さて、これだけでも十分ひどいが、実はさらにひどい話がある。日本政府は、自衛隊機による退避の対象にNPOなど民間組織のアフガン人職員も加えていたが、対象は職員本人だけで、家族は認めない方針だったというのだ。
家族は認めずって、一応働いてた人だけは他の家族を見捨てるなら助けてやるってか。
— 愛国心の足りないなまけ者 (@tacowasabi0141) August 27, 2021
いったい何処の非道国家だよと思ったらわーくにだった。
ホント感動するくらい命を賭けるに値しない国だわね。
NPO職員本人も退避対象 アフガン人、家族は認めず | 2021/8/26 - 共同通信 https://t.co/fFpN0lN5tg
大使館とJICAの現地職員は家族同伴可能ですが、その他のODA
— 瀬谷ルミ子@REALs(争い予防NGO) (@seyarumi) August 27, 2021
関係者、NGO、報道関係各社の現地スタッフは家族帯同不可です。
このことは数日前から把握しており、多くの人々が何とかならないか働きかけをしていました。 https://t.co/Bo294iLvd1
アフガニスタン人の退避の際に家族除外を条件する国を他に知らない。
— 瀬谷ルミ子@REALs(争い予防NGO) (@seyarumi) August 27, 2021
退避対象のアフガン人の多くは一家の大黒柱である男性。残された妻や子どもだけではタリバン統治下で外出もままならない。夫不在となった家族に何が起こるか。
結果多くが日本による退避をあきらめた。https://t.co/xwndX48nYG
これでは、仮に退避作戦がうまくいっていたとしても、民間組織のアフガン人職員はほとんど退避できなかっただろう。
助かりたければ家族を捨ててこいと言うのも同然で、よくもまあこんな非人道的な発想ができるものである。この国はいったい何なのか。呆れるほかない。
[1] 『自衛隊機、アフガニスタン人14人運ぶ 旧政権関係者ら』 朝日新聞 2021/8/28
[2] 『邦人1人、アフガン人14人輸送 退避対象最大500人残る』 東京新聞 2021/8/29
[3] 『日本、アフガニスタンに輸送機を送ったものの1人も移送できず…韓国は希望者全員を移送=韓国報道』 Yahoo!ニュース 2021/8/26
[4] 『明暗分かれた日韓のアフガン退避作戦 なぜ』 日テレNEWS24 2021/8/29
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