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猫の命を生活困窮者差別に利用した「メンタリストDaiGo」

「メンタリスト」を自称するユーチューバー「DaiGo」が、生活保護受給者や野宿者(いわゆる「ホームレス」)などの生活困窮者を差別する暴言を吐いて非難を浴びている。

問題の動画(8/7公開)はもう見られなくなっているが、どんな差別発言をしていたのかは各所に引用されているのでわかる。

BuzzFeed News(8/12)

「僕は生活保護の人たちに、なんだろう、お金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救ってほしいと僕は思うんで。生活保護の人が生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで(「ね、癒される。そうだよね」と猫を撫でる)」

「猫がさ、道端で伸びてたらかわいいもんだけど、ホームレスのおっさんがさ、伸びてるとさ、なんでこいつ我が物顔でダンボール引いて寝てんだろうなって思うもんね、うん。僕は今日辛口なのもあれですけど、ダークなんで。人間の命と猫の命はね、人間の命の方が重いなんて僕全く思ってないからね」

自分にとって必要のない命は、僕にとって軽いんで。だからホームレスの命はどうでもいい。どちらかというと、みんな思わない?どちらかというといない方がよくないホームレスって?言っちゃ悪いけど、本当に言っちゃ悪いこといいますけど、いない方がよくない?

「いない方がだってさ、みんな確かに命は大事って思ってるよ、人権もあるから、一応形上大事ですよ、でもいない方がよくない?正直。 邪魔だしさ、プラスになんないしさ、臭いしさ、ねぇ。治安悪くなるしさ、いない方がいいじゃん。猫はでもかわいいじゃん、って思うけどね、僕はね」

「もともと人間はね、自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きてきてるんですよ。犯罪者を殺すのだって同じですよ。犯罪者が社会の中にいるのは問題だしみんなに害があるでしょ、だから殺すんですよ。同じですよ」

これはもう、どこから突っ込んでいいか分からないほどひどい。そもそも、自分には他者の命の軽重を決める権利があると思っているこの傲慢さは何なのか。

とはいえ、ここに見られる優生思想の危険性や人間社会への無理解については既に各所からきっちり批判されているので、ここでは1点だけ取り上げる。

DaiGoは無知だから知らないのだろうが、実際には多くの猫たちが野宿者によって救われている。

たとえば多摩川の河川敷では、野宿者のおっちゃんたちが、河原に捨てられ、あてどなくさまよっている猫たちを保護し、大切な家族として一緒に暮らしている。彼らはアルミ缶の収集などでかろうじて生計を立てているのだが、乏しい生活費の中から、猫にはひもじい思いをさせないようにと、自分の食費を削ってでもキャットフードを買って与えている。

写真家の小西修夫妻は、そんな彼らや多摩川の猫たちを支援する活動を長年行っている。小西氏のブログから、河川敷での彼らの日常の一端を知ることができる。

小西修の動物ドキュメンタリーBLOG

2021.8.19

移動してタゴのおぃちゃんの所に行きました。おぃちゃんがとても可愛がっているチビ(♂)が表で迎えてくれました。と言うより、たまたま入り口で寝そべっていただけですが。

パッパ(♀)やシロ(♀)他も全員元気に暮らしていました。お話をしているうちに隣の小屋からレモン(♀)がやって来たので、すぐにおぃちゃんはご飯を出しました。

元々はタゴのおいちゃんの所の猫でしたが、レモンを虐める猫もいたために、レモンの判断で隣の小屋のおぃちゃんの猫となって数年経つのです。

このところ、おぃちゃんの自転車のタイヤをナイフのような鋭利な刃物で切り裂いていく悪戯が先月から続いています。

昨日も前後のタイヤを切られました。アイスピックのような物で突き刺した場合は中のチューブだけを変えれば良いのですが、前後のタイヤを切られては高く付いてしまいたまったものではありません。

ここ2ヶ月で何回かやられ、他のホームレスの方の自転車も被害にあっています。前回のときも書きましたが、犯行はいつも雨の日なのだそうです。


小西氏が撮影したこちらの動画では、河川敷で16匹もの猫を保護している野宿者の方がこう語っている。

ここも(台風などで)水浸しになるかもしれない。その時のことも考えてます。この子たちを守るためにね。俺は子どもいないからね。それが使命です。俺の、与えられた宿命。

この子たちが、俺に守ってくれって言ってるんですよ。俺は一つの命、こいつらは16匹の命があるからね。

強い者がね、弱き者を助ける。これがね、俺の生き様です。弱い者を誰が助けるんですか。強い者が助けてあげないと、誰が助けるんですか。猫一匹だって。

こういうことをね、道徳として学校の先生も教えてない。(だから)今の世の中、平気で年寄りでも何でも殺す。こういうことをね、俺は子どもたちに教えてあげたいです。

勉強だけしたってダメだと思う。勉強じゃねえ、学問じゃねえ、社会生活ですよ。弱い者をいじめちゃダメ、学歴のない者をいじめちゃダメですよ。助けてあげないと。俺はそう思ってるんです。


DaiGoこそ、このおっちゃんが言う、一番学ぶべきことを学んでこなかった子どもの典型だろう。

DaiGoは「生活保護の人が生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで」と言っているが、命を損得勘定で扱うような人間は、猫も年老いたり病気になって自分の得にならなくなれば、簡単に捨てるだろう。

DaiGoはこのおっちゃんの爪の垢でも煎じて飲め。

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多摩川猫物語 それでも猫は生きていく

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  • 作者:小西 修
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