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フィクションとして戦争を描くということ

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フィクションであるにもかかわらず、「これこそが戦時下の庶民生活の真実」、みたいな受け取られかたをしている『この世界の片隅に』をきっかけに、フィクションとして戦争、とりわけ戦時下の生活を描くとはどういうことかを考えてみた。

この問題を考える上で、私がどうしても外せないと思う作品が『ニャンコ、戦争へ』だ。

これは、菊地秀行の文に平松尚樹が挿絵を入れた、「大人の絵本」という体裁の本だ。わずか30ページほどの小品である。

ニャンコ、戦争へ

ニャンコ、戦争へ

主人公の「僕」が住む国は、しょっちゅう外国と戦争ばかりしている。

自国が戦場になってはいないが、街にあふれる負傷兵に手を焼いた政府は、ある画期的な解決策を編み出す。人間の代わりに、犬や猫を兵士として送り出せるようにしたのだ。

その結果、「僕」の家で幸せに暮らしていた黒猫の「ニャンコ」も徴兵され、戦場に送られる。

「僕」が三つのときに戦争に行ったニャンコは、半年ほどして帰ってきたが、右目と右の前足がなくなっていた。「名誉の負傷」で10日間の休暇を与えられたのだ。

休暇が終わり、戦場に戻ったニャンコが次に帰ってきたのは2年後。このときには、左の後ろ足も義足になっていた。やせこけたニャンコの背中を、一日中なでてやることしかできない「僕」。

耐えられなくなった「僕」は、こっそりニャンコを隣り町まで連れていき、逃がそうとする。しかしニャンコは逃げようとせず、また戦場に戻る。そして・・・。

 

この絵本の内容は、現実の戦争とは何の関係もない作り話である。にもかかわらず、戦争というもの(というより、戦争をしたがる政府)が人々から何を奪っていくのかを、その痛みとともにはっきりと教えてくれる。

そして読者は、果たして戦場に送られるニャンコたちとは本当は誰のことなのか、考えさせられることになる。

私も、まだ考え続けている。

 

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