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「雨が上がって日が差したら虹が出た」だけのことを奇跡でも起きたかのように騒ぐバカの国

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22日は、新天皇徳仁が即位を宣言する儀式だという「即位礼正殿の儀」が皇居で行われ、NHKも民放も、地上波全局がその中継だの解説だので埋め尽くされた。皇族女性の服の色がどうとか、くだらない話ばかり聞かされてうんざりである。

この日は朝からかなりの大雨だったのだが、儀式の始まる前には雨が上がり、日が差して虹が出た。

大気中に雨滴が残る雨上がりに日が差せば虹が出るのは当たり前の自然現象なのだが、ウヨ方面では天皇の霊力で奇跡でも起きたかのような大騒ぎである。

lite-ra.com

 (略)Twitter上では「儀式が始まった途端に雨が止んで虹がかかった」なる声が湧き、神話の「天照大神」や「天叢雲剣」、さらには「エンペラーウェザー」なる造語がトレンド入りした。東京では午前中から降っていた雨が小康状態になり、晴れ間も見えたことから、ようするに “天皇の神の力が天候を変えた”と言いたいらしい。たとえばこんなツイートだ。

〈・天叢雲剣で雲がかかって大雨、普段祀られてる神社近辺は晴れ
・儀式直前に天照大神が降臨したかのように晴れる
・虹が低くかかり結界のようになる
・イザナギとイザナミが下界に来る時の架け橋で虹を使用したという神話
神様は本当にいるのか…〉
〈天皇のパワーがすごい、即位礼正殿の儀の時に空が晴れて虹が出る〉
〈天叢雲剣 で雲がかかり大雨になり、儀式直前には #天照大神 が降臨したかのように晴れる。
そして、虹が低くかかり結界のように。
イザナギとイザナミが下界におりる時、虹を使用したという神話。
日本は間違いなく神の国。〉
〈これが神の力かぁ!! 万歳!万歳!万歳!〉

(略)

 しかも、こうした言葉を口にしたのは、一般ユーザーだけではない。作家の百田尚樹氏も〈これほど美しい虹が偶然に起こるはずもない。天が新天皇の即位を寿ぎ、日本を祝福しているのだ〉と投稿した。

 百田氏のツイートには〈御意。天照大御神もお喜びなのでしょう〉〈しかも、こんな完璧な虹なんか、そうそう現れないって! 天皇陛下の霊験、ハンパない!〉〈天照大明神が日本を照らして下さる〉〈改めてこの国に生まれて良かった。そして命をかけてこの国を護り続けてきてくださった全ての先人、英霊に感謝〉なるファンからのコメントが相次いだ。

 他にも、複数のネトウヨ系サイトが、東京で雨が止んだことや一部で虹がかかったことを何かしら“天皇の力”に結びつけるようにして、嬉々としてまとめている。こいつらは正気なのか。

リテラが取りあげたツイート例も大概だが、個人的にツボにはまったアホツイートはこれ。

この儀式の後、その台風20号と21号によって関東全域が豪雨災害に見舞われ、千葉では9名も死者が出ているのだが、するとこれは新天皇の不徳のせい、ということでいいんだよね?

ちなみに、この人以外にも「皇居の上に虹がー!」とか言ってるツイートが多数見られたが、それはあんたらがたまたまその時皇居の南側にいたからで、虹は太陽の反対方向に見えるという原理から来る当たり前の結果に過ぎない。

旧約聖書を持ち出して「虹は神との契約」とか言っているサイトまであったのだが、どうしてそこで聖書なのか? 日本人なら我が国の古典から意味を考えるべきではないのか?

で、「虹」という字が虫偏であることからも分かるように、古来日本では、虹は蛇と結びつけられてイメージされ(一部の方言ではどちらも「ナギ」と呼ぶ)、基本的に不吉なものだった。たとえば、日本書紀(雄略紀)には次のような説話が載っている[1]。

 三年の夏四月に、阿閉臣あへのおみ国見、(略)𣑥幡たくはたの皇女ひめみこと湯人ゆゑの廬城部連いほきべのむらじ武彦とを譖しこぢて曰はく、「武彦、皇女を姧けがしまつりて任身はらましめたり」といふ。(略)武彦の父枳莒喩きこゆ、此の流言つてことを聞きて、禍の身に及ばむことを恐る。武彦を廬城河に誘あとへ率たしみて、偽あざむきて使鸕(茲+鳥)没水捕魚うかはするまねして、因りて其不意ゆくりもなくして打ち殺しつ。天皇、聞しめして使者を遣して、皇女を案かむがへ問はしめたまふ。皇女、対こたへて言まうさく、「妾やつこは、識らず」とまうす。俄にして皇女、神鏡を齎り持ちて、五十鈴河の上ほとりに詣でまして、人の行ありかぬところを伺うかがひて、鏡を埋うづみて経わなき死ぬ。天皇、皇女の不在きことを疑ひたまひて、恒つねに闇夜に東西に求覚もとめしめたまふ。乃すなは河上かはのほとりに虹ぬじの見ゆること蛇をろちの如くして、四五丈ばかりなり。虹の起てる処を掘りて、神鏡を獲。移行未遠たちどころにして、皇女の屍かばねを得たり。割きて観れば、腹の中に物有りて水の如し。水の中に石有り。枳莒喩きこゆ、斯これに由りて、子の罪を雪きよむること得たり。還かへりて子を殺せることを悔いて、報たむかひに国見を殺さむとす。石上神宮に逃げ匿かくれぬ。

まあ、ネトウヨが無知とご都合主義でバカなことばかり言うのは通常運転だが、NHKまでがこのざまだから笑ってもいられない。

で、こんなふうに「普通の日本人」やマスコミが浮かれたバカ騒ぎをしている一方で、当日行われた即位反対デモでは、ただ歩いていただけの参加者が三名も不当逮捕された。

この国は既に、戦前戦中の狂信的カルト国家まであと一歩のところに来ているのだろう。

 

[1] 坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋 『日本書紀(三)』 岩波文庫 1994年 P.32-34

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