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羽根のない風力発電機 ― イノベーションとはこういうものを言うのだろう

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つい先ほどTLに流れてきたツイート

これには驚いた。風と構造物の固有振動数が一致することによって揺れが生じる「渦励振」現象 ― 巨大な建築物を倒壊させることもあるやっかいな現象だが ― を使って、羽根のいらない風力発電機を実現したというのだ。開発したスペインのスタートアップ企業は来年中の販売開始を予定しているという。

そんな風力発電大国スペインでは現在、新しい発想の風力発電機が開発されている。

それが、風力エネルギー系のスタートアップ企業・Vortex Bladeless(ボルテックス ブラデレス/以下、Vortex社)社製の羽根のない風力発電機だ。

(略)

一方、Vortex社が開発中の風力発電機Vortex Tacomaは、小型ロケットのような形をした円筒形で、高さは約2.7m。軽さと強度を保つために炭素繊維とガラス強化繊維(FRP)素材を使い、振動する上部と地面に固定される下部に分かれている。商用化される際には、重さ約15kg、発電量100W/hを想定しているという。

筒の中にはコイルと磁石を用いた特許取得済みの発電装置が内蔵されており、上部が左右に振動することでエネルギーを生み出す仕組みだ。

(略)

とは言っても、簡単に渦励振を引き起こせるわけではない。空気の渦の周波数は一定でないため、渦に合わせて風力発電機側の振動数を変える必要があったのだ。そこでVortex Bladeless社は、自動的に発電機側の振動数を調整する独自のチューニングシステムを開発。これにより、風速3mからでも共振を引き起こし、発電を開始・維持できる仕組みを作り上げた。

その軽さや設置のしやすさから、自宅の屋根や庭などへの導入を想定しているVortex Tacoma。価格は1基あたり200ユーロ前後(日本円にして約2万4300円、6月21日現在、1ユーロ121円で計算)になる予定で、2020年中の販売を目指している。

今後は、さらに大きな1MWクラスの風力発電機開発を計画している同社。大型化した場合でも、従来の風力発電機に比べて製造コストは50%以上、メンテナンス費用は80%以上もカットできるという。

これは、従来のように複雑な部品を使わないため。メンテナンスに油を使う必要がないので、廃棄する際の費用も安くできるという。

風力発電は、太陽光発電と違って日照時間の少ない高緯度地方や豪雪地帯でも発電可能という利点がある一方、回転するプロペラによる騒音被害や鳥の巻き込み事故という問題を抱えていた。それが、風力発電には必須と思われていた羽根をなくすことで一気に解決できるわけで、素晴らしい発明と言える。

スペインは、一発明家のアイデアにCDTI(産業技術開発センター)が公的資金を与えることで、短期間での実用化を可能にした。

一方日本では、自ら体験した福島第一原発事故の教訓から学ぼうともせず、危険な旧式原発の再稼働を国策として進めている。

さらには、地域独占の電力会社に再生可能エネルギー発電の出力制御を許すことで、その普及の妨害までしている。

自然エネルギー財団(東京)の大林ミカ事業局長は「出力制御が困難な原子力を優先する仕組みは非効率的です」と話す。

「多くの国で、自然エネルギーは燃料費のかからない一番安い電気として市場で取引されています。米国では風力と太陽光のコスト競争力が高まり、火力発電を代替することによるCO2削減効果が明確に表れ、この7年間で発電に伴うCO2排出量は米国全体で20%以上も少なくなっています。日本でも自然エネルギーのコストは安くなってきた。これを最大限に利用するには、こうした市場の拡大に加え、送電網の柔軟な運用が必要です」

同財団は今年1月の報告書で「環境、安全性の点から、原子力よりも自然エネルギーを優先して供給することが常識的な判断である。しかし日本では太陽光や風力よりも原子力を優先させる。原子力の出力制御が技術的に困難という理由からだ」と指摘した。そのうえで、現在のルールは「非効率」であり、変更するよう訴えている。

既得権益者たちの目先の利益のために不合理な政策を取り続ける国に未来はない。

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