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【コロナ】クラスター仮説に依存した対策はどう見ても既に破綻している

新型コロナウイルス(COVID-19)問題で、テレビは今日も「クラスター」「クラスター」と連呼しているが、どうして日本では諸外国と違ってクラスターの追跡ばかりに注力しているのか。その理由が、昨日の東京新聞記事からなんとなく分かってきた。

謎解きコロナウイルス ①なぜクラスター対策
「連鎖を断つ」に注力

 「東京の患者数の増加は、感染爆発が起こった欧州に近い。非常に憂慮している」今月一日、政府の新型コロナウイルス対策専門家会議の記者会見。三月下旬からの感染急増に、患者数の予測を担う北海道大の西浦博教授が危機感をあらわにした。

■ 潜む感染

 新型ウイルスは感染者の八割が軽症や無症状のため、全感染者を見つけて隔離する感染症対策の王道をとれない。このため西浦教授らは、患者がどういう状況で増えているか分析し、新型ウイルスに合った感染者の減らし方を探ってきた。
 初期の感染者百十人を対象にした調査では、八十人以上が誰にもうつしていない一方、屋形船のような閉鎖空間では、一人が周囲の十人以上にうつす例があった。専門家会議は、一カ所で五人以上感染が生じた集団を「クラスター」と命名。一人から十人に感染し、その十人の中の一人が別の場所でさらに十人に移すという、閉鎖空間のクラスターの連鎖で拡大が起きると結論づけた。
 二月二十五日に厚生労働省は「クラスター対策班」を設置し、連鎖を断つことに注力。クラスター発生を察知し、その場にいた接触者を調べ出して検査と自宅待機の要請を進めた。同時に政府は「この二週間が重要」と、国民に密閉・密集空間を避ける活動自粛を求めた。

■ 消えた楽観

 感染症は、一人の感染者がうつす平均人数が一人未満であればいずれ消えるが、一人より多くにうつせば広がる。人が何人にうつしたかを示す「実効再生産数」は二月中に国内で二を超え、放置すれば感染爆発(オーバーシュート)につながる状態だったが、三月上旬には一前後にまで低下した。
 二週間の自粛期間の成果を検討する三月十九日の専門家会議の数日前まで、メンバーからは「いいデータ。第一波は抑え込めた」と楽観論が出て、感染の少ない地域から自粛を緩める検討がされた。
 だが会議直前、再生産数が上昇に転じた。欧州で感染爆発が起き、三月十一日に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を宣言。十九日の記者会見で西浦教授は「欧米からの感染者は、中国と比べものにならないレベルで日本に来る」と警鐘を鳴らした。
 予測を裏付けるように、帰国者などの感染が急増。先月下旬の東京では再生産数が一・七にまで上昇した。欧州では再生産数が二・五程度の状態が続き、数日ごとに患者が倍々と増える感染爆発が生じた。日本も爆発か、再生産数を一に近づけられるかのぎりぎりのところにいる。

(略)

本当にこれが《専門家》会議での議論なのかと、一読して呆れざるを得ない。

「クラスターの連鎖で(感染)拡大が起きる」のはその通りかも知れない。しかし、クラスターを追跡し、「連鎖を断」って感染拡大を封じ込めるには、全てとは言わないまでも、大部分のクラスターをその初期段階から把握していなければならない。そのためには疑わしい症状のある人々を徹底的に検査して、可能な限りクラスターの種となる感染者を見つけ出す(そして隔離する)必要がある。だからこそ、(日本以外の)諸外国は全力を挙げて「感染症対策の王道」である検査と隔離を推進しているのだ。

検査による全体像の把握なしに有効なクラスター対策などできるわけがない。いまニューヨークで新型コロナ感染症と戦っている齋藤孝医師(感染症専門医)の指摘するとおりだろう。

business.nikkei.com

― 日本に届けたいメッセージはありますか。

斎藤氏:日本の方々はこちらで起きていることを「遠い国の出来事」と思われているかもしれません。でも、(人が密集して暮らしているという状況は)東京もニューヨークと変わりません。日本では感染者数が少ないといっても、それは検査数が圧倒的に少ないから。症状はないけれども、ウイルスは持っているという人がすでに数多くいると考えた方がいいでしょう。

 日本ではクラスターの存在を早めに察知するという手法で封じ込めを狙っているようですが、大規模検査の実施なくしてクラスターの把握などあり得ません。 

圧倒的に検査数が足りないために、もはや本当はどこにどれだけの感染者がいるのか見当もつかないのが日本の現状だ。専門家会議で議論されている「実効再生産数」など、ほとんど架空の数字と言っていい。そんな数字が増えたの減ったのと一喜一憂しているのだから話にならない。

実際、今日発表された東京都の新たな感染者143名のうち、約64%にあたる92名は感染経路が分かっていない。つまり、最低でも6割以上のクラスターは見落とされ、野放しになっているということだ。

こんな既に破綻した仮説に依存した対策は今すぐやめて、本来の「感染症対策の王道」に戻るべきだ。どうやればいいかのお手本はすぐ隣の韓国が示してくれているではないか。

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