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大真面目な「皇位の安定継承」議論が面白くだらない

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いま東京新聞で、「代替わり考 皇位の安定継承」と題して、「皇室の歴史や法制度に詳しい識者の意見」が紹介されている。男系男子の皇族のみが皇位を継承できるとする現在の皇室典範のままだと、「将来は安定的な皇位継承が危ぶまれ、天皇家と三つの宮家は後継者不在で絶家となる」[1]という危機感からだ。

画像出典:[1]

今日までの連載で、女性天皇容認論(小田部雄次 静岡福祉大名誉教授[1]、河西秀哉 名古屋大准教授[3])、旧宮家復活論(百地章 日大名誉教授[2])、男子優先だが無理なら女性天皇も認める折衷論(所功 京都産業大名誉教授[4])と、この問題に関するだいたいの論点が出揃っている。

なお、議論の対立点となっている「男系」「女系」の違いについては次の図が分かりやすい。

画像出典:[3]

小田部氏は、継承権者を男系男子に限るという制約を外して、シンプルに「長子優先」にすべきと主張している[1]。(河西氏も同様。)

(略)解決策としては天皇陛下の直系の子どもが男子に限らず皇位継承の優先順位を持つことが、安定した皇位継承につながると考える。

 現在でいえば、愛子内親王を皇位継承順位一位とする。将来、結婚した場合は、その子どもに男女を問わず出生順に二位、三位と皇位継承資格を持たせる。それまでは秋篠宮さまが継承順位二位となり、長女の眞子内親王が三位、次女の佳子内親王が四位、悠仁親王が五位という順序で続く。

 内親王の伴侶の決定にあたっては、現在の男性皇族の結婚相手の決定と同じく、皇室会議の議を経ることとすれば、皇位継承資格を持つ皇族の数を安定させ、悠仁親王の妃(きさき)に男子出産という難題を背負わせる必要がなくなる。

これに対して、百地氏はあくまで「男系男子」にこだわり、足りない継承権者は「旧宮家」から補充せよと主張する。

 「男系男子」の皇位継承は皇室の二千年近い伝統であって、先人たちは大変な苦労をして守ってきた。憲法と皇室典範の規定から考えても、この原理原則を絶対に変えてはならない(略)

(略)

 宮家は天皇家と同じ血筋の傍系として、直系男子が不在のとき天皇を出した歴史がある。四つの旧宮家には明治天皇と昭和天皇の皇女が嫁ぎ、香淳皇后は別の旧宮家から昭和天皇に嫁いだ。天皇家と血縁が近く、親戚として交流している。

 現在、久邇(くに)、賀陽(かや)、竹田、東久邇(ひがしくに)の旧四宮家に計八人から十人の若い男子がおられる。そのうち本人の同意が得られたふさわしい方を何人か皇族として迎え、いまある宮家に養子に入ってもらうなどして、将来の皇室を支える体制を整えることが最善の策と考える。

 女性皇族に継承資格を認め、結婚後も皇室に残ってもらう案には反対だ。なぜなら皇室と無縁な一般男性が結婚を機に皇族となるうえ、一般男性の血筋である女系天皇の誕生につながりかねないからだ。それは初代神武天皇から男系で続いた皇統の断絶を意味する。

(略)

しかし、百地氏の言い分には矛盾がある。氏は、旧宮家は天皇家と血縁が近い親戚だと言うが、それはいずれも女系での結びつきだ。氏が絶対視する男系の系譜をたどった場合、現存する旧宮家が天皇家の系譜とつながるのは六百年も昔のことだ。私は天皇家の系譜の詳細など知らないが、さすがに六百年前に分岐した旧宮家よりは血縁の近い天皇家の男系子孫がどこかにいるだろう。男系の血縁にこだわるなら、そういう子孫のほうが継承権者として優先されるべきとなるはずだ。

まあ、そもそもそれ以前の問題として、女性/女系天皇を拒否する人々の本音は、渡部昇一が暴露していたように、女の腹など借り物(畑)に過ぎないというド直球の差別意識でしかないのだから話にならないのだが。[5]

(略)皇室の継承は、①「種」(タネ)の尊さ、②神話時代から地続きである──この二つが最も重要です。

 歴史的には女帝も存在しましたが、妊娠する可能性のない方、生涯独身を誓った方のみが皇位に就きました。種が違うと困るからです。たとえば、イネやヒエ、ムギなどの種は、どの田圃に植えても育ちます。種は変わりません。しかし、畑にはセイタカアワダチソウの種が飛んできて育つことがあります。畑では種が変わってしまうのです。

ちなみに、女性天皇容認派の河西氏はこう書いている[3]が、はっきり言ってこれもおかしい。

 男性しか天皇になれなくなったのは明治になってからだ。明治政府は欧米列強に対抗するため、絶大な権限を持つ戸主を中心とする家制度を作り上げ、その象徴として皇室典範で天皇を男性に限定した。だが戦後、日本国憲法で象徴天皇制の根拠は、国民の総意となった。国民の半数は女性なのに、男性しかなれない天皇は「半分の象徴」ではないか。現代社会は男女平等に近づいており、天皇が女性であってもいいという国民の声は自然の流れだ。

敗戦以来そんな「総意」など問われたこともないし、だいたい特定の血統の中で誰の子として何番目に生まれたかなどというくだらない理由で誰かを自分も含めた「国民統合の象徴」とされるなど、私は御免だ。それが「半分の象徴」だろうが「全部の象徴」だろうがどうでもいい話だ。

というわけで、女性天皇容認派と否定派はせいぜいこれからも揉め続けて、何も決まらないまま天皇家断絶まで行っていただきたい。

 

[1] 「<代替わり考 皇位の安定継承>(1)存亡の危機 長子優先に転換を」 東京新聞 2020/5/17
[2] 「<代替わり考 皇位の安定継承>(2)旧宮家男子の皇籍取得を」 東京新聞 2020/5/18
[3] 「<代替わり考 皇位の安定継承>(3)男系男子限定は明治から」 東京新聞 2020/5/20
[4] 「<代替わり考 皇位の安定継承>(4)男子限定から女子容認を」 東京新聞 2020/5/24
[5] 渡部昇一 「摂政を置いて万世一系を」 WiLL 2016年9月号 P.41-42

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