自民党の「もやウィン」改憲マンガ、第3話の「3つの柱」では、日本国憲法の三大原則である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を取り上げている。
で、何を言うのかと思ったら、これらは「絶対に変えない」「変えてはいけない」と言うのだ。
だったら改憲なんかする必要はないではないか・・・というのは置いといて、トリックは「基本的人権の尊重」の中身にあった。
「法律にふれたり、人に迷惑かけない限り自由」というのであれば、法律さえ作ればいくらでも人権を制約できてしまう。これでは基本的人権の尊重など有名無実だ。
もちろん、日本国憲法における基本的人権の保障はそんなものではない。
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
自由や権利の行使が制約されるのは、その行使が公共の福祉に反する、つまり他者の人権に害を与える場合だけであって、それ以外の理由による制約など許されない。第13条が示すように、公共の福祉以外の理由で人権を制約するような法律の制定を禁じるのが憲法の役割なのだ。
一方、大日本帝国憲法では、法律による基本的人権の制約が可能だった。
第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
自民党は要するに、かつての帝国憲法のレベルにまで人権保障を弱体化させたいのだ。それどころか「人に迷惑かけない限り」に至っては、お気持ち一つで何とでも解釈できるのだから帝国憲法以下とさえ言える。
あたかも基本的人権を尊重するかのような顔をしながら、しれっとそれを骨抜きにしようとする自民党の手口は極めて悪質だ。