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「空母いぶき」で佐藤浩市の演じる総理が安倍なら、揶揄どころか美化だろうw

24日から公開の映画「空母いぶき」で首相役を演じている佐藤浩市の、ある発言が大炎上するという「事件」があった。

火元は阿比留瑠比(産経新聞記者)のFacebook投稿だという。

lite-ra.com

 きっかけは産経新聞の御用記者・阿比留瑠比がFacebookで5月10日夜にこんな書き込みをしたことだ。

観に行こうかと考えていた映画『空母いぶき』に関心を失った件について。『ビッグコミック』誌のインタビューに、首相役の俳優、佐藤浩市氏がこう述べているのが掲載されていたのを読んでしらけたからです。
「最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね」
「彼(首相)はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます」
 ……はあ。あえてアレコレ言う気もおきません。次は三田村某さんに続いて菅直人元首相の役でもやるといいですね。どうでもいいや。

これに極右作家の百田尚樹や極右経営者の見城剛(幻冬舎社長)が派手に燃料を投下し、ネトウヨが群がって大炎上、というわけだ。

つまり、「空母いぶき」に出てくる首相は安倍晋三であり、「思想的にかぶれた」佐藤はそれが嫌で「下痢する弱い首相」として描くように脚本を変えさせた、しかもそれは安倍が患っているという難病(潰瘍性大腸炎)を揶揄する卑怯なやり方だ、というわけだ。

本当にそうなのか? まずは問題の発言を確認する必要があるだろう。以下が『ビッグコミック』に掲載された佐藤浩市インタビューの全文である。

datsuaikokukarutonosusume.blog.jp

――総理大臣役は初めてですね。

佐藤 最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね。でも、監督やプロデューサーと「僕がやるんだったらこの垂水総理をどういう風にアレンジできるか」という話し合いをしながら引き受けました。そしてこの映画での少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても、国にとっても、民にとっても、何が正解なのかを彼の中で導き出せるような総理にしたいと思ったんです。

――総理は漢方ドリンクの入った水筒を持ち歩いていますね。

佐藤 彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます。

――劇中では名実ともに「総理」になっていく過程が描かれます。

佐藤 これはある政治家の人からきいたのですが、どんな人でも総理になると決まった瞬間に人が変わるっていうんです。それぐらい背負っていくものに対する責任を感じる、人間というのはそういうものなんですね。

――この映画からどのようなものを受け取ってもらいたいですか。

佐藤 僕はいつも言うんだけど、日本は常に「戦後」でなければいけないんです。戦争を起こしたという間違いは取り返しがつかない。だけど戦後であることは絶対に守っていかなきゃいけない。それに近いニュアンスのことを劇中でも言わせてもらっていますが、そういうことだと僕は思うんです。専守防衛とはいったいどういうものなのか、日本という島国が、これから先も明確な意思を提示しながらどうやって生きていかなきゃいけないのかを、ひとりひとりに考えていただきたいなと思います。

全然違うではないか。

むしろ、「クジ運」が悪くて国家的危機の中で重大な決断を迫られる立場に立たされ、「何が正解なのか」苦悩した首相と言われて連想するのは、東日本大震災と福島第一原発事故に直面した菅直人だろう。あのとき、菅が東電本店に怒鳴り込んで福一からの撤退を阻止しなければ東日本は壊滅していたのだ。さらに菅直人はこの危機から「脱原発」というビジョンを確立し、30年以内に大地震が起きる確率が87%という危険地域で稼働中だった浜岡原発を止めた。

一方、震災で福一が全電源を喪失する原因を作った張本人であるにもかかわらず、当時「菅首相が海水注入を止めさせた」というデマを流すなど、その足を引っ張ることばかりしていたのが安倍晋三だ。「空母いぶき」で描かれている首相とは真逆の卑劣漢である。

「空母いぶき」で佐藤浩市の演じる首相が安倍だとしたら、それは揶揄どころか美化だろうw


ちなみに、そもそも「空母いぶき」ってこういう映画だし、

原作からしてこういうマンガなので、

私も観に行くつもりはない。

それはそれ、これはこれである。

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自衛官の子が「お父さんは憲法違反なの?」と泣くから改憲が必要という安倍の超絶バカ理論

■ 安倍の与太話に合わせてまた資料を捏造するのか?

毎日のようにこういうバカげた話が流れてくるのでうんざりなのだが、皆が呆れ果ててもう何も言わない、という状況を作ることこそが安倍政権の狙いなのだろう。

FNN PRIME(2/13)

衆議院予算委員会では、憲法9条に自衛隊を明記する必要性をめぐり、安倍首相と野党議員が激論を交わした。

立憲民主党・本多平直衆院議員「(安倍首相が)下関の講演で、『お父さん憲法違反なの』と言われて、自衛官の息子さんが涙を浮かべていたという話をしているが、これは実話なのか」

安倍首相「実話であります」、「防衛省から聞いた話であります」

本多衆院議員「わたしの実感と違うんですよ。わたしは、小学校中学校とずっと自衛隊の駐屯地のそばで育ち、たくさん自衛官の息子さんがいて、こんな話が出たことがないんですよ」

安倍首相「本多議員は、わたしの言ったことはうそだと言っているんでしょ。それは非常に無礼な話ですよ。うそだって言ってるんでしょ、あなたは」、「本当だったらどうするんですか、これ」

本多衆院議員「いつどこで聞いたんですかって聞いてるんですよ。例え話なのか実話なのかと聞いただけじゃないですか」

安倍首相「こういう話をですね、わたしがうそ言うわけないじゃないですか

どうやらこの話、織田邦男という元航空自衛隊幹部(67歳)が、昔自分の息子(小学生)からそう言われたことがある、という話を何かに書いたのを安倍が読んで、さっそく改憲ネタに使い始めたらしい。

織田邦男:私も、息子が小学校でね、帰ってきて「お父さん、自衛隊って違憲なの?」って言われてショックを受けて、それをあるところに書いたら、それを最近安倍さんがそのフレーズを使うようになっちゃった(笑)

安倍は、いつどこでこの話を読んだのかなどとっくに忘れていて、信憑性を装うために「防衛省から聞いた」「資料を出す」などと口走ってしまったのだろう。いまごろ防衛省では必死でその「資料」を捏造しているのではないか。

■ そもそもこんな話が改憲の根拠になるなどあり得ない

だいたい、何十年か前に、ある自衛官が息子から「自衛隊は違憲なの?」と聞かれてショックを受けた、というだけの話が、改憲すべき理由になどなるはずがない。

この話で一番やばいのは、こんなネタで社会を分断しようとする大衆煽動者が権力を握っているという事実そのものだ。

■ 自衛官の家族を最も泣かせているのは安倍晋三

安倍は、自衛官の家族を泣かせるような違憲論は悪だと言いたいらしい。だがそれなら、自衛官の家族を最も泣かせているのは、自衛隊を日本の安全保障などとは何の関係もない危険な紛争地域に送り込んで海外派遣の既成事実を積み上げようとしている安倍晋三自身だろう。それも、将来自衛隊を米軍の下請けとして実戦に参加させるためにだ。

この男に改憲など許せば、いずれ必ず多数の自衛隊員が戦死し、その遺体を前に家族が泣き崩れる日が来るだろう。

備考:南スーダンに自衛隊を派遣したのは民主党政権だ、とか言う人が出てきそうなので付言しておくと、2013年の内戦勃発後も自衛隊を撤退させず、何度も派遣期間を延長して隊員を危険に晒し続け、しかもその状況を記録した日報の存在を隠蔽して危険はなかったと嘘をついたのは安倍政権である。

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【緊急】絶対に許してはならない幹部自衛官による「国民の敵」暴言【危険】

16日夜、自衛隊の統合幕僚監部に所属する幹部自衛官(30代、三佐)が、民進党の小西洋之参院議員に向かって、「おまえは国民の敵だ」などと罵倒する事件が発生した。

東京新聞(4/18)

 16日午後9時ごろ、三佐が国会周辺をランニング中、参院議員会館付近の路上で小西氏と偶然遭遇。小西氏によると、三佐は約15分間、「おまえは国民の敵だ」「おまえの議員活動は気持ち悪い」などとののしったという。近くにいた複数の警察官が駆け付けた後も同様の発言を繰り返し、小西氏が制止してもやめなかった。小西氏がその場から防衛省の人事担当者に電話で連絡したところ、最終的に発言を撤回した。
(略)
 統幕トップの河野(かわの)克俊統合幕僚長は同日、小西氏に謝罪。三佐について本紙の取材に「私の所に報告にも来るが、大変まじめな幹部自衛官」と評した。防衛省は「不適切な発言で、暴言とも受け止められかねない」として詳しいやりとりを調べており、処分などの対応を検討する。
 小西氏は国会でイラク派遣日報問題を連日取り上げていた。取材に「自衛官が国会議員に暴言を吐くとは空前絶後の大事件で身の毛がよだつ。河野統幕長は即刻辞任すべきだ」とした。
 イラク派遣日報問題で批判の矢面に立たされている防衛省・自衛隊内では不満がくすぶっている。陸自中央の佐官は、罵声を浴びせた三佐を「ばかなことをしてくれた」と切り捨てる一方、自衛隊の現状について「日報の探索の指示が不明確だったり、時間がない中で探索に追われている。隠蔽(いんぺい)と言われ続けることには憤りをずっと感じている」と漏らした。

その気になれば武力で国内を制圧できる組織である自衛隊の、それも幹部自衛官が、政治的見解の相違から国会議員を罵倒するなど、絶対にあってはならない暴挙である。

隊員の政治的行為を禁じた自衛隊法に違反することはもちろん、完全な文民統制に服さなければならない自衛官が、民意の代表である国会議員を罵倒・恫喝したのだ。まさに民主主義の危機である。

この自衛官本人は即刻懲戒免職、直接の監督責任を負う統合幕僚長は更迭されなければならない。防衛大臣も辞任すべきだ。

これが甘い処分で済まされるようなら、旧軍部同様に自衛隊が政治に介入してくることを許す結果になる。その行き着く先は軍部独裁による国家の破滅だ。

一応念のため言っておくが、この事件が許されないのは、罵倒されたのが野党の議員だからではない。仮に相手が「歩く国難」安倍晋三であったとしても、このような行為は絶対に許されない。

ネトウヨはこの自衛官を擁護しているようだが、彼らがやっているのは、五・一五事件の際、青年将校たちの助命嘆願運動を行った大衆と同種の愚行である。この事件での軽い判決が次には二・二六事件を引き起こし、破滅的戦争への、引き返せない道に踏み込む結果となった。

歴史から学ばない者たちは、本当に愚かだ。

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ネトウヨと極右新聞が捏造する現代の軍国美談

大半がフェイクニュースだった「軍国美談」

大日本帝国が周辺諸国への侵略を繰り返していたあの忌まわしい時代には、犠牲を強いられる臣民(特に近い将来「忠良なる皇軍兵士」となるべき少年たち)を戦場に駆り立てる手段として数多くの「軍国美談」が作られ、新聞や教科書、児童文学などを通じて盛んに宣伝された。

しかし、その大半が事実を巧妙に改変したものであるか、あるいはまったくの創作だった[1]。


美談「水兵の母」が収録された戦前の小学校5年用国語教科書。(略)=資料写真//ハンギョレ新聞社

(略)

■ ねつ造された「水兵の母」

 国民を戦争に動員するために日本政府が最も心血を注いだのは「戦争美談」だった。 当時の小学校5年用国語教科書に収録された美談「水兵の母」を見よう。

 明治27~28年、戦争(日清戦争)が終わらんとしている時であった。ある日、軍艦高千穂の一水兵が手紙を読みながら泣いていた。通りかかったある大尉がこれを見て、余りにめめしいふるまひと思って、「こら、どうした。命が惜しくなったか。妻子がこひしくなったか。軍人となって、軍に出たのを男子の面目と思はず、そのありさまは何事だ」と鋭く叱った。水兵は驚いて立ちあがり、しばらく大尉の顔を見つめていたが、「それは余りなおことばです。私には、妻も子もありません。私も、日本男子です。何で命を惜しみませう。どうぞ、これをごらんください。」といって、その手紙をさし出した。

 兵士の母親が送った手紙であった。「聞けば、そなたは豊島沖の海戦(忠清南道牙山近海で起きた日清戦争の緒戦)にも出でず、八月十日の威海衛攻撃(日清戦争で日本軍の勝利が事実上決定された戦闘)とやらにも、かくべつの働きなかりし由、母はいかにも残念に思ひ候。何のために軍(いくさ)には出で候ぞ。一命を捨てて、君の御恩に報ゆるためには候はずや。村の方々は、朝に夕に、いろいろとやさしくお世話なしくだされ、一人の子が、御国のため軍に出でしことなれば、定めし不自由なることもあらん。何にてもえんりょなくいへと、しんせつに仰せくだされ候。母は、その方々の顔を見るごとに、そなたのふがひなきことが思ひ出されて、この胸は張りさくばかりにて候」

 中内敏夫・一橋大学名誉教授は著書『軍国美談と教科書』(1988年)でこのエピソードに関して、「名も無き母子家庭の老母とその息子、このような家庭の母親が一人息子を国家のために喜んで差し出して、天皇の戦争に身を捧げるよう願っているという文は、軍の指揮部が見れば国民教育の絶好の素材になっただろう」と指摘した。しかしこの母子の現実は日本軍部が願った模範的モデルとは相当な乖離があった。 水兵の実際のモデルは、現実には病弱で豊島沖海戦が起きる前に船から下りるよう命令を受けたことがあり、エピソードが出た後にほどなくして人々の目を避けて鹿児島県の故郷へ帰り3年後に病死したためだ。

この「水兵の母」が載っている国民学校用国定教科書「初等科国語六」(5年後期向け、1943年)には、続いて「姿なき入城」という、戦死した我が子の忠義を讃えて母親が書いたという体裁の詩が載っているのだが、この教科書の教師向け指導書には、この教材の教え方としてこんなことが書かれている[2]。


本教材は、かつて世に伝えられた実話を基礎として、その感動を一遍の詩に表現したものである。しかし、かくの如く伝えられる実話は、その間に種々の理想化も行われており、いわば大東亜戦争を背景として生み出された国民的感激の一結晶であるのであって、従ってその説話の主人公を穿鑿云為するのは、少なくとも教育の目的とするところではないのである。この点前課「水兵の母」と同様であり、指導上この留意を忘れてはならない。

この解説から、そもそも「姿なき入城」は死んだ兵士の母が書いた詩などではないこと、その内容もベースとなった実話に様々な「理想化」つまり改変を加えたものであることが分かる。また、事実そのままでない点では「水兵の母」も同じだと正直に書かれている。軍国美談を教える側にとっては、その物語が児童心理に与える効果こそが重要なのであって、話の内容の正確さなど実はどうでもよかったのだ。

最も有名な軍国美談と言える「肉弾三勇士」の話も、同様に事実からはかけ離れた内容だったことが知られている[1]。

(略)日本の兵庫県のある神社に残っている肉弾三勇士関連絵画=資料写真//ハンギョレ新聞社


 当時の軍国美談の中では現実を巧妙に歪曲したりねつ造したという疑いが濃厚なものが多い。 最も代表的なものは第1次上海事変が進行中だった1932年2月22日、上海郊外の鉄条網陣地を破壊するために爆薬筒を持って肉弾攻撃を敢行した江下武二、北川丞、作江伊之助の3人の工兵を指す「肉弾3勇士」の美談だ。当時、日本のマスコミは作戦遂行のために命を捧げた三勇士を称賛する記事を書き立てたが、兵士たちが亡くなったのは死を覚悟した勇猛な作戦の結果ではなく、導火線の長さを誤って計算した“ミス”だったことを暗示する関係者の証言が出てきた

 このような“神話ねつ造”は戦争を遂行した日本大本営の得意技だった。 大本営は特殊潜水艇に乗って1941年12月8日米国の真珠湾を攻撃した海軍の「九軍神」、日本軍として最初に守備隊全員が降参せずに決死抗戦し全員が死亡した「アッツ島玉砕」などを大々的に宣伝して戦争美化の道具として使った。 しかし九軍神の潜水艇は何ら軍事的成果を上げられなかった失敗した作戦であり、アッツ島の兵士は全員玉砕したのではなく一部は生き残り米軍の捕虜になったという事実が以後の研究と実態調査を通じて明らかになっている。(略)

新たな創作軍国美談としての「噴火から民間人を守った自衛隊」と「日本人を助けて轢かれた米兵」

敗戦後は当然このような軍国美談が作られることはなくなっていたのだが、最近になって、またこの手の怪しげな「美談」が創作され始めている。たとえば1月23日に草津白根山が突然噴火した際、現場に居合わせた自衛隊員8名が自身の身を盾にして民間人を守り、噴石に当たった1人が死亡したという話や、沖縄で事故を起こした車から日本人を救出した米兵が後続車にはねれらて重傷を負ったという話がそれだ。

草津白根の話については、BuzzFeed Newsが詳細をまとめている[3]。それによると、噴火発生から約4時間後、匿名掲示板「5ちゃんねる」(旧2ちゃんねる)に民間人親子による現地からの報告と称して書き込まれたのが騒動の始まりらしい。この書き込みでは、

  • 噴火時、近くにいた自衛隊が自分たちと噴石の間に円陣を組んで立ちはだかってくれた
  • 自衛隊の1名に石が当たったが、倒れたあとまた立ち上がって守ってくれた
  • 避難を終えてその自衛官と思われる「若いお兄さん」がタンカでヘリに乗せられているところを見た

とされている。(自衛隊員の人数については記載がない。)

しかし、BuzzFeed Newsの取材への陸上幕僚監部広報室の回答によれば、噴火直後、隊員たちは噴石を避けて林の中に逃げ込んでおり、民間人の救助活動をしたという報告はなく、「円陣を8人で組み、民間人を囲んで噴石から守ったということは、可能性として極めて低い」とされている。

また、噴石に当たって死亡した隊員は49歳で、「若いお兄さん」とは言えないし、それ以前の問題として、噴石は上から降ってくるので円陣を組んで立ちはだかっても意味がない。

さらに、本当に現場に居合わせた民間人男性の証言によれば、逆にこの男性のほうが負傷した自衛隊員の救助を手伝っている[4]。

 川崎市の男性(60)は、ロープウェーの山頂駅近くからスノーボードで滑り降りようとしていた。まさにその時、「ボコボコ」という「変な音」に気が付いたという。

 直後、真っ黒い噴煙が立ち上り、噴石も数多く降ってきた。1個が20~30センチほどのものもあった。辺りがあっという間に真っ暗になり、息苦しくなった。

 近くに雪のくぼみを見つけ、しばらく身を潜めた。「2、3分くらいだと思うけど倍ほどに感じた。死ぬかと思った」。噴石が左腕や背中に当たった。着ていた上着が破れるほどだった。訓練中の自衛隊員が近くにいたが、両足の骨が折れたり、頭を打ったりした隊員がいた。無事だった右腕を使って隊員の救助を手伝った。

 使えなくなったスノーボードを片足につけたまま、自力で歩いて下山を始めた。過去に何度も来ているなじみのコースだったが、下山後、病院に運ばれて「生きてて良かった」としみじみ思った。

以上の情報から見て、上記の書き込みは明らかにフェイクである。しかしその後、この書き込みがTwitterで引用されたものにマスコミ報道で伝えられた被災自衛隊員の人数や訃報などの情報が追加され、ネット上で大量に拡散されていった。

特に、2万数千回もリツイートされている下記の中津川博郷元衆院議員(維新の会)のツイートなど、わざわざテレビ朝日「報道ステーション」への名指しの非難を追加しており、このデマを何の目的で拡散しているのか自分で暴露している。こんな人物が「正しい歴史を伝える会顧問」だというのだから、笑うに笑えない。


「日本人を救助した米兵」の話は、昨年12月1日に沖縄自動車道で発生した、車両6台がからむ事故に関するものだ。

この事故で在沖米海兵隊曹長の男性1名が意識不明の重体となった。事故発生後、沖縄タイムスと琉球新報の地元2紙は淡々と事実を報道したのだが、これに突然産経新聞が噛み付いた。この米兵は事故車から日本人運転手を救出するという勇気ある行動の結果後続車に轢かれたのであり、沖縄2紙はその事実を隠蔽しているというのだ。Web上で6ページに渡る長文記事である。

産経ニュース(12/9)

【沖縄2紙が報じないニュース】
危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー

 12月1日早朝、沖縄県沖縄市内で車6台による多重事故が発生した。死者は出なかったが、クラッシュした車から日本人を救助した在沖縄の米海兵隊曹長が不運にも後続車にはねられ、意識不明の重体となった。「誰も置き去りにしない」。そんな米海兵隊の規範を、危険を顧みずに貫いた隊員の勇敢な行動。県内外の心ある人々から称賛や早期回復を願う声がわき上がっている。ところが「米軍=悪」なる思想に凝り固まる沖縄メディアは冷淡を決め込み、その真実に触れようとはしないようだ。

 沖縄県を席巻する地元2紙のうちの「沖縄タイムス」は2日付社会面で、くだんの事故をこう伝えた。記事はベタ扱いである。(略)かたや「琉球新報」もこの事故を2日付社会面の準トップ扱いで報じた。内容はほとんど変わりない。

 しかしトルヒーヨさんはなぜ、路上で後続車にはねられるという二次事故に見舞われたのか。地元2紙の記事のどこにも書かれていない。

 実はトルヒーヨさんは、自身の車から飛び出し「横転車両の50代男性運転手」を車から脱出させた後、後方から走ってきた「米軍キャンプ・ハンセン所属の男性二等軍曹」の車にはねられたのだ。50代男性運転手は日本人である。

 沖縄自動車道といえば、時速100キロ前後の猛スピードで車が走る高速道路だ。路上に降り立つことが、どれだけ危険だったか。トルヒーヨさんは、自身を犠牲にしてまで日本人の命を救った。男性運転手が幸いにも軽傷で済んだのも、トルヒーヨさんの勇気ある行動があったからだ。

(略)

 常日頃から米軍がらみの事件・事故が発生すると、「けしからん!」「米軍は出て行け!」と言わんばかりにことさら騒ぎ立て、米軍の善行には知らぬ存ぜぬを決め込むのが、琉球新報、沖縄タイムスの2紙を筆頭とする沖縄メディアの習性である。

 かくして今回のトルヒーヨさんの美談も、シンザト被告の無期懲役判決報道にかき消され、完全に素通りされてしまった。わけても「差別」に敏感な2紙は昨今、「沖縄差別」なる造語を多用しているが、それこそ「米軍差別」ではないか。

(略)

 「反米軍」一色に染まる沖縄メディアも右にならえだ。翁長県政ともども、日本とその周辺地域の安全と安定のために日夜命がけで任務にあたる米軍への「敬意」を持ち得ないスタンスは、トルヒーヨさんへの無慈悲な対応でも浮かび上がる。

 遅ればせながらここで初めて伝えている記者自身も決して大きなことは言えないが、トルヒーヨさんの勇気ある行動は沖縄で報道に携わる人間なら決して看過できない事実である。

 「報道しない自由」を盾にこれからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ。とまれ、トルヒーヨさんの一日も早い生還を祈りたい。(那覇支局長 高木桂一)

ところが、「報道機関を名乗る資格はない」とまで罵倒された琉球新報が調査してみると、真相はまったく違っていたことが判明した。

琉球新報(2018/1/30)

産経報道「米兵が救助」米軍が否定 昨年12月沖縄自動車道多重事故

 昨年12月1日に沖縄自動車道を走行中の米海兵隊曹長の男性が、意識不明の重体となった人身事故で、産経新聞が「曹長は日本人運転手を救出した後に事故に遭った」という内容の記事を掲載し、救出を報じない沖縄メディアを「報道機関を名乗る資格はない」などと批判した。しかし、米海兵隊は29日までに「(曹長は)救助行為はしていない」と本紙取材に回答し、県警も「救助の事実は確認されていない」としている。産経記事の内容は米軍から否定された格好だ。県警交通機動隊によると、産経新聞は事故後一度も同隊に取材していないという。産経新聞は事実確認が不十分なまま、誤った情報に基づいて沖縄メディアを批判した可能性が高い。産経新聞の高木桂一那覇支局長は「当時のしかるべき取材で得た情報に基づいて書いた」と答えた。
(略)
 しかし海兵隊は現場で目撃した隊員の証言などから1月中旬、「(曹長は)他の車両の運転手の安否を確認したが、救助行為はしていない」と回答。県警交通機動隊によると、事故で最初に横転した車の運転手は当初「2人の日本人に救助された」と話していたという。
 海兵隊によると、曹長は意識を回復しリハビリに励んでいるという。産経ニュースはその後、曹長の回復や事実誤認については報じていない。
(略)

◆海兵隊、投稿を訂正/「誤った情報の結果」

 事故は昨年12月1日午前4時50分ごろ、沖縄市知花の沖縄自動車道北向け車線で発生した。最初に左側の車線で追突事故が発生し軽自動車が横転した。追突現場の後方で停車した別の車に曹長の運転する車が接触し、さらに後ろから米軍の貨物車が衝突した。その後、後方から追い越し車線を走ってきた米海兵隊員の運転する乗用車に、路上にいた曹長がはねられた。

 米海兵隊第3海兵兵站(たん)群の英語ホームページ記事によると、曹長は接触事故後に現場にいた別の隊員に近づき無事を確認した後「自分の車を動かすよ」と言って離れた直後にはねられたという。

 在日米海兵隊のツイッターでは12月、曹長へ回復を祈るメッセージを送る県民の運動について発信する際に「多重事故で横転した車から県民を救出した直後に車にひかれ」と、救助したと断定した書き方をしていた。その後、このツイートは「多重事故で車にひかれ意識不明の重体になった」と訂正された。

 海兵隊は取材に対し「事故に関わった人から誤った情報が寄せられた結果(誤りが)起こった」と説明している。

(略)

 曹長の回復を願う家族の思いや県民の活動は尊いものだ。しかし、報道機関が報道する際は、当然ながら事実確認が求められる。最初に米軍側が説明を誤った可能性を差し引いても、少なくとも県警に取材せずに書ける内容ではなかったと考える。
 産経新聞は、自らの胸に手を当てて「報道機関を名乗る資格があるか」を問うてほしい。(本紙社会部・沖田 有吾)

琉球新報(2018/2/3)

「米軍関係者に救助された記憶はない」 当事者も産経報道を否定

 昨年12月1日に沖縄市の沖縄自動車道で発生し、米海兵隊曹長の男性が一時意識不明の重体に陥った事故について、曹長に救助されたとされていた横転車両の運転手の男性が2日、代理人を通じ「米軍関係者に救助された記憶はない」などと当時の状況を説明した

(略)

 しかし2日に代理人の弁護士を通じて発表された書面では、男性の車は追突され運転手側が下になる形で横転した。直後に追突車両の日本人運転手が助手席側のドアを開けたので、男性は自力ではい上がって外に出て路肩に避難した。警察と救急車を電話で呼んだ後に、駆け付けた米軍関係者から「大丈夫か」と声を掛けられたが、この米軍関係者が曹長かどうかは分からないという。弁護士によると男性は曹長の安否を気遣い「一日も早い回復を祈っている」としている。

さらに、ニュースサイトHUNTERの取材によれば、問題の記事を書いた産経の那覇支局長は、間違いを指摘されたにもかかわらず、「警察には確認していない」「海兵隊に事実確認をするつもりはない」と開き直っている[5]。現場検証を行った警察にすら取材せずにこんな記事を書き飛ばすとは、報道機関を名乗る資格がないのは産経のほうだろう。

■「恥」はどちらか

 「顔を知らないから取材には応じない」には呆れるしかない。それなら「顔を知らない読者からの問い合わせ」にはどう対応するのか?この問いに対し慌てたところで、産経は報道失格だろう。支局長が一方的に宣言した「オフレコ」については意味不明だ。
 結論は「警察には確認していない」。海兵隊への事実確認については、琉球新報に間違いを指摘された形になっているにもかかわらず「これを受けて海兵隊に確認しようとは考えていませんけど」――。事実のみを追い続けるのが報道であるなら、産経はこれを否定したことになる。同紙は、ネトウヨあたりが流した不確かな「救助」情報を前提に、見込みに合わせた取材で沖縄メディアを批判したのではないか。虚報の疑いが生じた以上、産経は自ら検証し直し、間違いと分かった段階で沖縄メディアに謝罪すべきだろう。日本人なら「恥」を知るべきだ。


草津白根の自衛隊美談も、沖縄の米兵美談も、「感動的な物語」による意識誘導さえできればそれが事実かどうかなどどうでもいい、という作り手の意識の低劣さにおいて、かつての軍国美談と同質のものである。違いは、戦前戦中の軍国美談は旧帝国軍部が作り流布させていたが、今はネトウヨ政治家や極右プロパガンダメディアがその役割を果たしていることくらいだ。

また、この手の安っぽい「美談」が容易に通用してしまうのは、それだけこの社会の空気が戦前のそれに近づいてきているということでもある。厳に警戒しなければならない。

[1] 『日本の歴史教科書から軍国美談はいかに消えたか(2)』 Hankyoreh Japan 2015/10/24
[2] 『初等科国語六 教師用』 文部省 1943年 P.33
[3] 籏智広太 『草津白根山噴火「自衛隊員8人が円陣になって民間人を守り、死亡した」は本当か』 BuzzFeed News 2018/1/25
[4] 『ドーンと爆発音「噴火だ!」噴石が天井破る 地元男性』 朝日新聞デジタル 2018/1/23
[5] 『産経新聞 沖縄メディア攻撃で虚報の可能性 那覇支局長との一問一答』 ニュースサイトHUNTER 2018/1/31

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尖閣接続水域騒動、先に入っていたのは自衛隊のほうでしたというオチ

尖閣諸島の接続水域に中国軍の艦艇が入ったとかで、またマスコミが大仰に騒いでいる。

東京新聞(1/12)

尖閣接続水域に潜水艦 初確認、中国軍艦艇も航行

 防衛省は十一日、沖縄県・尖閣諸島の大正島周辺の領海外側にある接続水域で、潜った状態の外国の潜水艦一隻と中国海軍のフリゲート艦一隻が航行するのを確認した。(略)


 首相官邸は危機管理センターの情報連絡室で情報を収集し、分析。菅義偉官房長官は十一日の記者会見で「中国側に関係改善の流れを阻害することがないように強く求めていきたい」と述べた。杉山晋輔外務事務次官も中国の程永華(ていえいか)駐日大使に重大な懸念を伝えた。
 小野寺五典防衛相は十一日、防衛省で記者団に「緊張を一方的に高める行為で深刻に懸念している」と語った。
(略)
◆「海自艦を監視」「正当」中国側
 【北京=安藤淳】中国外務省の陸慷(りくこう)報道局長は十一日の定例会見で、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に中国海軍の艦船が入ったことについて「赤尾嶼(せきびしょ)(日本名・大正島)東北側の接続水域に、海上自衛艦二隻が先に入って活動したため、中国海軍は全行程を追跡、監視した」と述べた。

だが、このような日本の騒ぎ方は、いつものことながら何重にもおかしい。

まず、尖閣諸島は日本、中国、そして(なぜか無視されがちだが)台湾のいずれもが領有権を主張する係争地域であって、日本の「固有の領土」などではない。

また、日本と中国の間には、尖閣諸島の帰属問題については将来世代に解決を委ね、当面棚上げにしようという合意があった。

にもかかわらず、一方的に「国有化」などという愚かなことをやって問題に火を付けたのは日本側である。

さらに今回、中国から「先に接続水域に入ったのは自衛隊のほうだ」と指摘されると、「それで何が悪い?」と、指摘が事実だったことを認めて開き直る始末だ。

産経新聞(1/11)

外務省幹部「自衛隊が接続水域に入って何が悪い」 中国側主張に反論

 外務省幹部は11日、中国海軍の艦船による沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域への進入をめぐり、中国側が「自衛隊が先に接続水域に入った」と主張していることについて「自衛隊の艦船が接続水域に入って何が悪い」と中国側の主張に反論した

だったら、最初に自衛隊が入ったりしなければ何も問題など起こらなかったではないか。まったく、どうしようもなく愚かな政府だ。その愚かな政府を監視も批判もせず、追従するだけのマスコミも同罪である。

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見た目よりはるかに危険な憲法9条への自衛隊追記

安倍晋三は最近、憲法9条の1項2項は残したまま、3項を新設して自衛隊保持を書き込むという、従来の自民党改憲草案とも異なる奇妙な案を主張しだしている。一見、既成事実を追認するだけで大したことではないように見えるこの改憲案がどれほど危険か、福島雅典氏(京大名誉教授)の指摘が重要なポイントを突いていたのでメモ。

東京新聞(7/30):

(略)
 事実上の軍隊である自衛隊を明記すると、国に憲法上の義務が生ずる。すなわち、国は紛争を抑止するに足る兵力と装備に責任を持たねばならない。自衛隊はすでに集団的自衛と称し、海外で米軍と行動を共にしている。9条に自衛隊を明記することで、この先、どれだけの兵力・装備が要るようになるのだろうか。そもそも自衛隊の人員は足りるのか。それどころか、志願者はほとんどいなくなることが想定される。
 となれば、憲法13条の「公共の福祉」に基づいて国民に応分の負担が求められることになるだろう。徴兵制だ。高等教育までの無償化を憲法に盛り込むこととセットで考えれば、自衛隊員として国を守るのは国民の当然の義務になる
 政府は集団的自衛権の行使を可能にし、武器輸出も解禁。特定秘密保護法に加え「共謀罪」法を成立させ、恣意的な捜査を可能にして治安維持を図ろうとしている。軍民両用研究という名の下に武器開発に大学を動員し始めた。残るは徴兵制だけだ。こうして官産軍学複合体ができあがる
 憲法前文と9条は高き理念であるがゆえに価値がある。この理念を失った瞬間に日本は大きく変質する。9条と自衛隊との矛盾をどうすべきか、護憲派は悩んでいるが、矛盾があるからこそ、政府は平和のための絶え間ない努力を続けねばならない。この矛盾をバネに世界に実効性ある平和的手段を提案、実践し続けることこそ、日本がすべきことだ。

福島氏の言うとおり、戦争放棄と戦力不保持を謳う9条の下で違憲の疑いが濃厚な(私に言わせれば「疑い」どころか明白に違憲な)自衛隊が「正当性のない既成事実」として存在している現状と、晴れて憲法上に根拠を得た後では、状況はまったく違う。自衛隊保持が憲法の要請する義務となれば、今でさえ膨張に歯止めのかからない自衛隊は、戦前の軍部並みに暴走していくだろう。

いかなる形であろうと、9条をいじることなど決して許してはならない。

ちなみに、この福島氏の見解のうち、「矛盾があるからこそ」以下の部分には、私は同意できない。護憲派が自信を持って9条の理念そのものである戦力不保持を主張できないようでは、説得力のある平和的手段の提案・実践など到底無理な話だ。

こちらの記事でも書いたとおり、「この矛盾」は、自衛隊を武器を持たない災害救助隊に改組することによって解消すべきなのだ。そうしてこそ日本は世界に「実効性ある平和的手段」を提供できるようになるし、また自らの安全をも真に確実なものとすることができる。

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日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか

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対北朝鮮ミサイル防空大演習を嗤う

嗤うしかないバカCMに3億6千万

北朝鮮への敵意とナショナリズムを煽ることで少しでも支持率を稼ごうという目論見なのだろうが、安倍政権がバカとしか言いようのない政府広報をテレビで流している[1]。弾道ミサイルの落下に備えて、屋内に退避したり物陰に隠れて身を守れというのだ。しかも、わずか30秒のこんな紙芝居に3億6千万もかけたという(制作費+放映費1億4千万、新聞広告1億4千万、ウェブ広告8千万[2])。言うまでもなく、全額我々の税金である。

 

有害無益な「避難訓練」まで実施

CMだけではない。一部地域ではまったく無意味な避難訓練まで実施させている。

戦時中の竹槍訓練みたいなことをさせておいて、「どういう行動を取ったらいいか考えてもらう」とは何事か。こんな馬鹿げた「避難」などしなくて済む政策を考えるのがお前たちの仕事ではないか。

着弾前の警告・避難など不可能

仮に、本当に北朝鮮が日本に向けて弾道ミサイルを撃ってきたら、政府が言うような事前の警告と避難は可能なのか?

そんなことなどできはしない[3]。

 政府は4月21日、北朝鮮の弾道ミサイルに対する住民避難訓練を早期に実施するよう都道府県に求めた。このため各市町村だけでなく、企業、業界団体、学校などでも、ミサイル飛来時の対策が検討され、学童、保護者への通知なども行われている。これらは弾道ミサイル発射の警報が落下の4分前に出ることを前提としている。だが現実には、これまで警報を出せたのは北朝鮮が事前に発射を通告していた人工衛星打ち上げの際の2回だけだ。北朝鮮は予告なしに北海道沖、秋田沖などの日本海に向けて次々と弾道ミサイルを発射し、実験や戦力の誇示をしてきたが、それに対しては陸地で警報が出なかったのはもちろん、船舶に対する注意報が出たのもミサイルが落下した後だった。

 菅官房長官はその度に「事前通告なしに発射されると、どこに飛ぶか事前に察知することは極めて難しい」と弁解してきた。実戦で弾道ミサイル攻撃をする場合に相手が事前通告をしてくれるはずがない。ミサイルの落下前に警報を出すことが至難であることを知りながら、あたかもそれが可能であるかの如き想定で対策を示し、訓練をさせるのは国民に対して不遜の極みだ。

北朝鮮は日本海を挟んだ隣国だ。日本各地までの距離はわずか700Kmから1,400Km程度。そんな近距離から弾道ミサイルを撃たれたら、長くとも発射後10分程度で着弾してしまう。実戦ではあり得ない事前通告なしに着弾前の警報を出すことなど不可能だし、仮に出せたとしてもまともに避難できる時間的余裕はない。

ちなみに、今日も北朝鮮はミサイルを発射し、ICBMの発射実験に成功したと発表した。今日の場合、防衛省は発射から約12分後という「異例の早さ」で発表を行い、「北朝鮮が事前に発射を予告した事例以外で、落下前に発表したのは初めて」と語っている[4]が、落下前に発表できたのは2,800Kmもの高度まで打ち上げ40分間も飛び続ける特殊ケースだったからで、直接日本本土を狙われていたら着弾には間に合わなかっただろう。

あえて無意味な「避難訓練」をやらせる理由

政府の要請に応えて避難訓練を実際に行った場所(今後の予定含む)を調べてみると、次のような結果になった。

  • 3月17日 秋田県男鹿市
  • 6月4日 山口県阿武町
  • 6月4日 福岡県大野城市
  • 6月9日 山形県酒田市
  • 6月12日 新潟県燕市、福岡県吉富町
  • 7月10日 愛媛県西条市(予定)
  • 7月14日 富山県高岡市(予定)
  • 7月20日 長崎県雲仙市(予定)

いずれも、大都市でもなければ、燕市を除けば原発など核施設の近隣でもない。要するに、北朝鮮にとって最も攻撃する価値のない、一番狙われにくい場所なのだ。

 某国から長距離弾道ミサイルが発射され、全国瞬時警報システム(Jアラート)の発射情報後4分で日本の領海に着弾する-。訓練は、こんなシナリオで行われた。開始と同時に、Jアラートを受信すると自動的に鳴る「ホワーン」という独特な音の国民保護サイレンが響く。次いで「訓練。訓練。ミサイルが発射されたもようです。頑丈な建物や地下に避難してください」とアナウンス。

 参加者はまだ動かない。1分後、「ただちに避難。ただちに頑丈な建物や地下に避難してください。ミサイルが落下する可能性があります」。この第2報を受け、住民は建物の陰と、校舎の中の二手に分かれて避難を始めた。

 だが、走る人はいない。走れないお年寄りも多い。車いすを中学生が押す姿もある。建物の陰に集まった人からは「かくれんぼみたい」。市職員が「皆さん、身をかがめて頭を守ってください」と叫ぶ。

 北朝鮮は早朝5時台に発射することが多い。「どうせ本当にミサイルが落ちたら助からん。やっても無駄。運命に任せるしかなかよ」と82歳の女性が言う。池田慶司さん(68)の感想は「訓練は現実味がなかった」。同市の田代崇憲危機管理課長は「訓練に100パーセントの正解はなく、手探りで進めていくしかない」と話した。

 

日本の安全保障はここが間違っている!

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