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ナンジ人民 家で死ね

スガがとうとう、新型コロナウイルス感染症の患者のうち、入院対象を「重症者など」に限定すると言い出した。

東京新聞(8/3)

菅首相「重症リスクの高い人以外は自宅療養」 政府、病床不足で方針転換 

 政府は2日、新型コロナウイルス感染症の医療提供体制に関する閣僚会議を首相官邸で開き、入院対象を重症者らに限定する方針を決めた。肺炎などの症状がある中等症のうち重症化リスクが低い人は自宅療養とし、家庭内感染の恐れや自宅療養が困難な場合は、ホテルなどの宿泊療養も可能とする。デルタ株の広がりで新規感染者が1万人を超える日もあり、病床不足への懸念が強まっているため、事実上の方針転換となる。

(略)

 菅義偉首相は閣僚会議で「重症患者や重症リスクの高い方以外は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなれば入院できる体制を整備する」と表明した。重症化を防ぐ効果がある新治療薬の抗体カクテル療法について「50代以上や基礎疾患のある方に積極的に投与し、在宅患者も含めた取り組みを進める」とも述べた。入院していなくても治療に使えるよう検討する。

 また健康観察強化のため、自宅療養する人の血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターの配布や、往診する医師の診療報酬を手厚くする。自宅や宿泊療養者の容体急変に備え、医療機関に空きベッドも確保しておく。(共同)

いつものことだが、言っていることが滅茶苦茶である。

「中等症」とは、その名前から印象を受けるような程度の症状ではない。肺炎を起こしていて呼吸困難があり、人工呼吸器までは必要ないものの、ひどければ(中等症II)酸素吸入が必要となるレベルである。体感的には「多くの人にとって人生で一番苦しい」というくらいの苦しみを伴う。

それでも入院させないというのだ。


スガは、「症状が悪くなれば入院できる体制を整備する」「容体急変に備え、医療機関に空きベッドも確保しておく」などと言うが、どちらも絵に描いた餅である。昨年春から1年半もの間、ずっと検査の拡充も医療体制の整備も怠ってきた結果が今なのに、急にそんなことができるはずがない。


だいたい「症状が悪くなれば」「容体急変に備え」などと言っても、自宅で「療養」させられている患者や家族に病状の判断などできはしない。しかも容体が悪くなるときには急激に悪くなるのがコロナの特徴なのだから、一人暮らしの人など、自分で気がついたときにはもう外部に連絡する力もないだろう。また、一般家庭できちんとした隔離などできないのだから、同居家族がいたらいたで、結局一家全員感染して寝込む結果になるのが落ちだ。


抗体カクテル療法を「積極的に投与し、在宅患者も含めた取り組みを進める」などというのも戯言に過ぎない。自クリニックにコロナ病棟を作り患者の治療にあたっているインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁医師が次のように指摘している。

日刊スポーツ(8/3)

倉持医師は、「中等症2とかで治療に介入していてはもう間に合わない。より早い段階で治療に介入しなければいけないので抗体カクテル療法を承認したはず。その治療は軽症者のうちにしなければならないが、入院しなければ薬は使えない。言っていることがめちゃくちゃです」。

(略)

ホランが自宅療養への不安について質問をすると、倉持医師は「デルタ株はより手ごわくなっているのに、酸素飽和度の(機器)だけ渡して、1年半もたっているのにこんなことを言っているというのが、医療現場からすると信じられないですし、まっとうじゃない」と語った。

現場の声として「医療現場に治療薬を早く渡していただきたい」とし(略)レムデシビルや抗体カクテル療法の薬も、数が足りないので入院でしか使うなと厚労相から通達が出ている。外来にたくさん患者さんが来ていて、早く使ってあげたいがそれができないので非常に困っている」と訴えた。


コロナ対策にまわすべき金をGoToだのオリンピックだのにさんざん空費しておいて、その当然の結果として医療崩壊が発生すると、今度は病院の廊下や路上に患者があふれる「絵」を撮らせないために、黙って自宅で死ねというわけだ。

もちろん自分たちだけは万全な対策をして安全な場所にいるから平気なのである。


敗戦翌年の1946年、空襲被害者や戦災孤児がばたばた餓死していくという食糧危機の中で自分たちだけはたらふく食っていた天皇・皇族や政府要人たちの態度は「朕はタラフク食ってるぞ ナンジ人民 飢えて死ね」だと非難を浴びた。

いま菅スガ政権がやっていることはまさにこれと同じ。「ナンジ人民 家で死ね」だ。

【2021/8/6追記】

ちなみに、中国がやっていることはまったく逆。どちらが正しい感染症対策かは自明だろう。


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