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温暖化を放置すればアメリカは100年以内に滅亡するという警告

地球温暖化は着実に進行している。

今年5月、世界気象機関(WMO)は、産業革命前と比べた世界平均気温の上昇が、2027年までに66%の確率で1.5℃を超えるとする報告をまとめた。

BBC NEWS Japan(5/24)

地球の平均気温はここ数十年で少しずつ上がり続けている。2016年には、産業革命以前からの上昇値が1.28度を記録した。

そして今、科学者らはこの記録が破られると確信している。2027年までに1.28度以上になる確率は98%だという。

さらに、今後3年以内に1.5度の目標値を初めて上回る可能性が確実になってきたとしている。

イギリス気象庁で長期予測を主導しているアダム・スケイフ教授は、「年間平均気温が一時的に1.5度を超える事態が、本当に手が届くところまで来ている。ここまで近づいたのは人類史上初めてだ」と語った。スケイフ教授は、世界各地の気象当局のデータを集めている。

温暖化がこのまま進行して1.5℃を超え、2℃に到達したらどうなるか。2017年にヒストリーチャンネルで放映されたドキュメンタリー『摂氏2度 -- 人類滅亡のカウントダウン』(原題:”2 DEGREES – THE POINT OF NO RETURN”)が、その結末を警告している。

原題が示す通り、2℃は「THE POINT OF NO RETURN」であって、これを超えると、温暖化が温暖化を呼ぶ正のフィードバックによって、もはやいくら温暖化ガスを削減しても進行を止められなくなる。

今でさえアメリカは毎年深刻な山火事に襲われ、巨大なハリケーンや竜巻もしばしば発生しているのに、今後はどうなっていくのか。番組はこう警告している。

2042年:温暖化が2℃に到達。西部の夏の山火事はカリフォルニアからアイダホ、ユタ、コロラドの各州まで拡大し、森林ばかりでなく農地や都市も焼き尽くされる。

山火事で破壊された周囲の街の人々が流れ込んでロサンゼルスの人口は2倍になり、広大なスラム街が広がる。そのロサンゼルスも山火事の煙でスモッグに覆われ、昼夜の区別もつかないほどになる。人々はスモッグによる呼吸器疾患に苦しめられる。

2050年:温暖化が2.5℃に到達。アメリカ南西部では酷暑により昼間屋外にいるだけで命の危険を生じるようになり、農業も建設工事もほぼ不可能になる。

2054年:とめどない熱波と乾燥により、ラスベガスに電力を供給していた周囲のダムが空になる。電力が得られなくなったラスベガスは放棄されて廃墟と化す。

2061年:乾燥化が進む西海岸とは逆に、アメリカ中西部では巨大な暴風雨が相次ぎ、雨量が従来の3倍に増大。ミシシッピ川など主要河川は氾濫し、豪雨に耐えきれず道路や橋が崩壊する。また洪水後は汚水が水源に流れ込み飲料水が枯渇する。

2069年:温暖化が3℃に到達。「冬」がなくなるため寒さで死ななくなった蚊が大量発生し、熱帯型の伝染病が大流行する。蚊の軍団は南から北へと進軍し、ニューヨークなど東海岸の都市は荒廃していく。

2071年:あらゆる種類の天災と疫病により、アメリカの人口は激減。この時点で、2017年時の3億2千万人から2億人まで減少している。

2074年:新種の病原体や変異株が続出し、ニューヨークでの伝染病罹患率は80%となる。セントラルパークが臨時病棟で埋め尽くされるが、ほとんどの患者は医療を受けられない。

2086年:海水温の上昇によりメキシコ湾沿岸部を襲うハリケーンは巨大化し、カテゴリー6(最大風速89m/s)から7(107m/s)に達する。猛烈な暴風雨と12mに達する高潮で沿岸部の都市は壊滅する。港湾施設がすべて破壊されるため、貿易の95%を海運に頼っているアメリカは商品の輸出も輸入もできなくなる。

2095年:温暖化が4℃に到達。すでに約8000万人が暴風雨と洪水に追われて沿岸部から内陸部へと避難している。アメリカの人口はおよそ半分にまで減少。

北極の巨大氷河の融解により、北部では地震の頻度と規模が増大していく。とりわけアラスカが巨大地震に襲われる。10分間も続く激しい揺れでアンカレッジの街は全滅する。

2111年:温暖化が5℃に到達。東部は洪水と疫病、北西部は地震と火山噴火で生活基盤が破壊され、もはや国全体が難民キャンプのような状態に陥っている。生き残った人々は小規模な農業で食料を得ているが、暑すぎる気候で作物が育たず、アメリカ全土を飢餓が襲う。

2117年:温暖化が6℃に到達。北極の氷床はもう存在しない。南極の氷も溶けて海水面は60m上昇。沿岸部はすべて海中に没する。人口は数千人(数千万人ではない)規模に激減。

生き残った人々は、海岸から遠く標高が高くて冷涼なモンタナ州ボーズマンに集まっている。しかしここでも酷暑でどんな農作物も育たなくなっており、もはや人々に生き延びる手立てはない。

このドキュメンタリーが制作された2017年時点で気温上昇は1℃ほどだったが、それから6年後の現在、もう1.5℃が眼の前に迫っている。番組では温暖化に伴う気候変動を防止できる可能性のある先進テクノロジーもいくつか紹介されているのだが、現時点で実用化されているものは一つもない。

それにしても、これだけ自国の破滅的な未来が見えているのに、肝心のアメリカに温暖化対策に真剣に取り組む姿勢が見られないのはどいういうことか。以前こちらの記事に書いたが、温暖化を制御可能なレベルに抑え込むのに必要な追加コストは世界のGDPの2%程度(年200兆円弱)と見積られており、世界の軍事費合計(年220兆円)より少ないのだ。

今もアメリカは世界全体の4割近い軍事費を費やしながら、台頭する中国を抑え込むことにばかり躍起になっている。