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データから見るオスプレイの危険性

 沖縄では人口密集地の上を我が物顔で飛び回り、いまや沖縄差別の象徴の一つともなっているオスプレイだが、この機種の危険性について指摘すると、科学的・客観的にデータを見ればオスプレイは安全なのだと親切に教えてくれる人たちがどこからか湧いてくる。なので、今回はオスプレイの危険性をデータから見ていくことにする。
 
オスプレイ安全説の元ネタはこのあたりらしい。

黒井文太郎 『「安全性」と「基地問題」を混同しているオスプレイ沖縄配備への反対運動』[1]

 しかし、結論としては、上記のような話にはならない。オスプレイには構造上の欠陥はなく、他の米軍機に比べて、特に危険ではないからである。

 すでに広く報道されている通り、沖縄に配備されるMV-22オスプレイの飛行10万時間あたりの重大事故率は、他の海兵隊の航空機の平均値よりも低い。といっても、それほど突出して低いわけでもないので、要するに“普通”ということになる。

(略)

 防衛省と外務省は9月19日、「MV-22オスプレイの沖縄配備について」との報告書を公表した。2012年4月のモロッコでの墜落事故、および6月のフロリダでの墜落事故(こちらは特殊作戦用CV-22)の原因究明調査を踏まえ検証した結果、「機体の安全性には特段の問題はなく、MV-22オスプレイが他の航空機と比べて特に危険と考える根拠は見出し得ない」と結論付けられた。

 上記のモロッコとフロリダでの相次いだ墜落事故が、オスプレイ危険説のいちばんの論拠だったが、米当局の調査結果では、いずれも人為的な操作ミスであり、機体の欠陥が原因ではなかったとされた。十分に根拠のある内容であり、反対派がこれを“論理的”に否定することは不可能であろう。

 
黒井氏の主張の要点は、(1)「飛行10万時間あたりの重大事故率」という客観的データから見て、オスプレイの事故率は海兵隊の航空機の平均より低く、むしろ安全な部類に入る、(2)最近(2012年10月時点から見て)の2件の墜落事故も、調査によれば機体の欠陥が原因ではないとの結論が出ているから問題はない、ということだ。

で、こうした主張の根拠として挙げられているのが、防衛省・外務省による報告書『MV-22オスプレイの沖縄配備について』[2]なのだが、現物を読んでみればわかるとおり、この報告書の中味はほとんど噴飯物である。例えば、こんなことが書かれている。
 

3)運用に係る安全性

(略)

 他方で、引き続き地元住民に懸念が広がっていることを踏まえれば、オスプレイが実際に日本で飛行運用を行うに当たっても、その安全性を最大限に確保し,地元の懸念を可能な限り払拭できるよう、必要な措置について日米間でよく確認しておく必要がある。このような観点から、日米両政府は、日米合同委員会などの場において様々な議論を行ってきた。その結果、日米合同委員会において、上述の再発防止策に加え、MV-22の日本における運用に関して以下のとおり合意した(別添3参照) 。
 

  • 低空飛行訓練について、MV-22が訓練航法経路を使用して飛行訓練を実施する際に、気候等の安全上の理由がある場合を除き、我が国航空法及び国際基準に規定されている最低安全高度(地上500フィート)以上の高度で飛行すること。また、原子力エネルギー施設、史跡、民間空港、人口密集地域、学校、病院等の上空を避けて飛行すること
     
  • 米軍施設・区域周辺における飛行経路について、周辺住民への影響を最小限とするため、進入及び出発経路を可能な限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定するとともに、可能な限り海上を飛行すること・普天間飛行場での離陸や進入時の飛行の安全を確保するため、既存の場周経路を利用し、また、既存の手順を遵守すること。
     
  • 地元において懸念の強い垂直離着陸モードや転換モードでの飛行について、運用上必要となる場合を除き、垂直離着陸モードでの飛行を米軍の施設及び区域内に限ること、また、転換モードの時間を可能な限り短くすること。

 

150712-2565c 
周囲すべてを市街地で囲まれている普天間基地↑を離着陸するオスプレイが、どうやって人口密集地域上空を避けて飛行できるのだろうか。できるわけがない。また、転換モードでの飛行距離は通常数キロメートルに及ぶ。これを「可能な限り短く」したところで、市街地上空を危険な転換モードで飛ぶことに変わりはないし、無理に短縮しようとすればさらに危険度が上がるだけだ。しかもご丁寧に、「運用上必要となる場合を除き」と、抜け道まで与えてある。

要するにこの「報告書」は、できもしなければやるつもりもないことを書き連ねて、「だから安全だ」と言っているに過ぎない。安全を確保しているかのような形式さえ整えられればいいのであって、沖縄住民の安全など、実はどうでもいいのである。「運用」以外の部分も同様、単に米軍側の言い分をそのまま追認しているだけだ。
 
では、事故率の話に戻ろう。「報告書」はこう書いている。

②事故率

(略)

 その上で、敢えて参考になると考えられる数字としては、米海兵隊は、10万飛行時間当たりのクラスA(政府への被害総額が200万ドル以上、又は死亡等を引き起こした事故等)飛行事故の件数を事故率として整理しており、当該数字を米国内法に基づく環境影響評価等においても使用している。なお、クラスB(政府への被害総額が50万ドル以上200万ドル未満、又は負傷等が恒久的な部分的障害をもたらした事故等)及びクラスC(政府への被害総額が5万ドル以上50万ドル未満、又は1日以上の欠勤をもたらす負傷等を引き起こした事故等)の飛行事故については、上述したことに加え、クラスAの飛行事故と比較して、乗員や周辺住民への危険の度合いが小さく、社会的影響も小さいことから、これらが安全性の指標として用いられていないことについては一定の合理性があるものと考えられる。当該基準による事故率は2012年4月現在で1.93(モロッコにおける事故を含む)であり、海兵隊の平均2.45より低い数字となっている。また、全軍種でみた場合の10年間の事故率や導入当初10万飛行時間におけるクラスA飛行事故の件数などもMV-22は低い数字となっている。クラスB及びクラスCの事故件数が多いとの指摘もあるが、これらは飛行事故だけではなく、機体整備員がナセル作業台から落下し負傷したことや整備員のミスによる機体損傷なども含まれた数字であり、機体の安全性を示す指標としては不適切である。また、CV-22の事故率を合算して算出すべきとの指摘もあるところであるが、CV-22とMV-22は任務が異なり、訓練活動を含む運用形態も大きく相違していることから、これらを合算しても有意なデータが得られるものではない。

 以上を踏まえれば、事故率をもって機体の安全性を議論することは必ずしも適当ではないが、一定の合理性を持つ基準で算出したデータによればMV-22の事故率や件数は高い数字でないとみることができる。

 
この部分を読んだだけでも「報告書」の屁理屈ぶりが良く分かる。同じオスプレイである空軍用CV-22の事故率を合算しない理由として「任務が異なり、訓練活動を含む運用形態も大きく相違している」から意味がないと言っているが、それならオスプレイの事故率と、任務も運用形態も違う他機種の事故率を比較するのも意味がないはずだ。この理屈に従って最も比較に意味がある機種を選ぶなら、それはオスプレイによってリプレースされる旧型の輸送ヘリCH-46だろう。そのCH-46のクラスA事故率は同じ期間で1.11、オスプレイMV-22よりずっと低いのである。(画像は2012年9月27日放映のそもそも総研「そもそも沖縄の人は知っているが本土の人はあまり知らないオスプレイの現実」から。)

沖縄では、クラスA事故率1.11のCH-46が1.93のオスプレイに置き換えられたのだから、クラスA事故率で安全性を判断できるという米軍の主張をそのまま認めたとしても、危険度は大きく上がったのである。

 

【2016/12/23追記】
この10万飛行時間当り1.93というオスプレイ(MV-22)のクラスA事故率だが、これは2012年4月時点での数字で、その後2013年9月末には2.61、最新の2015年9月末では2.64まで上昇している[4]。最新の値は同時期の海兵隊平均と同じであり、もはや「海兵隊平均より低いから安全」という屁理屈すら成立し得なくなっている。先日沖縄で墜落して大破した事故を計算に入れれば、この数字はさらに上がるだろう。

だいたい、航空機の事故率というものは、時間が経つほど運用経験が蓄積され、細かい改善も重ねられて、次第に下がっていくのが普通だ。しかしオスプレイでは逆に、現場で使われれば使われるほど事故率が上がっている。これは機体そのものに操縦技術などではカバーできない欠陥があるためだと考えるべきだろう。

[4] 『オスプレイ、事故率上昇=操縦難しさ指摘も』 時事通信 2016/12/15
【追記終り】

 

さらに、そもそもここに出てきたオスプレイのクラスA事故率1.93という数字はどの程度信用できるのか。この点については、米誌「WIRED」のWeb掲載記事[3]が詳細に追求しているので、その一部を訳出しておく。
 

Osprey Down: Marines Shift Story on Controversial Warplane’s Safety Record

オスプレイ・ダウン:海兵隊は論争の的となっている軍用機の安全記録に関する言い分を変えている

(略)

2006年3月27日、ノースカロライナ州ニューリバーの海兵隊航空基地で、中型ティルトローター訓練飛行隊204に割り当てられた1機のMV-22は、3人の乗組員が飛行の準備をしていたとき、エンジン出力が予定外の急増を起こした。 「その結果、機体は突然デッキから約30フィート飛び上がり、再び落ちてきて…右翼と右エンジンに大きな損傷が残った」と海兵隊の広報担当官ショーン・ヘイニー少佐は説明した。

幸いなことに、3人の乗組員は無事だった。この勝手に飛んだオスプレイの修復に要するコストは、海軍と海兵隊の航空機事故すべてを追跡している海軍安全センターによれば、計7,068,028ドル(約700万ドル)に上った。海軍と製造元のベル及びボーイング社による調査の結果、V-22のエンジン制御に微調整が加えられた。

にもかかわらず、海兵隊と海軍安全センターは、このオスプレイの無謀運転を、結局ペンタゴン用語で「クラスA飛行事故」として知られる重大な飛行事故にカウントしなかった。海兵隊広報担当官ブライアン・ブロック大尉によれば、その理由は、その時その機は離陸する予定ではなかった、だからこれは飛行の問題ではない、というものだ。V-22が離陸準備中または着陸後に、あるいは乗員の明示的な指令なしに離陸してしまった結果として損傷した場合、その事故は飛行事故にはカウントされない、と。

「飛ばす意図はなかった」と、彼はDanger Roomに語った。 「だからこれは、クラスAの飛行事故率の計算には含まれない。」

これが、海兵隊オスプレイの飛行事故の集計に含めることを怠った唯一の重大な事故だとは思えない。新聞報道の調査、アナリストの研究、および軍の記録が、最近10年間のV-22の試験および軍事作戦における、10件またはそれ以上のV-22の重大事故の可能性を暴き出している。調査の遅延や「飛行意図」の抜け穴、そして修理費用の過小報告がなければ、少なくとも3件―もっとある可能性が高いが―は、クラスA飛行事故とみなされうる。

海兵隊は、バージニア州にある海兵隊本部のV-22計画将校ジェイソン・ホールデン中佐の言葉によれば、オスプレイは最近10年間において「米海兵隊で最も安全な戦術回転翼機だ」と豪語している。海兵隊および海軍安全センターによる公式の計算によれば、V-22は、過去10年間で10万飛行時間あたり1.28のクラスA飛行事故率であり、これに対して、同じ期間における海兵隊の全航空機の10万飛行時間あたりのクラスA飛行事故率は2.6である。

しかし海兵隊は、その公式事故率を信用できなくする、あらゆる種類の理由を提供している
 

Past Is Prologue

オスプレイの事故率に関するDanger Roomとの会話で、ブロックとホールデンは話の内容を数回変更した。

2009年までは、クラスA事故は損害額100万ドルの事故を含んでいた。その後、その基準は200万ドルに変更された。最初のインタビューでホールデンは、海兵隊は以前のインシデントにも新しい、より高い閾値を適用し、「事故を再分類した」と述べていた。別の言い方をすれば、海兵隊は人為的に、過去の事故の相対的な深刻さを減じる ― 海軍安全センターが禁止する行為 ― を行ったことになる。

その後、ブロックとホールデンは、海兵隊によるV-22の事故の再分類を否定した。「我々は基準を遡及的には適用しない」とブロックは述べた。

さらに悪いことに、死者が出た場合を除き、オスプレイ事故のコストを集計する責任を負うのは海兵隊自身なのだ。海軍安全センターは、非致死事故については単に記録を保管するだけだ。というわけで、大部分のV-22の事故は、単に海兵隊がそう言っているからというだけの深刻度にされている。そして、この夏の事例のように死者が出た場合であっても、海兵隊は海軍安全センターの調査の進展の遅さから利益を得ることができる。

最後に、海兵隊は、「CV-22」と呼ばれる空軍のオスプレイを、彼らのティルトローター機の安全性評価に加えることを慎重に避けている。ほとんど同一であり、同じ計画局によって開発され、軍と産業界がオスプレイの合計飛行時間について自慢したい際には常に合算されるにもかかわらずである。CV-22を含めると、オスプレイのクラスA事故率は三倍近く、ペンタゴンの航空機隊の平均を超えたレベルになりうる。

結論:オスプレイは、海兵隊が我々に信じさせたがっているよりもはるかに安全でないと思われる。この十年で製造されたV-22の約15機に1機は、その多くが修復されたとはいえ、事故で破壊されたか、ひどく焼損しているのだ。

(略)
From the Lab to the Front Lines

(略)
Widowmaker

(略)

The New and Improved V-22?

新しい、改善されたV-22

海兵隊とその支持者たちは、オスプレイのためにほぼ無傷の安全記録を約束できるだろう。しかし、彼らがこの主張を裏付けるために使っている記録は、よく言っても不公平なものだ。新たな報道と政府文書についての調査が、V-22の安全記録は見かけ通りのものではなく、軍の主張は最低でも割り引いて受け取らねばならないことを示す「事実」を明らかにした。

元海軍大学院教授のクレイグ・フーパーは、「海兵隊オスプレイの事故データの重要度を格下げしようとする動機は明白だ」と2009年に書いた。「この計画は、MV-22のクラスA事故が増加すれば失うものをたくさん持っていた(し、今も持っている)。なぜなら、海兵隊は報告されたMV-22の低いクラスA事故率を、計画を政策立案者に売り込むのにいつも使っているからだ。」

ワシントンDCに本部を置く防衛情報センターのアナリスト、リー・ガイヤールの報告によれば、2003年3月、1機のオスプレイが試験飛行を行っていた際、「猛烈な」振動が始まった。整備員がエンジン収容部を開けてみたところ、ひび割れたボンドストラップ1ダース、折れた支持ブラケット1本、ちぎれたボルト頭部1個が見つかった。

二年後の同月までに、1機のV-22が「油圧系統から漏れた液体が熱したエンジン部品の上に滴り落ちて炎に包まれた」とガイヤールは振り返る。ある元海兵隊オスプレイ整備員は匿名を条件に、「それ(損害額)が100万ドルを下回ると信じるのは困難でした。ただし、すべて私の推測に過ぎませんが」とDanger Roomに語った。

1機の空軍V-22は、除氷装置で問題が発生した。「たまった氷が割れて機体の尾部やエンジン ― 不時着後に交換しなければならなかったが ― を含む他の部品に損傷を与えた。」

これらの事故はいずれも、海兵隊によるV-22安全記録の現在の評価には含まれていない。不意に飛び上がり、落ちて700万ドルの損害を生じた2006年3月の事故も同じである。同様にカウントされていないものとして、2006年12月と2007年3月のエンジン火災がある。2007年11月には16,162,436ドルの損害を与えたエンジン火災が発生した。こちらはカウントされているが。

しかし、2008年6月にイラクで発生したエンジン故障はカウントされていない。「検査によれば、異物によってエンジンのコンプレッサーブレードが損傷した可能性がある」とフォートワース・スターテレグラムのボブ・コックスは報じた。「しかし、エンジンの燃焼器ライナーが破損し、破片がさらに他のエンジン部品を傷つけた徴候もあった。」

2009年3月には、別の空軍オスプレイが除氷装置の問題に悩まされ、離陸時にエンジン1基を失った。「事故にあった機体は安全に着陸したが、エンジンは壊れた部品の破片を吸い込んでダメになった。」

今年4月には、1機のオスプレイの着陸装置が地上にいる間に破損し、1,229,408ドルの損害を与えた。6月には、あるオスプレイが「離陸してまもなくハードランディングして」150万ドルの損害を招いたと海軍安全センターが報告している。

最も悲劇的だったのは、6月にアフガニスタンで着陸帯から逸脱したV-22から海兵隊のクルーチーフが転落して死亡した事故だ。海兵隊の計画将校ホールデンは、この死亡事故にオスプレイの設計または装備が関係しているかどうかまだ分からないと言った。海軍安全センターが確かなことを言えるようになるまでは、他のたくさんのオスプレイの事故と同じく、この件は勘定に入れられない。
 
Vanishing Mishaps

消えた事故

海兵隊は、上記の事故のうち1件しかV-22の安全記録評価に影響しない理由を、簡単に説明する:彼らは最も深刻な事故だけを記録するからだ。単純に、空軍のV-22海兵隊の計算書には入らない。最も深刻な範疇に入らないすべての事故も同様である。「我々が記録し、公表するのはクラスA事故だ」とホールデンはDanger Roomに語った。

さらに、それらのクラスA事故は、飛行中またはブロックが言及したように「飛行する意図」があったものでなければならない。海兵隊は、オスプレイの飛行中、またはまさに離陸しようとした際に起きた事故だけを数に入れる。地上を移動中に発生した大火災は基準を満たさない。2006年3月に起こった偶発的な離陸と引き続く墜落も同様である。

それだけではない。V-22の歴史の大半において、クラスA事故の基準は「損害100万ドル以上または死亡事故」だった。2009年10月、ペンタゴンのお偉方はインフレを理由に、この基準を「200万ドルまたは死亡事故」に引き上げた。「人命は高価になっている」とホールデンは説明した。

私がホールデンとブロックに事故基準の適用について尋ねたとき、彼らの話は数週間の間に数回変わった。

軍がクラスAの閾値を2009年10月に引き上げた後、海軍安全センターは「報告要件を変更し、このガイドラインに基いて正確に報告するために事故をクラス分けし直した」とホールデンは9月21日に語った。言い換えれば、2009年以前には公式に深刻な事故だったいくつかの海兵隊V-22事故が、魔法のようにその深刻さを減じたことになる。100万ドル以上200万ドル未満の損害額のすべての事故が、ペンひとつで消えたのだ。

これは明らかに軍の手続きに反している。すべての軍部隊は、飛行事故をその発生時のクラスA基準に従って分類する。過去の事故を、現在の膨張した基準で遡及的に定義し直すことを想定しているかと尋ねたとき、海軍安全センターの広報官エープリル・フィリップスは明確に「ノー」と答えた。

しかし、それこそまさに海兵隊V-22についてやっていたとホールデンが述べたことだ。

はっきりさせるよう求められて、ブロックはペンタゴンのメモが、海兵隊V-22の事故を2002年まで遡って遡及的に再分類することを許可していると主張した。しかし、国防次官アシュトン・カーターの署名のある2009年10月5日付のそのメモは、そんなことを許可していない。

そのメモは、「2002会計年度の事故率を基準として、2012会計年度までに事故率を75%減らす」ためのペンタゴンの継続的な努力について言及している。アシュトンの安全構想は内部の統計的な目標の再計算を必要とするが、クラスAの閾値を遡及的に変更するものではない。

私がこのことを指摘すると、ブロックはホールデンと協議した後、再分類が行われたという彼らの話は単に間違っていたのだ、と主張した。ブロックは9月29日に「ホールデン中佐は思い違いをしていた」「今、私はそれを修正する」と述べた。しかしブロックは、彼とホールデンの誤解はV-22の安全記録や海兵隊における「最も安全な戦術回転翼機」としてのその地位を変更することはない、と強調した。

「私たちの数字は海軍安全センターから来る」とブロックは追加した。

しかし問題は、数字の一部は海軍安全センターからは来ないことだ。死亡者がいなかった場合、事故の性質と損害額を海軍安全センターに報告するのは海兵隊自身だとフィリップスは述べた。

別の言い方をすれば、非死亡事故の深刻度は、単に海兵隊がそう言っている、というだけのものだ。そして、もし「飛行の意図」がなかった場合、事故は一切カウントされないだろう。矛盾の多い公的声明、「意図」の抜け穴、そして戦隊レベルでの記録変造に関する追跡記録が、事故の真のコストについての軍の信頼性を疑わせる。

一例として、2006年12月のエンジン火災を取り上げる。海兵隊の調査チームは当初、修理費は100万ドル以上かかるだろうと海軍安全センターに言っていた。スタッフのアンジェラ・ミンク軍曹は、「調査が完了するまでに、査定は必要に応じて変えることができる」と述べたが、起きたことはまさにそれだった。海兵隊が海軍安全センターに提示した最終的な額は906,303ドル、クラスAをちょうど1割下回っていた。

そのV-22パイロットは誰かって? ホールデン本人だ。

海軍安全センターの統計は、都合のいいことにクラスA閾値のすぐ下に来たいくつかのV-22事故を含んでいる。ホールデンの火災事故の他に、2009年5月に766,718ドルのコストがかかったエンジン関係の火災と、6月には海兵隊が暫定的に150万ドルと見積もった不時着があった。

海兵隊V-22整備員は海兵隊のデータに疑問を呈した。彼は特に、エンジンがどのように発火したか、それはオスプレイのエンジンがそれぞれ200万ドル以上し、特殊な炭素繊維の収容筒に格納されていることを考慮すると深刻どころではなく、また高価になりうる -- について質問した。エンジン火災は「ささいなことではない」「またその修復コストは馬鹿馬鹿しいほど高い」と整備員はDanger Roomに語った。

多分それは、海兵隊が認めるより高い。「火災によるダメージは複合的で、私が想像するに…修復可能だ」とホールデンは語った。

しかし、「たとえわずかな」複合ダメージでも「非常に高くつくだろう」。整備員は、特定の金額は示さなかったが、反論した。

V-22の初期の歴史の中に、有名な虚偽報告の事例がある。2001年1月、当時唯一のオスプレイ飛行中隊の指揮官だったO・フレッド・リーバーマン中佐は、彼が隊の整備兵たちに整備記録を偽造するよう命令していたことを捜査官が発見した後、解雇された。「我々が嘘をつく、またはデータを操作する、呼びたいように呼んでくれていいですが、その理由は、この計画が危険にさらされていたからです」。リーバーマンは秘密裏に行われていた録音の中で語っている。

虚偽の報告は、2003年から2006年まで「新しい」オスプレイを担当した元整備員によれば、オスプレイマーク2の時代まで続いた。彼は、V-22の機械的問題を過小評価するよう指揮官からの圧力を感じたかと聞かれたときには嘲笑した。「圧力?私が毎日の信頼性報告の草案を書いて、それが次には実際より良い報告になるよう操作されたよ。私自身は何かをするよう圧力をかけられることはなかったが、虚偽報告の直接の目撃者だ。」
 
Doubling Down

ダウン倍増

(略)

ある意味で、ホイットルはオスプレイの財政負担に関しては正しい。現状1機あたり6,500万ドルでそこから下がりつつあり、V-22は安価になってきている。そして、ペンタゴンオスプレイにかけようとしている400億ドルのうち、300億ドルは既に支払い済みだ。軍はV-22のこれ以上の生産をキャンセルしても、大して節約することはできない。

しかし、それは命を救うことはできる。改造されたV-22は、さらに目に見えて問題だった前のバージョン同様、事故を起こしやすい。30人が死んだV1.0と比べてオスプレイV2.0はたった5人しか殺していないというのは事実だが、それはもっぱら運が良かったからだ。オスプレイの元整備員は、多くの不具合の中で、V-22を悩ませる火災と故障、特にそのエンジンは、「いつでも、実に容易に…墜落につながる」と述べた。

注1:WIRED.comのセキュリティ関連ブログ。
注2:事故率の違いは集計期間の違いによる。
注3:開発段階で死亡事故が多発した後、一部の設計と制御ソフトに修正を加えられ、より安全になったとされるバージョン。

 
では結論。

オスプレイのクラスA事故率1.93という数字は、仮にその値を正しいと信じたとしても、十分に危険である。

しかもこの数字は、オスプレイ配備のための予算を米国議会に認めさせたい海兵隊が、内部に抱え込んだ記録をもとに作りだしたものだ。利害関係者が持ち出す数字を検証もせずに信用する者は、実は自らも同じ利害を共有しているか、でなければ余程のお人好しである。
 
[1] 黒井文太郎 『「安全性」と「基地問題」を混同しているオスプレイ沖縄配備への反対運動』(JBPRESS 2012.10.5)
[2] 防衛省・外務省 『MV-22オスプレイの沖縄配備について』 2012.9.19
[3] David Axe  “Osprey Down: Marines Shift Story on Controversial Warplane’s Safety Record”  WIRED 2011.10.13
 
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