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成田悠輔氏の言うことをまともに取り上げるための最低条件

米イェール大学の助教授だという成田悠輔氏による、まるで高齢者は死ねと言っているかのような発言が物議を醸している。

こちらのJCASTニュース記事[1]がよくまとまっているので、一部引用する。

 主に拡散されているのは、21年12月のABEMA Primeでの発言だ。この日のテーマは、高齢化や少子化にともなう人口減少の問題で、リモート出演していた成田氏は

「僕はもう唯一の解決策ははっきりしていると思っていて、結局高齢者の集団自決、集団切腹みたいなものではないかと...」

と述べた。(略)

 22年1月にNewsPicks(ニューズピックス)で配信された動画でも(略)今後、国論を二分する可能性がある政策課題についても言及。軍事・防衛の次は

「安楽死の解禁とか、将来的にあり得る話としては安楽死の強制みたいな話も議論に出てくると思う」

として、議論を進める必要があるとした。

(略)

 比較的古い「集団自決」の主張としては。19年2月開催の「G1サミット2019」の社会保障改革に関するパネルディスカッションでの発言がある。(略)成田氏は高齢化をはじめとするさまざまな人生のリスクを軽減するための方法として、

「集団自決みたいなことをするのがいいんじゃないか。特に集団切腹みたいなものがするのがいいんじゃないか」

と述べている。(略)

 その上で、三島由紀夫が行ったような切腹が「いい筋」だとする持論を展開した。

「ここで僕たちが議論すべき大義は、いわば、この高齢化して延々と生き続けてしまうこの世の中をどう変えて、社会保障などという問題について議論しなくてもいいような世界を作り出すか、ということだと思う。そのためには、かつて三島由紀夫がした通り、ある年齢で自ら命を絶ち、自らが高齢化し老害化することを事前に予防するというのは、いい筋なのではないかと...」


一言で言えば、政治の失敗による社会問題を高齢者の責任に転嫁し、高齢者が死んでくれれば解決だとする、唾棄すべき優生思想である。


成田氏は「切腹」や「自決」といった表現は「議論のためのメタファー」だと弁解しており、そういう趣旨で擁護する人もいるようだが、実際に自決した三島由紀夫を引き合いに出して「自ら命を絶ち」などと言っているのだから、そんな後出しジャンケンの言い逃れは通用しない。そして、氏が学者として自ら正しいと信じる持論を述べているのであれば、少なくとも言行一致であることが、それが信用に値する主張であることを保証する最低限の条件だろう。

要するに、成田氏は高齢になったら(何歳からを高齢と言うべきかはともかく)立派に自決すべきだし、氏の主張をまともに取り上げるのは、その死をしっかりと見届けてからでいい。

もっとも、容易に予想されるとおり、成田氏本人には年をとっても自決するつもりなどさらさらないようだ。

この手の優生思想を振りまく連中にとっては平常運転といったところだろう。

ちなみに、こんな最悪の世代間対立扇動者をマスコミが重宝する理由は簡単で、こういった過激な優生思想を「イェール大学助教授」などという立派な肩書付きで語ってくれる「学者」は、社会保障の削減を当然視する「空気」を作り出すのに大変便利だからだ。しかし、普通の若者や中年層がそんな雰囲気に流されていると、年金や介護保険を削減されて困窮した親の生活を自分が支えねばならなくなるし、将来確実に今の高齢者以上に苦しい生活に耐えねばならなくなる。

世代間格差論などという、ためにする謬論に騙されてはいけないのだ。

[1] 『成田悠輔氏、物議醸す「高齢者は集団自決」発言は持論だった メタファーと説明も...「老害化」社会防ぐ「最強のクールジャパン政策」と直言』 JCASTニュース 2023/1/12