読む・考える・書く

マスコミやネットにあふれる偏向情報に流されないためのオルタナティブな情報を届けます。

歴史認識

上海戦でも補給無視だった日本軍

アジア太平洋戦争において、補給を無視した無謀な作戦が大量の餓死者を生み出したことはよく知られている。「餓島」と呼ばれたガダルカナル島での戦いや、インパール作戦などが典型例である。 しかし、三好捷三氏の『上海敵前上陸』を読むと、日中戦争初期の…

「イサマシイ青木上等兵」―上海戦のプロパガンダと現実

本日のTLから選りすぐりの逸品。 古来よりの日本人の美徳を、ほのぼのした絵本でご覧ください↓ pic.twitter.com/AN4tgHgFni — どじんくんtype-R (@feedback515) 2016年12月15日 上海戦、それもあの呉淞ウースンクリークでの戦いで、中国兵が投げてくる手榴弾…

負傷兵の最後の食事

今日、TLにこんなツイートが流れてきた。アニメ映画『この世界の片隅に』を見て、当時同じ呉にいた祖母から聞いた話を思い出した、という内容だ。 この世界の片隅に。視聴後、実際同じ昭和20年に呉にいた祖母の話を軽くまとめました。「海軍出発式と食事」で…

小林よしのり徹底批判(8)家族や故郷を守るために死んだ日本兵など一人もいない

小林は特攻隊に関してこんなことを書いている[1]。 20代の若者たちは その純粋性ゆえに 自らの死の意義を 信じてゆるがない (略) 彼らが 命を捨てても守るべきもの それは… 祖国であり 郷土であり 家族であり 天皇であった 本人たちがそのように信じていた…

史上最悪の証拠隠滅犯の死

11月25日、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が死去した。90歳。20世紀の歴史を作ってきた人物がまた一人この世を去った。 朝日新聞(11/26): フィデル・カストロ氏死去 キューバ前議長、90歳 キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が25…

『プライベート・ライアン』のあの場面並みの激闘をほのぼの上陸シーンに改変してしまう人々

■ 一瞬で「戦場」に引き込まれるあのシーン 戦争映画の名作『プライベート・ライアン』。冒頭数分間の現代の場面から第二次大戦当時に切り替わる際に使われるのが、ノルマンディー上陸作戦の激闘シーンだ。上陸用舟艇の扉が開いた瞬間から、あっという間に兵…

小林よしのり徹底批判(7)噂を根拠に中国軍を悪魔化

■ 中国との戦争を正当化する方法 『戦争論』では、アジア太平洋戦争を「アジアを植民地化していた」「差別主義欧米列強の白人ども」との戦争と位置づけることで旧日本軍の免罪を図っている。しかし、この理屈には大きな欠点がある。中国との戦争が正当化でき…

日本軍は協力者をも簡単に殺した

2015年8月13日に放送された、NHKスペシャル『女たちの太平洋戦争 ~従軍看護婦 激戦地の記録~』。戦時中、ビルマとフィリピンの戦場に派遣された従軍看護婦たちの過酷な体験を、日赤本社に残されていた大量の記録文書と、元従軍看護婦たちの証言を通してた…

彼らはなぜ抗日ゲリラになったか

前回の記事に対して、こんなコメントがついていた。 >こっそり外に見に行ったら、日本軍スパイのフィリピン人が『出てこい。逃げると殺すぞ』と言って、みんなを集めていた。↑↑↑「通訳のフィリピン人が」ならわけるけど、日本軍側にいただけでスパイ呼ばわ…

小林よしのり徹底批判(6)ワラン・ヒヤ(恥知らず)

小林の『戦争論』は、彼らが「大東亜戦争」と呼ぶアジア太平洋戦争を、まるでそれだけで完結した戦争であったかのように描く。 実際には、アジア太平洋戦争は日中戦争の必然的帰結であり、日中戦争は中国東北部分離戦争(いわゆる「満州事変」)の帰結であり…

小林よしのり徹底批判(5)続・ガンディーには見抜かれていた

小林よしのりは、ガンディーに関してこんなことを書いた[1]。デタラメなのは調べればすぐ分かることだが、『戦争論』を読んでのぼせ上がるようなちょろい読者がそんなことをするはずはないと分かっていたからだろう。 日本が白人を追い散らした時 インドのガ…

小林よしのり徹底批判(4)戦争が政策なら植民地主義だって政策

日本の侵略戦争を正当化したい小林よしのりは、戦争は悪ではなく「政策」なのだと主張する[1]。 当時の軍部は「犯罪」をするために戦争を始めたわけではない (略) 日本の自存自衛のため 「政策」の延長として戦争という策をとったのだ 戦争は「悪」ではな…

小林よしのり徹底批判(3)ガンディーには見抜かれていた

小林よしのりは、欧米帝国主義諸国によって奴隷状態に置かれ、白人支配者への抵抗など夢想もできなかったアジア諸民族に、日本軍がアジア人でも白人に勝てることを見せて希望を与えたと主張し、これを旧大日本帝国正当化の主要な論拠としている。そしてこの…

小林よしのり徹底批判(2)偽りの「アジア解放」「大東亜共栄圏」

「日本はアジア解放のために戦った」、とはっきり言えない『戦争論』 侵略戦争を実行するには、それを正当化する大義名分が必要となる。アジア太平洋戦争の場合、日本は「大東亜共栄圏」の建設を戦争目的として掲げた。すなわち、アジアの諸民族を欧米列強に…

小林よしのり徹底批判(1)「大東亜戦争」とか言ってる時点で既にダメ

■ 小林批判の必要性 今さら感はあるが、やはり小林よしのりはきっちり批判しておく必要があるだろう。 なんといっても、小林には結果としてネトウヨだの在特会だのといった、現代日本社会における最悪の反動層を生み出した製造物責任がある。もちろん小林一…

【番組評】ETV特集 「関東大震災と朝鮮人 悲劇はなぜ起きたのか」

9月3日(土)23時から、NHK Eテレで「関東大震災と朝鮮人 悲劇はなぜ起きたのか」が放送された。 1923年の関東大震災。混乱のなか流言が広がり、多くの朝鮮人が殺害された。悲劇はなぜ起きたのか。中央防災会議は2009年に国の機関として初めて事件を分析、…

稲田防衛相就任を祝して「百人斬り」事件を振り返る(3)逮捕・裁判・処刑

名士から一転、戦犯へ 東京裁判国際検察局による訊問 国民政府による戦犯裁判の概要 両少尉の南京への移送と裁判 判決後の被告側抗弁書 処刑と、残された遺書 名士から一転、戦犯へ 戦時中は「郷土の勇士」として讃えられ続けてきた両少尉だが、「捕虜虐待を…

稲田防衛相就任を祝して「百人斬り」事件を振り返る(2)初めて語られた真相

地方の名士となった「百人斬り」の両少尉 野田少尉の場合 向井少尉の場合 初めて語られた真相 ー 野田少尉の母校での講演 地方の名士となった「百人斬り」の両少尉 野田少尉の場合 「百人斬り競争」ですっかり有名になった向井・野田両少尉※は、その後もいわ…

稲田防衛相就任を祝して「百人斬り」事件を振り返る(1)事件当時の報道

「百人斬り」事件の経緯を振り返る 発端…東京日日新聞1937年11月30日付朝刊(第1報) 躍進…1937年12月4日付朝刊(第2報) 大接戦…1937年12月6日付朝刊(第3報) 決着はつかないまま「延長戦」へ…1937年12月13日付朝刊(第4報) 「百人斬り」事件の経緯…

「えらぼーと2016」をやってみた(その3)安全保障・外交関連

安全保障関連法 → 廃止すべき【2016/7/9追記】 普天間移設先 → 国外 核武装 → 将来にわたって検討すべきでない 「慰安婦問題」日韓合意 → 評価しない 対ロシア外交 → 独自外交を進めるべき 対中国外交 → 対話を重視すべき トランプかクリントンか → どちらと…

「かわいそうなぞう」まで日教組が悪いことにしてしまう、いろいろこじらせた人たち

検索してみると、「かわいそうなぞう」の真相を取り上げたブログがいくつか見つかる。その中の一つであるこちらのブログ(記事1、記事2)は、この虐殺が空襲による猛獣脱走の危険を避けるためにやむなく行われたことではなく、「『戦争の怖さも知らないで…

シンガポールは日本軍に感謝などしていないという当たり前の事実に関する若干の補足

シンガポールは日本軍に感謝しているというあきれた妄説 シンガポール政府の公式出版物でうにうにさんの検証を補足する 記念碑を作る意味 粛清検問場 Sook Ching Centre 憲兵隊東地区本部 Kenpeitai East District Branch 日本軍宣伝部本部 Japanese Propaga…

「かわいそうなぞう」を殺した大達茂雄が戦後は文部大臣となって歴史教育を殺した

「かわいそうなぞう」で描かれた猛獣虐殺を命じた東京都長官大達茂雄の経歴を見ると、いくつか重要なポイントが見つかる。 昭南特別市長(兼陸軍司政長官) 1942年3月—1943年7月 東京都長官 1943年7月—1944年7月 内務大臣(小磯内閣) 1944年7月—1945年…

反戦童話「かわいそうなぞう」が露呈した戦後平和教育の欠陥

反戦童話の代表格となった『かわいそうなぞう』 史実とは大きく違う『かわいそうなぞう』のストーリー 猛獣虐殺は空襲のせいではなく戦意高揚のため 『かわいそうなぞう』は戦後平和教育失敗の象徴 反戦童話の代表格となった『かわいそうなぞう』 児童文学作…

笑った嬰児 ― 日本軍は中国で何をしたか

前回記事で、通州事件の仇討ちだとして、無辜の中国人を道案内に駆り出しては用済みになると殺していた通訳の話を書いた。 この話を語ってくれた坂倉清氏が、これとは別に、自分が兵隊となって初めて人を殺したときの体験を告白していた[1]。印象深い話なの…

通州事件のユネスコ記憶遺産登録というオウンゴールを目指す「つくる会」

ユネスコ記憶遺産(Memory of the World)に南京大虐殺関連文書が登録されたのが悔しくてたまらない「つくる会」が、対抗して通州事件の資料を登録申請するらしい。 産経ニュース(12/11): 「通州事件」ユネスコ記憶遺産に申請へ つくる会「世界に知ってほ…

謝罪と反省なくして日本の安全保障はない

■ なぜ護憲派まで9条を変えようとするのか? 自民党をはじめとする極右反動勢力が自衛隊を国軍化して憲法の中に位置づけたがるのは当然だが、そうした極右に反対し、平和憲法を守ろうとする護憲派までもが9条を改変して自衛隊の存在を憲法に明記しようとす…

関東大震災時、保阪正康氏の父が体験した恐怖

ノンフィクション作家の保阪正康氏は、父親がガンに冒されて余命わずかとなったときに、病室で父からその人生の聞き取りを行っている。家族にも内心を明かさず、「医者になれ」と一方的に進路を指示してくる父に反発を覚えていた青春時代を経て、父75歳、息…

それは違うよ斎藤さんヽ(´Д`;)ノ

東京新聞に週一で連載されている斎藤美奈子氏の「本音のコラム」。いつも舌鋒鋭く安倍政権の暴挙を批判していて楽しく読んでいるのだが、10月14日掲載コラムの中の下記の記述には驚いた。中国からの申請により、ユネスコ世界記憶遺産に「南京大虐殺」関係資…

日本にはソ連の日ソ中立条約違反を非難する資格はない

1945年8月9日、ソ連は突然ソ満国境線を破り、怒涛の勢いで日本軍への攻撃を開始した。同年4月5日、ソ連は日本側に対し、日ソ中立条約の不延長を通告していたが、同条約は翌年4月まで有効期間が残っており、この対日参戦は条約違反であった。また、この…